俳優の鈴木亮平さんが主演を務めるNHKの大河ドラマ「西郷(せご)どん」は、15日放送の第26回「西郷、京へ」から新章に突入した。二度にわたる島流しを経た西郷吉之助(鈴木さん)が、動乱の幕末を舞台に揺るぎない革命家へと覚醒していく姿を描く……という“通称・革命編”。勝海舟(遠藤憲一さん)、坂本龍馬(小栗旬さん)、岩倉具視(笑福亭鶴瓶さん)、桂小五郎(玉山鉄二さん)という4人の英傑と西郷との出会いとともに、見どころとなっていくのが一橋慶喜(松田翔太さん)との再会と対立だ。徐々に打倒・徳川=倒幕へと傾いていく西郷を「鬼モード」と呼ぶ鈴木さんに話を聞いた。
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「西郷どん」は、明治維新150年となる2018年放送の大河ドラマ57作目。薩摩の貧しい下級武士の家に生まれた西郷隆盛(吉之助)の愚直な姿にカリスマ藩主・島津斉彬が目を留め、斉彬の密命を担い、西郷は江戸へ京都へと奔走する。勝海舟、坂本龍馬ら盟友と出会い、革命家へと覚醒。やがて明治維新を成し遂げていく……という内容。
新章“革命編”では、「禁門の変」に始まり、「長州征伐」や「薩長同盟」、「大政奉還」に「戊辰戦争」などといった歴史的事件が目白押し。まさに動乱の時代で、西郷にとっても今までの人生で経験したことのないような、怒濤(どとう)の4年間を過ごすことになる。
人間的にも大きく変貌を遂げる西郷。その最初にして最大のターニングポイントになるのが、元治元(1864)年7月、長州藩と御所の護衛にあたっていた会津藩・桑名藩・薩摩藩などが激戦を繰り広げる「禁門の変」だ。
ここで西郷は初めて戦というものを体験する。鈴木さんも「吉之助だけじゃなく薩英戦争を経験した薩摩以外、日本全国で250年ぶりくらいに経験する戦。吉之助自身、鎧を着るのも初めてで、罪人として流された島から戻ってきて、その3カ月後には司令官になっています。変わらなくてはいけないよう追い詰められていくというか、結果、京の町がだいぶ燃えてしまうわけで、じゃあ自分は何をしていけばいいのかと、本気になるきっかけ。ここからググッとシリアスになっていきますね」と語る。
また、鈴木さんによると「禁門の変」では松田翔太ファンを喜ばす“ある一つ”の見どころがあるといい、「慶喜様も出陣するシーンがあるんですけど、 陣羽織にハチマキをしていて、ちょっとある有名な方を想像しました。そんなところも楽しんで見ていただけたら」と笑っていた。
かつて、心酔していた“殿”こと薩摩藩主の島津斉彬(渡辺謙さん)の命を受け、慶喜の将軍擁立に奔走したこともある西郷だが、民のため、そして日本をよくするため、“倒幕”へと傾くに連れ、“ヒー様”こと慶喜、盟友の橋本左内(風間俊介さん)との3人で「磯田屋」で過ごした楽しい日々が忘却の彼方になるほど、慶喜との対立を深めることになる。
鈴木さんは「誤解を恐れずにいうと、島に流される前の吉之助は、『斉彬様が言ったから』ということだけで突っ走っていた。本当の慶喜様を見極めていたわけではないと思う」ときっぱり。「島から戻ってきて面と向かって話し合ったとき、お互い当時とは状況も変わっていて、一人の男としてどうも考えが違うとなる。慶喜様も徳川を背負うようになり、僕らが信じていた一橋さまとは違う人間になってしまった、このままでは民が苦しむと分かる瞬間があるんですけど……。ただ完全に『徳川を討つ』と決めるまでは、あの磯田屋での日々をちゃんと心の中にはとどめておきたいっていうのはあったので、その両方向に気持ちが引っ張られっるというところは大事に演じたいなって思いましたね」としみじみ。
「地の果てまでも追い詰めてやる」というせりふに代表されるように、西郷は打倒・徳川=倒幕に向け、“鬼と化す”。鈴木さん自身「ポジションや地位って、責任を与えられるということだと思うのですが、ここまで人を変えるのかって思いましたね」と、その変化に驚きつつ、最後には「西郷さん自身、どこかで人情を捨てきれない苦しさが積み重なってきていて、人情家過ぎるということを自覚し始めているところ。徳川を倒して、新しい体制を作ることで、民が豊かになり、みんながおなかいっぱいご飯が食べられる国にできるんじゃないか、そのために犠牲になる命があることは仕方がないというふうに今は思ってはいますが、果たしてそれを成し遂げたとき、自分の中で何かを得たと思うのか。それは別問題かなという気はしています」と複雑な胸中を明かした。
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