ダンダダン
第7話「優しい世界へ」
11月14日(木)放送分
「翠星のガルガンティア」「鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星」などを手がけた村田和也さんが監督を務め、「交響詩篇エウレカセブン」などのボンズが制作するオリジナルアニメ「A.I.C.O. Incarnation」が9日、Netflixで配信をスタートした。「翠星のガルガンティア」などの鳴子ハナハルさんがキャラクター原案を担当。人工生体が生み出された近未来の日本を舞台にしたバイオSFアクションだ。「タイトルの『Incarnation』には『命を創り出す』という意味が込められている」と話す村田監督に、作品への思いや制作上のこだわりを聞いた。
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アニメは、人工生体の研究中に起きた大事故・バーストで家族を失った橘アイコが、自身の体に隠された秘密を解くため、案内人の神崎雄哉と護衛部隊のダイバーたちと共に閉鎖されたエリアに侵入する……というストーリー。人工生命の研究所のある黒部峡谷一帯は、暴走した人工生命体・マターの侵食域。アイコたちはマターと戦いながら目的地を目指す。
本作は、村田監督がボンズの天野直樹プロデューサーからオリジナル作品制作のオファーを受けたところから始まったという。監督は「天野プロデューサーからは『チームによるアクションもの』というお題をいただきました。そこから、いろいろ考えていく中で、近未来の日本を舞台にして、ある生物的災害で閉鎖された地域に特殊任務を負ったチームが潜入してミッションを達成する、というのを物語の骨格にしようということになっていきました」と振り返る。
それとは別に、以前から監督の頭の中には「体を奪われてしまった少女が謎の少年の導きで自分の体を取り戻す旅に出る」という企画があったという。「自分の体を失ってしまうという極限状況に陥った少女は一体何を感じ、体験するのか。そういうことを描こうとした企画でしたが、その設定が今回の企画にそのまま取り込めるのではないか、ということを思い立ちました」
「少女が自分の体を取り戻す旅に出る」という企画は、監督が「翠星のガルガンティア」の企画を考えていた時期と同時期だったという。「人間の社会を入れる器としての船団に対する魅力と、個体レベルまで焦点を絞って自分の体がなくなってしまうことがモチーフになる物語。その二つを思い付いて、それぞれ作品として温めてきた」と話す。
アニメの舞台となるプライマリーエリアは、黒部峡谷をモデルとしているが、当初は都市部を舞台にすることも構想にあったという。ただ、監督は「例えば東京であれば、山手線の内側が特殊な状況になって人が入り込めなくなる。そうすると首都圏エリア全体が舞台になってしまい、話がすごく大きくなって、拾わなくちゃいけない局面が多々出てくる。政府の対策や住民の避難などについて描き始めると群衆パニックものになってしまう」と考えた。
「アクションものをやる上では、個々のキャラクターの活躍がはっきり際立たなくてはいけない。そうすると、群衆はむしろ必要なくて地域を限定した方がいいんじゃないかと。そこで、閉鎖空間、限定された空間を使った方がいいのかなと思った」と語った。
監督は「黒部峡谷は、日本で最後の秘境と言われるぐらい人の入りにくい場所。そこがバイオ研究都市として整備されていて、科学の最先端の中枢であり、世界から注目される存在になっている。そういう世界観が魅力的だなと思いました」と明かした。
作品には、人の手で作られた人間そっくりの人工生体など、未来で生み出されるかもしれないものが登場する。「元々人体や脳に興味あった」という監督は、自身の思う「『こんなものがあったら便利』『こんなものがあったらすてき』」ということが作品のキーワードの一つになっているという。
「今、再生医療の研究がすごく進んでいます。ES細胞(胚性幹細胞)やIPS細胞(人工多能性幹細胞)、クローニングなどが実現化していくと、医療行為や人生体験そのものがどんどん変わっていくだろうなと。人体そっくりのものを一から創れるようになったらそれこそ自由自在ですよね。そういう時代、技術があってもいいんじゃないか、『これがあったら便利』というところがスタートになっているんです」と監督。
続けて、「私自身、未来のシミュレーションが好きなんですね。人類がこの先、出会うかもしれない事態、出来事みたいなことを考えて、それを実際に作品にして皆さんに見てもらう。生々しい体験として感じ取っていただければと思います」と話した。
タイトルにある「Incarnation」(肉体化、化身)という言葉にも「命を創り出す」という意味が込められているという。「人を創り出すという行為であったり考えを象徴するものとして『Incarnation』という言葉を使っています」と明かした。
アニメには科学的な側面、アクション、人間ドラマとさまざまな要素が織り込まれている。監督は「先入観を持たずに普通の女の子アイコの心情に乗っかってみてほしい。アイコと視聴者の方が、一緒にいろいろなことにビックリしながら、発見、体験して楽しんでもらえたらと思います」と思いを語った。
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