俳優の長谷川博己さん主演のNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」(総合、日曜午後8時ほか)第24回「将軍の器」が9月20日に放送され、向井理さん演じる“剣豪将軍”足利義輝の壮絶な最期が描かれた。
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三好長慶(山路和弘さん)と松永久秀(吉田鋼太郎さん)の子らによるクーデターが勃発。二条御所へと攻め込んできた軍勢に対し、義輝は最初は刀を手に、途中からなぎなたを振るい応戦するも、最後は三方から障子で抑えられてしまい……。
動きと視界を封じられた義輝が、障子越しにブスブスブスと刺されて命を落とすという壮絶死。ドラマ開始からわずか2分、オープニングのタイトルバックが流れる前の、アバン(アバンタイトル=プロローグシーン)での出来事で、視聴者に衝撃を与えた。
同シーンの演出を担当した佐々木善春さんによると、殺陣のけいこは「この状況下では数多くはできないので、本番の数日前に1度きり」。また向井さんが、その場で最初に口にしたのは、「義輝の心情は、どこに描いていきましょうか?」だったという。
すでに向井さんは、殺陣の動きを完ぺきに頭に入れていて、最初に手合わせした時に、あらかた動けていたといい、収録現場に至るまでただ一点ずっと話していたのは、「義輝の心情をこの殺陣の上に乗せてどう表現するか」。それは、ただ単に華麗に斬っていく、華麗に散っていくだけではなく、やり残したことへの思い、襲いかかる敵に対する気迫、カットごとに、その思いをどう表現するかということ。
演出の佐々木さんは「(動きに目が行きがちな)殺陣シーンであるにもかかわらず義輝の目と表情が印象的です。何やら覚悟を決め、文言を唱えたあと。太刀を抜いた時。相手に太刀を突き立ててまま鬼気迫る感じでグイっと押し込む。たくさんの者を相手にして疲れているかもしれないけれど、気合をまき直して外へ出ていくときのその目。槍(やり)を突き立てられてもなお、諦めるというよりは、この世の理を知ったような静かな目。わずかな時間の中に変化豊かなたくさんの『目』が表現されたのは、向井さんのこだわりと芝居のなせる業だと思います」と語った。
殺陣シーンをもって向井さんはオールアップ。スタッフに「演じるのが当たり前と思っていたけれど、撮影の中断によってそうではない、何もしない期間を経て、またカメラの前に立つことができて、演じられる喜びをひしひしと感じた撮影だった」と明かしたといい、最後に佐々木さんは、「そうおっしゃったその目。向井さんが出番を終えることと義輝がこのドラマから退場すること、その寂しさが一気に心にきました。義輝と向井さんはやはりこの日、一つになっていたと確信し、うれしくもあり寂しくもある、そんな撮影になりました」と感慨深げに振り返っていた。
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