ダンダダン
第5話「タマはどこじゃんよ」
10月31日(木)放送分
「おそ松さん」「君の名は。」などの人気アニメとコラボした“飲食系コラボイベント”が人気を博している。一見コアなファン向けのイベントに思われるが、最近ではライト層にまで支持が拡大しているという。人気の理由を“オタレント”の小新井涼さんが、独自の視点で分析する。
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アニメの飲食系コラボイベントとは、コラボカフェや、テーマパークでのコラボフードの販売といったアトラクション形式で、アニメの中に出てきた食べ物や、キャラをイメージした飲食物を提供するリアルイベントです。元々は主に池袋のアミューズメント施設や秋葉原のメイド喫茶などでアニメファン向けに開催されていましたが、最近ではISETANやPARCOといった百貨店や映画館、六本木や原宿などでも、一般向けのイベントとして開催されるようになってきました。かつてはオタク向けの限定的なイベントだったものが、どうしてこんなにポピュラーに、一般の人々にまで受け入れられるようになったのでしょうか。
まずはその魅力を探ってみましょう。私自身、飲食系コラボイベントにはこれまで何度も参加してきましたが、冷静に考えてみると、コラボフードは他のアニメグッズと違い食べたらなくなってしまいますし、正直お値段も普通の飲食店と比べると割高です。しかしアニメの飲食系コラボイベントには、頭ではそう分かっていてもついつい足を運んでしまう、抗いがたい魅力があるのです。
例えば、そこでしか味わえない“時間と空間”が挙げられます。音楽や映像や装飾など、作品の世界観でたっぷり満たされた店内で、仲間とじっくり作品やキャラ愛を語り合う幸せなひと時は飲食系コラボイベントならではです。他にも、やはりそこでしか味わえない“独特の達成感”があります。提供される飲食物は、確かに食べたらなくなってしまいますが、好きなキャラのフードやドリンクを全種完食することは、グッズのコンプリートとはまた違う達成感、そして満腹感を与えてくれるのです。
しかしこうした魅力は、結局のところコアな作品ファンやアニメファン向けのものといえるでしょう。ところが最初に説明した通り、今や飲食系コラボイベントは身近な施設でも頻繁に催され、老若男女問わず楽しまれています。アニメの飲食系コラボイベントが広く一般にまで受け入れられているのには、上記の魅力とは別の要因がありそうです。
そう考えてまず思いつくのは、“アニメ飯”に対する潜在的な憧れです。アニメをみていて作中の食べ物、いわゆる“アニメ飯”が、やけにおいしそうに見えてくるという経験は、アニメファンでなくとも一度はあると思います。例えば「ルパン三世 カリオストロの城」のミートボールスパゲティや、「天空の城ラピュタ」の目玉焼きの乗ったトースト(通称ラピュタパン)など、食べてみたいけどわざわざ再現するのもなあ、と思っていたアニメ飯を、アニメの飲食系コラボイベントは実際に提供してくれるのです。憧れのアニメ飯がデパートや映画館などで食べられると知ったら、熱狂的なファンじゃなくても、お出かけついでにちょっと寄ってみようかな、という気持ちになるのではないでしょうか。
次に考えられるのは、“イメージフードとイメージドリンクの存在”です。アニメの飲食系コラボイベントで提供されるのは作中の食べ物だけではありません。例えば「君の名は。」のコラボカフェには、作中に出てくる彗星をイメージしたデザートや、三葉をイメージしたドリンクなどの、いわゆる“イメージフード”や、“イメージドリンク”といったメニューもありました。それらは本来、作品やキャラクターとはなんの縁もゆかりもない、ただのアイスやオレンジジュースです。それにもかかわらず、作品やキャラを特徴付ける記号や色(例えば彗星をイメージした星や、三葉の組ひもの色であるオレンジや赤)がうまく組み込まれることによって、そのフードやドリンクから、ちゃんと作品やキャラクターのイメージを感じ取って楽しむことができるのです。こうしたメニューはキャラがそのまま描かれるよりもさり気なく、でも分かる人には分かるおしゃれな見た目なので、同じ方法で作品やキャラを表現した「カードキャプターさくら」のイメージアクセや「セーラームーン」のイメージコスメといった“イメージグッズ”を好む女性層に、特に受けが良いのだと思います。
最後はSNS、特にInstagramとの相性のよさです。同じ料理写真でも、ただ食べたものをアップするのではなく、“目を引く料理を、おしゃれに撮った写真”が多いInstagramへアップするには、見た目が華やかでネタにもなるコラボフードやドリンクはうってつけの被写体です。例えばたくさん並んだサムネイルの中にピカチュウの顔を模したプリンがドーンと表示されていたら、気になって思わずクリックしてしまいますよね。そのためシェアやいいね!といったリアクションももらいやすく、写真はイベント期間が終了した後まで共有、拡散され続けます。そうしてイベントの存在が知られるようになり、さらには写真を見て実際に食べに行った人が「私も食べたよ!」と同じように写真をアップすることで、コラボイベントはますます一般的にも普及していったのではないでしょうか。
こうしてみると、かつてはアニメファンに向けて限定的に開催されていたイベントがここまでポピュラーになったのは、アニメ飯への潜在的な憧れやイメージグッズの人気、写真投稿型SNSの文化といった複数の要因が、タイミングよく合致した結果であることが言えそうです。
最近ではアニメの飲食系コラボイベント専門の店舗も増え、さらに「ドラえもん」や「ドラゴンボール」といった誰もが知っている作品のコラボイベントも数多く開催されるようになりました。今後もアニメの飲食系コラボイベントの人気はますます広がりをみせていくことが予想されます。まだ体験したことがないという人も、まずは試しにインスタでの画像検索、そして最初は「ちょっとお茶しに」くらいの気軽さで、その楽しさをぜひとも一度、ご自身で味わってみてください。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。アニメ好きのオタクなタレント「オタレント」として活動し、ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」やユーストリーム「あにみー」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)のアニメを見て、全番組の感想をブログに掲載する活動を約2年前から継続。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、社会学の観点からアニメについて考察、研究している。
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