連続テレビ小説(朝ドラ)や大河ドラマで知られるNHKにおいて、金曜午後10時放送の「ドラマ10」が新たな人気ドラマ枠となりつつある。現在も女優の小芝風花さん主演で、丹羽庭さんの同名マンガを実写化した「トクサツガガガ」が好評で、視聴者から「今期(2019年1月期)ナンバーワン!」といった意見のほか、早くも続編、または特撮パートをメインとしたスピンオフの制作を望むファンの声が上がっている。知る人ぞ知るドラマ枠であったNHKの“金10”が、なぜここまで注目を集めるようになったのか。その理由を探ってみた。
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「ドラマ10」が現在の金曜午後10時に放送されるようになったのは、今から約3年前の16年4月から。その第1弾として放送されたのが、石田ゆり子さん主演の「コントレール~罪と恋~」。戸田恵梨香さん、ムロツヨシさんが共演したTBS系連続ドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」のヒットも記憶に新しい脚本家・大石静さんによるオリジナル作で、小さな子供を持つ母親でもあるヒロインの“禁断の恋”を描き、ヒロインと同世代の子供を持つ40代女性を中心に支持を得た。
以降、昨年度までに九つのドラマが制作されてきた「ドラマ10」だが、「知る人ぞ知るドラマ枠」からはみ出るようなヒット作が続くという状況にはならず、最近のドラマ視聴の盛り上がりの一つのバロメーターとされる“SNSウケ”という意味で、大きな話題になるような作品は多くはなかったような気がする。
そんな「ドラマ10」の潮目が変わり始めたのが18年に入ったあたりから。特に昨年7月期に放送された「透明なゆりかご」がターニングポイントになったと言っても過言ではないだろう。“真実の産婦人科物語”といわれている沖田×華(おきた・ばっか)さんの同名マンガの実写化で、当時16歳だった女優の清原果耶さんを主演に迎え、人工妊娠中絶(アウス)をはじめ、原作同様に妊娠や出産の“陰の部分”を正面から描き、20~30代の女性を中心に大きな共感を呼んだ。
アウス以外にも、10代の妊娠や周囲に理解を得られない出産、母体危機から「死」に至るまで、重いテーマに切り込んだドラマ作りは、ある意味、非常にエッジが効いていたが、清原さんらキャストを含む制作陣の熱意は、30~40代の男性や未成年といったメインターゲット以外にも届き、公式ホームページの掲示板は「娘と一緒に見ています」といった書き込みが見られ、親子2世代視聴の実現といった“うれしい誤算”もあった。
また「透明なゆりかご」の後を受け、18年10月から「ドラマ10」で放送された「昭和元禄落語心中」では、主人公の10代から老年期までを一人で演じた岡田将生さんをはじめキャスト陣の熱演がSNSでたびたび話題に。“質の高いドラマ”を表彰する「第14回コンフィデンスアワード・ドラマ賞」で岡田さんが主演男優賞、共演の山崎育三郎さんが助演男優賞を受賞したことも、見逃せないだろう。
エッジーな作品作りという意味では今年1月に始まった「トクサツガガガ」も前2作に負けていない。隠れ特撮オタク役の小芝さんの存在、オタクたちの生態に迫るあるあるネタや共感必至の名言の数々、「仮面ライダー」「スーパー戦隊シリーズ」で知られる東映の協力によって実現した、本気すぎる特撮パートに劇中ソング、他局のパロディーも取り込んだ演出に至るまで、人気の要因は多岐にわたるが、どれも“攻めている”というのが特徴だ。
ゆるやかながら制作側が求めた視聴者層は30~40代だったが、年齢性別に関係なく原作マンガのファンと特撮ファンを取り込むことに成功。さらには仮面ライダーやスーパー戦隊が放送されている“日曜の午前(朝)”を引き合いに「ニチアサ感がハンパない」と言われるほどの特撮パートは子供のハートもとらえたようで、「息子と一緒に見ています」という視聴者も。まさにエッジーな作品作りが奏功した形の“うれしい誤算”だろう。
「トクサツガガガ」の人気を受け、SNSでは「透明なゆりかご、昭和元禄落語心中ときてトクサツガガガ。大変良き」「透明なゆりかご→昭和元禄落語心中ときて、コレ!この枠のドラマ。ハズレなし!」「NHKドラマ10。相変わらずの作り込みの極み」といった投稿が数多く見られるなど、NHKの“金10”が人気ドラマ枠として定着を見せており、今後の動向には注目だ。
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