女優の多部未華子さんの主演ドラマ「私の家政夫ナギサさん(わたナギ)」(TBS系、火曜午後10時)。8月25日放送の第8話の平均視聴率(世帯)は16.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、番組最高を記録。4週連続右肩上がりと絶好調だ。9月1日の放送でいよいよ最終回ということで、視聴者からは「終わるの寂しい」「すでにロス」などの声も続々と上がっている。なぜこれほど愛されるのか理由を探った。
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ドラマは、電子書籍配信サイト「コミックシーモア」から生まれた四ツ原フリコさんのウェブマンガ「家政夫のナギサさん」が原作。多部さん演じる28歳の独身女性が、大森南朋さん演じるおじさんの家政夫を雇うことから始まるハートフルラブコメディー。
今作のドラマ化の背景について、岩崎愛奈プロデューサーは、「『働く女性が家事を家政夫さんにお願いする』というのがとても新しい価値観だと思い描きたいなと思った」と話していた。
また、バリバリと働く一方で、家事が苦手というヒロインの設定は、「実は、世の中の女性ほとんどがそうなんじゃないか」と考え、「日々頑張っている人の、肩の力を抜ける時間になれたら」「(ドラマを)見た後に元気な気持ち、幸せな気持ちになれる作品にしたい」という思いを持って制作していると明かしていた。
ヒロイン・メイを細やかな芝居で自然体に演じる多部さんについて、「多部ちゃんが可愛すぎる」「メイちゃんに共感しかない」など多くの声が上がっている。多部さんのコロコロと変わる表情、コミカルな演技、キュートな声は魅力的で、「ずっと見ていたい」という気持ちにさせられる視聴者も多い。「わたナギ」が愛される背景として、まずはこの共感を呼ぶ多部さん演じるメイの存在が挙げられるだろう。
企業買収のエキスパートや毒舌の法医学者など、どちらかといえばハードな役のイメージの強い大森さんを、“癒やし系”のナギサ役に起用したことも大きかった。第1話放送直後から、SNSでは「予想以上にカワイイ大森南朋」「癒やし」「大森さんにおじキュン」といったコメントが並んだ。
そんな中、第6話では、ナギサが、メイに対して初めて厳しい顔を見せる場面があった。第7話では、MR時代の同僚・箸尾(松本若菜さん)と再会したナギサが涙をこぼす場面があり、「グっときました」「もらい泣きした」「やっぱり役者の大森南朋はすごい」など、大森さんの高い演技力も注目を集めた。
同シーンでは、メイも涙を流していたことから、「大森南朋さんと多部ちゃんの泣きの演技がよすぎて何度もリピートして見てその度泣いてる」という意見も。多部さんと大森さんによる卓越した芝居だったからこそ、物語にぐっと引き込まれたという視聴者も多かったのではないだろうか。
ドラマでは、メイの恋愛模様だけではなく、家族との関係性、仕事への向き合い方なども丁寧に描かれている。メイはこれまで、草刈民代さん演じる母・美登里から「“やればできる子”」という、いわば“呪いの言葉”をかけられ、自分なりに奮闘してきた。
第5話では、3年前に実家を飛び出したままの妹・唯(趣里さん)と、美登里が和解する様子が描かれた。美登里が、「どんなに成長して大人になっても、憎たらしいこと言ったり、言うこと聞かなくなっても、小さくて可愛いこの頃のイメージが重なるのよね。どこにいてもこの頃のままなのよ、親にとっては。だからかなぁ、あなたたちがいくつになっても、同じことばっかり言い続けて、ついつい厳しくなっちゃうのかしらね」と娘たちへの思いを話すと、メイは「お母さんは特にその傾向強いよ」と話すのだった。美登里は、「その自覚はありますよ」と続けた。
この第5話をきっかけに、視聴率は右肩上がりを記録している。妹と母の関係性が修復されたことにより、メイの心も軽くなった。呪いは解け、協力してくれたナギサとの絆も深まった。それによって、さらに物語に引き込まれ、次の展開への期待感も高まったのではないか。また、それぞれの世代のキャラクターの思いを丁寧に描くことにより、視聴者が誰かしらに共感できるという部分も、魅力の一つではないだろうか。
最後に、「わたナギ」に癒やされている視聴者が多いということを挙げたい。新型コロナウイルスの影響もあり、先行き不安な世の中だが、大きな事件が起こることもなく、嫌な人も出てこない「わたナギ」の世界を、安心して見ることができたのではないか。視聴者からは、「最近のドラマにはない、ほんわかして安心して楽しめるドラマ」という意見も上がっている。
また、仕事はバリバリできるが、家事は大の苦手。そんなヒロインに「家事をアウトソーシングしてもいい」というメッセージ。心のバランスを崩してしまった箸尾に対し、何かできることがあったのではないかと責任を感じ続けてきたナギサに、メイが伝えた「もう自分への戒めはいらないでしょ?」という救いの言葉。呪いが解けたメイによって、ナギサが過去から解放された瞬間だったのではないか。
「わたナギ」は、普段、なんとなく抑制していたり、自分自身でブレーキをかけたりしていることを「解放していいんだよ」と優しく訴えかける。そんな優しいメッセージに癒やされ、幸せな気持ちにもなれるからこそ、多くの人に愛されたのではないだろうか。9月1日の最終回を前に、SNSでは早くも“ロス”の声が上がっている。メイとナギサさんの関係がどういう結末を迎えるのか、最後まで目が離せない。
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