江口拓也:「映画 ギヴン」で中澤まさとも、浅沼晋太郎から引き出された演技 アフレコで「強く感じたもの」

劇場版アニメ「映画 ギヴン」で梶秋彦の声優を務める江口拓也さん
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劇場版アニメ「映画 ギヴン」で梶秋彦の声優を務める江口拓也さん

 人気BL(ボーイズラブ)コミックが原作のテレビアニメ「ギヴン」の劇場版「映画 ギヴン」(山口ひかる監督)が、8月22日に公開された。劇中に登場するバンド「ギヴン」のドラム担当の梶秋彦を演じるのが、声優の江口拓也さんだ。今作は、大学生の秋彦、大学院生の中山春樹、天才バイオリニストの村田雨月の3人の恋が描かれ、アフレコは「掛け合いで引き出された部分」が大きかったという。作品への思い、アフレコの様子、今後の目標について聞いた。

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 ◇大学生・秋彦の「等身大」を演じる 揺れ動く心、不安定さ

 「ギヴン」は、マンガ誌「シェリプラス」(新書館)で連載中のキヅナツキさんのコミック。バンドメンバーたちの青春群像劇が描かれる。テレビアニメが、フジテレビほかの深夜アニメ枠のノイタミナで2019年7~9月に放送され、バンド結成や高校生の佐藤真冬、上ノ山立夏の恋が描かれた。「映画 ギヴン」では、長年秋彦に思いを寄せる春樹、元恋人でありながら同居を続け、中途半端な関係のままの秋彦と雨月という3人の苦くて熱い恋が描かれる。

 秋彦はバンド内の兄貴分で、江口さんは「取っつきづらい怖い見た目なんですけど、実は誰とでも仲良くなれそう。どこにいってもあまりブレずに自分を持っている」と印象を語る。演じる上では秋彦の「リラックスした雰囲気」を意識したという。

 「秋彦はもちろん喜怒哀楽もあるんですけど、肩肘張らずに生きているというか。裏では頑張っているんですけど、頑張っている感が出ない。のらりくらりと生きていっているんじゃないかと思わせるような雰囲気を意識しました」

 秋彦は、バンドではドラム担当だが、大学では雨月と同じくバイオリンを専攻している。高校時代に雨月と出会い、その天才的な才能を目の当たりにした。「映画 ギヴン」では、秋彦が音楽と向き合う上で葛藤する姿、雨月との関係に思い悩む姿が描かれる。

 「秋彦はテレビシリーズでは高校生組を導く、揺るぎない感じで存在していました。ただ、高校生たちから見て大人組と言われていても、まだ大学生なので、揺れ動く心や不安定な部分はたくさんあって。今作では、大学生の等身大な部分が出ています。バンドを壊しちゃいけない、友達としての関係を壊しちゃいけないと、いろいろなことを考える。秋彦はのらりくらりとしているように見えていても、そういった部分はちゃんと持っているんだなと感じました」

 ◇浅沼晋太郎、中澤まさともとの掛け合い 引き出された演技

 大人組3人の微妙な関係、繊細な感情の揺れを丁寧に描く「映画 ギヴン」。アフレコでは、春樹役の中澤まさともさん、雨月役の浅沼晋太郎さんとの掛け合いで引き出された部分も大きかったという。

 「皆さんと一緒に録(と)ることで、相手のせりふを感じながらできた。間の取り方とかテンポ感は、一緒に録っているからこそ強く感じたものがありました。感情の流れや押し引きみたいなところも、浅沼さん、中澤さんの言葉を聞いてより引き出された部分は多かったと思います」

 テレビシリーズから共演している声優陣の印象を聞くと、「現場では、それぞれが演じているキャラクターのような空気感を出しながら存在しています」と明かした。

 「テレビシリーズの時は、(立夏役の)内田雄馬君がエネルギッシュに引っ張ってくれていた。(春樹役の)中澤さんは年上ポジションでみんなのつなぎ役として和ませてくれたり、(真冬役の)矢野奨吾君は緊張しているといいつつもマイク前ではしっかり結果を見せつけてくれたり。(雨月役の)浅沼さんは現場にすっと来て、天才の雰囲気をまとって、すっと帰るみたいな。僕は基本的に収録現場では静かにしているタイプなので、端っこで静かにしていました(笑い)」

 ◇「とりあえずやってみる精神」を持ち続ける 恋愛観も

 江口さんは、テレビシリーズで描かれた真冬と立夏の高校生のピュアな恋愛と比べ、「映画 ギヴン」で描かれる3人の恋模様を「アダルティックな一筋縄じゃいかない難しい恋愛」と表現する。気持ちを思った通りに表現できず、思いがすれ違う3人の恋をどう感じていたのか。

 「本心でぶつかってみないと見えないことってあるんですよね。現実世界の恋愛でも友達関係でも仕事でもそうですけど。ぶつかった結果、付き合えることがハッピーじゃなくて、答えを出せたことが僕はハッピーだと思っているんです。お別れしちゃったとしても、そうしなかったら見つからなかったものもある。作り物の関係よりは、僕はよっぽど意味があると思う。今作では、3人がそれぞれ階段を上がるような姿を見ていただけるのではないかなと思います」

 今回の「映画 ギヴン」を含め、さまざまな作品で魅力を見せる江口さんに今後の目標を聞いた。

 「30歳になった時は自分の苦手なもの、今まで目を向けなかったところに向けてみようというところで舞台に挑戦するという大きな流れがありました。今はより多くの方に自分を知っていただいて、『この役を江口にやってほしい』と思われるような人間になっていけるように『とりあえずやってみる精神』は持っておきたいなと思います。自分の中で得手不得手はあるんですけど、求められているうちにいろいろな挑戦をしたい。その結果、本当に苦手かもしれないし、案外できちゃったりするかもしれない。それは、向き合ってみないと分からないことなので。とにかくいろいろな物事に向き合って、役者として、面白い人間になっていけたらなと思います」

 作品について、自身について語る江口さんからは「やってみないと分からない」「ぶつかってみないと見えない」とチャレンジングな姿勢が垣間見えた。今後のさらなる活躍に注目だ。

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