沢村一樹:記憶喪失の難役も「悩むことはなかった」 「ひよっこ」で“本当の純愛”に出会う

NHK連続テレビ小説「ひよっこ」に谷田部実役で出演している沢村一樹さん (C)NHK
1 / 1
NHK連続テレビ小説「ひよっこ」に谷田部実役で出演している沢村一樹さん (C)NHK

 有村架純さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ひよっこ」に、ヒロイン・みね子の父・谷田部実役で出演している沢村一樹さん。ドラマの第2週で早くも行方知れずになり(後に引ったくりに遭った際の“衝撃”で記憶喪失になっていたことが判明する)、第17週でみね子と再会を果たすまで、長い不在期間があったものの、物語を前進させるキーマンとして、その好漢ぶりで視聴者に強い印象を残してきた。「行方知れずの間は、よく『早く帰ってあげてください』って言われて(笑い)。今はずっと、どこに行っても『記憶は戻るんですか』って言われてます」と話す沢村さんに、役やドラマ、共演者の印象などを聞いた。

あなたにオススメ

 ◇実の「責任感の強さ」が招いた記憶喪失  

 沢村さん演じる実は当初、谷田部家の借金返済のため1年のほとんどを東京の工事現場で過ごすも、いつも離れて暮らす家族のことを思っている心優しい父親として描かれていた。そんな実は、出稼ぎ先の東京でいきなり消息を絶ってしまい、後に引ったくりに遭った際の“衝撃”で記憶喪失になっていたことが判明。人気女優の川本世津子(菅野美穂さん)の家で一緒に暮らしているところをみね子が訪ね、全ての事実が発覚するという展開だった。

 沢村さんによると、実の記憶喪失は「本人の責任感の強さ」に起因しているといい、「実は頭を殴られてから記憶を失うんですけど、殴られた脳の衝撃で記憶を失ったわけではないんです」と説明。「『お金を取られてしまった』『家族に迷惑をかけてしまう』っていう精神的なストレスからくる記憶喪失で、(例えば)優秀な経理の方が、ものすごく大事な計算を間違えてしまってもなることがあるらしいです。“ポン”ってその前の記憶が全部なくなったり、それくらい責任感が強いとなるという話を聞いていたので、(役として)悩むことはなかった」と振り返る。

 また沢村さんは、記憶がないことから「逆に“素”の実さんが出ている」といい、「いろいろなものをとっぱらったとき、本当の実さんはどういう人なのか。物語の最初の方で、家族にすごく好かれていて、奥さんをすごく愛していて……という実さんが“むき出し”になっていることを意識して演じました」とも語る。現在は奥茨城に戻り“生き直している”過程にある実だが、記憶が戻るのかどうかについては「最終回を見終わったとき、いろいろなことを皆さんなりに考えてくださいというふうになっている」とはぐらかすと、「でもそこが面白いと思います」と笑っていた。

 ◇夫婦間の純愛を強く意識 有村架純の“無言の演技”に衝撃 

 物語では実が記憶を失う前はもちろん、失ってからも木村佳乃さん演じる妻の美代子と仲むつまじい姿を随所に披露し、視聴者を温かい気持ちにさせてきた。沢村さんも「僕は本当に純愛ものをやっているような気持ちで演じていて。本当の純愛ってこういうものなんだろうなあ」と照れつつ、「そこは強く意識しましたし、正直、台本を読んだとき『本当に?』っていうのもあったんですけど、美代子となら純愛ができるんじゃないかっていうのは感じながら、しっかりと集中してやったつもりではあります」と胸を張る。

 さらに沢村さんは、美代子役の木村さんには「いつもすごく助けられている」といい、「谷田部家が明るく見えるのはお父さんが朗らかだからではなく、彼女(美代子)がすごく元気だから」と感謝する。さらに「いい意味で、いつも気を張っていない、リラックスして芝居をしている」と感心していた。

 一方、娘のみね子役の有村さんについては、第18週の第106回で実を巡って世津子と美代子が対峙(たいじ)するシーンでの“無言の演技”が印象に残っているといい、「美代子がみね子の後ろに回って肩に手をやって『この子がどんな気持ちで働いてきたか分かりますか』って言ったときの有村さんの顔が、四つか五つか幼く見えた。あまりにもつらかったからなのか、大人同士のやりとりから一歩引いて、ちょこんとイスに座っていて。『なんて顔するんだ!』って、僕も涙がバァーッと出そうになった。あの表情をあの年齢で、何もしないっていう演技をするのってすごく勇気があることで、この子すごいなって」としみじみを思い返していた。

 ◇終盤は忙しい週に?「びっくりするくらいうまくいく」

 物語は終盤にさしかかり、残りわずかとなってきたが、沢村さんは「僕は岡田さんの脚本の伏線の張り方が好き。『ひよっこ』って登場人物が多いのに、一人一人がしっかりと描かれているドラマなので、みんなが気になっているところをくまなく、張られていた伏線が次々といろいろなところに結びついていく。普段、生活していて、バタバタバタっていいことが起きたりすることってないですか? 自分だけじゃなくて周りにも。そういうことってあるなという感じの、忙しい週になると思いますよ」と予告する。

 続けて、「“自分の恋”もありますし、世津子さんにも幸せになってほしい。変なひねりを入れて作ってはいない感じで、こんなにうまくいくのって、びっくりするくらいうまくいく(笑い)。ただうまくいく、いかないではなくて、そこから新しく生まれてくる関係や、吐き出される感情を見て、楽しんでほしいですね」と話していた。

 「ひよっこ」はNHK総合で月~土曜午前8時ほかで放送。全156回を予定。最終回は30日に放送される。

テレビ 最新記事