大河原邦男:原点は竜の子プロ 「基本を全て学んだ」

大河原邦男さん
1 / 1
大河原邦男さん

 大河原邦男さん、秋本治さん、天野喜孝さん、高田明美さんという竜の子プロダクション(現・タツノコプロ)出身の4人のラフ絵や完成原画が展示される展覧会「ラフ∞絵(ラフむげんえ)」が、4月2~16日に3331 Arts Chiyoda(東京都千代田区)で開催される。人気アニメ「機動戦士ガンダム」のメカデザインで知られる大河原さんは「基本は竜の子で全て学んだ」と語る。竜の子プロダクション時代の思い出や、メカデザインへの思いを聞いた。

あなたにオススメ

 ◇「ガッチャマン」のメカデザインは「相当怒られました」

 大河原さんは、東京造形大学を卒業後にアパレルメーカーを経て、1972年に竜の子プロダクションに入社。美術系の大学卒ということもあり背景の担当となったが、入社早々に当時大河原さんの上司だったイラストレーターの中村光毅さんに「科学忍者隊ガッチャマン」のメカデザインを任される。

 「当時、竜の子の私たちの部屋が倉庫も兼ねていて、そこに『アニメンタリー決断』(71年)という作品の設定資料がたくさんあったんです。この作品は、太平洋戦争を描いていて、零戦など実際にあるものをデッサンして作っていたので、デザインがものすごく緻密だった。それを見た私が『ガッチャマン』のメカをデザインしたので、かなり線が多くてハードなものになった。普通はそこから線を減らすのですが、鳥海永行監督が『それでいいから、そのままアニメーターに渡せ』と。当時は新入社員だったので『こんなに線が多くて、どうしてくれるんだ』とアニメーターに怒られました」

 そうした苦労もあり、72年に放映された「科学忍者隊ガッチャマン」は、「他のアニメ会社ができないぐらいのクオリティーが高い作品になった」「アニメで特撮以上のことができた」といい、「そのときの絵が一つ段階を超えてジャンプアップして、それ以降の基準になったので、次の人からは大変だったかもしれない」と大河原さんは笑顔で振り返る。

 入社当初「アニメやマンガには全然興味がなかった」という大河原さんは、この作品を経て「メカデザインとはこういうものか。面白い仕事だな」と感じたという。

 ◇メカデザインの基本は「作品のジャンルを理解すること」

 その後、「破裏拳ポリマー」「宇宙の騎士テッカマン」「ゴワッパー5ゴーダム」などを経て、竜の子プロダクションを離れた大河原さんは、76年に中村さんと共に「デザインオフィス・メカマン」を設立。79年に「機動戦士ガンダム」のメカデザインを手がけた。ガンダムのモビルスーツは、竜の子時代に培ったものがあって生まれたといい、「基本は竜の子で全て学んだ」という大河原さん。

 「竜の子創立以来のメカは中村さんがデザインしていたので、中村さんを見ていれば全てが分かった。私にメカをやりなさいと言ったのも、『ヤッターマン』をやりなさいと言ったのも中村さん。ターニングポイントには中村さんがいてくれた。それで、サンライズの仕事をやるようになってからは、当時、企画室長だった山浦栄二さん(サンライズ3代目社長)と出会った。人によって育ててもらった」

 大河原さんは、どの作品も「メカの基本は一緒」と話す。「難しいことをやっているわけではなくて、皆さんどこかで見ているものの組み合わせなんです。この作品はどんなジャンルの作品なのかを分かった上でデザインすればいい。例えば、犬のメカを作るとして、ギャグテイストの『ヤッターマン』、ガンダム、ガッチャマンに登場させるメカは全部デザインが違っていなければいけない」と語る。

 ◇これからは面白いことだけをやっていこう

 タツノコプロは2017年に創立55周年を迎え、「ガンダム」シリーズは今年でテレビ放送40周年を迎える。現在71歳の大河原さんは「日本で一番最初にメカニックデザインというクレジットをいただいているので、それをどうにか職業にしたいということで、60歳までは何がなんでも仕事を続けようと思っていた」と振り返り、「60歳になってからは恩返しのつもりで、さまざまな講演やイベントに出ていた。70歳になってからはどう生きようかと、今考え中なんです」と話す。

 そんな中、今回「ラフ∞絵」に参加し、「これからは面白いことだけをやっていこう」と考えたという。展覧会の企画で、大河原さんは「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の両津勘吉をイメージしたロボットなどのイラストを描き下ろした。会見では「私はデザインするときは遊び心が大事と思っています。普通のメカにすると、プロダクトデザインは不必要なものを取っていく作業。アニメのメカはいろんなものをくっつけていって、脳裏に印象を残す作業だと思っている。今回、これを描きながら楽しませていただきました」と語った。

 「来年はガンプラも40周年なので、忙しい」といい、それ以外でもさまざまな企画が動いているという。「その都度楽しんでいます」と笑顔を見せた大河原さん。今後も、ファンが心躍るような作品が見られそうだ。

 「ラフ∞絵」は、大河原さん、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」で知られる秋本さん、「FINAL FANTASY」のイメージイラストなどで知られる天野さん、「魔法の天使 クリィミーマミ」のキャラクターデザインなどを手がけた高田さんが共演。それぞれの代表作を中心にラフ絵や完成原画が約800点展示される。4月2~16日開催。開催時間は午前11時~午後8時(4月2日は午後2時開場)。入館料は一般2000円、小・中学生は無料。

アニメ 最新記事