あなたの番です:悪意が増殖していく怖さ ブレずにこだわる中毒性 Pに聞くねらい

連続ドラマ「あなたの番です-反撃編-」の一場面=日本テレビ提供
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連続ドラマ「あなたの番です-反撃編-」の一場面=日本テレビ提供

 女優の原田知世さん、俳優の田中圭さんダブル主演の連続ドラマ「あなたの番です」の新章「あなたの番です-反撃編-」(日本テレビ系、日曜午後10時半)が6月30日、いよいよスタートする。同局では約25年ぶりとなる2クール(4~9月)連続ドラマだが、ドラマを手がける鈴間広枝プロデューサーは「普通のドラマとフォーマットは変わらない。手堅く視聴率を取っていくことを狙ったドラマではなく、次を見たくなるような“中毒性”を狙っている」と語る。「反撃編」にかける思いやドラマ作りへのこだわり、制作の裏側を聞いた。

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 ◇ブレずに2クールで描く 狙いは中毒性

 ドラマは、複数の人物が殺害相手を交換して殺し、容疑者を特定されにくくする「交換殺人」が題材。原田さんと田中さん演じる新婚夫婦が、引っ越し先の分譲マンションで起きた連続殺人の謎に挑む姿が描かれるミステリーで、秋元康さんが企画・原案を手がける。

 秋元さんと鈴間プロデューサーは、2017年7~9月に放送された同局の連続ドラマ「愛してたって、秘密はある。」でもタッグを組んでおり、同作の放送終了時から「あなたの番です」の企画は始まっていたという。

 鈴間プロデューサーによると「次は何をやる?」という中で、“交換殺人”というキーワードが出てきたという。「交換殺人は、ミステリーの中ではオチとして使われるもので、人間関係などから推理しても全然関係ない人が犯人であったりするので、ミステリー好きの人には『それはずるいよ』と言われるような“禁じ手”だったりするんです。このドラマでは、それを逆手にとって最初からやってしまおうと。『一つのコミュニティーにいる人たちが、がんじがらめになっていくのって怖いよね』という話になりました」と明かす。

 企画段階では、通常の1クール全10話の予定だったが、「ある程度の世帯があるマンションを舞台にするとなると、10話ではさまざまな謎を回収しきれない。日曜午後10時半の枠はチャレンジングな枠でもあるので、一度形を変えてチャレンジしてみよう」と、2クールでの放送が決まった。

 ただ、2クールとはいっても「第1話の拡大放送もなかったですし、普通の日曜ドラマと全くフォーマットは変わらないです。普通の連続ドラマを20話やってみようということで始まった」と話す。「万人に受けるドラマではもちろんないですが、ドキドキハラハラして分からないことだらけのミステリーというテーマは絶対にぶれずに、手堅く視聴率を取るよりも、次を見たくなるような中毒性を狙って作っています。見てくださっている方の期待に応えられるように真摯(しんし)に作っていけたら」とこだわりを語る。

 ◇ドラマの“怖さ”の理由 新章は「ざくざく謎を解いていく」

 ドラマは、マンションの住人会に集まった13人の住人それぞれが「殺したい相手」を書いて、その紙をランダムに引く交換殺人ゲームをきっかけに、次々と殺人事件が起こる。鈴間プロデューサーは「本気で殺したいと思ってはいなくても、『あの人、もう死ねばいいのに……』と思うことはなくはない。『死ねばいいのに』とまで思わなくても、『嫌だな』と思う人が身近にいるということは人間誰しもあること。そういう些細(ささい)なことが大事になっちゃう怖さをドラマで描いている」と話す。

 また、日本人ならではの「同調圧力」も作品の“怖さ”の要素となっているという。「殺人自体ももちろん怖いことですが、事件に巻き込まれた時に『私たちは一蓮托生(いちれんたくしょう)ですから』『このことは誰にも言いませんよね』という同調圧力から生まれる空気がより怖い」と語る。

 ちょっとした悪意が増殖していく怖さ、集団における同調圧力の怖さ。ドラマでは、そうした居心地の悪い不気味な空気が終始漂っている。その中で次々と事件が起き、謎が解けるどころか深まっていくストーリーは、たしかに「見たくないけど見てしまう」というような中毒性がある。

 鈴間プロデューサーは、このドラマを通して伝えたいメッセージもあるという。

 「交換殺人ゲームをしなかったとしても、誰かに対して向けた小さな悪意が、自分が意図したよりも大きくなって独り歩きしてしまうと、自分に返ってきたりすることもありますよね。例えば、自分が軽く言った『あいつムカつく』という一言が、相手に届く時には『“あいつ超嫌い”って言ってたよ』になって誤解されたり。聖人君子じゃないので、悪意を持たないことは無理だと思うんですけど、その出し方はちょっとずつ気を付けたほうがいいかもしれないなと、自戒も込めて。ドラマの状況は極端な例ですけど、悪意をきっかけに同じような状況に陥らないとも限らないというか」と話す。

 とはいえ「説教くさくはなりたくないですし、第2章の『反撃編』はざくざく謎を解いて、悪いヤツを追い詰めていくので、シンプルに謎が解ける気持ちよさを楽しんでいただけたら」と鈴間プロデューサー。「実は、作っている側は“怖さ”のさじ加減が分からないんです。殺人シーンも『これで本当に怖がってくれるだろうか』と不安なところもあって。皆さんが『怖い!』『鳥肌たった』と感想をくださったり、考察で盛り上がってくださっていて本当にありがたいです」とメッセージを送った。

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