15~18日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催された国内最大のゲーム展示会「東京ゲームショウ(TGS)2016」で、PS4用のヘッドマウントディスプレー「PSVR」が注目を集めた。ここ数年、毎年のように“元年”とうたわれながら、もう一つぱっとしなかったVR市場で、コンテンツや話題性の高いPSVRにかかる期待は大きい。その魅力と課題について探った。
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VR市場の“切り札”と目されるPSVRは、TGSで3度目の展示で「過去最高」の約50台を展示した。問題とされた「VR酔い」も減らすことに成功し、ゲームの操作精度も上がって画質もアップした。PSVRで一番人気の「バイオハザード7」(カプコン)について、関係者は「誰もが知る人気シリーズが全編VR対応というのが大きい。さらにホラーとVRの相性も抜群」と話す。
今回の「バイオハザード7」で体験できたのは、廃墟の館を舞台に、不気味な老婆に追いかけ回される内容。内容を熟知しているはずの宣伝担当も「途中でやめてしまいたくなるほど怖くなる」「男でも声を上げる」というほどだ。
「バイオハザード7」だけでなく、他にも美少女キャラクターとの交流を疑似体験できる「サマーレッスン」など、VRコンテンツの評価は高く、PSVRへの取材申し込みも多かったが、しかしそのまま手放しでは喜べないという。VRは実際に体験しないと魅力がほとんど伝わらないからだ。興味を持ったユーザーが、いくら体験レビューを読んでも、何度遊んでいる映像を見ても、何が楽しいのかほとんど分からないはずだ。
従来のゲームであれば、派手な映像シーンをみせれば効果的だったが、今回はその手は使えない。現状は、PSVRの体験プレーをしてもらう地道な販促活動が王道といえそうで、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は、PSVRの発売後も、店頭で体験コーナーを設けてアピールを続ける考えだ。関係者は「まずは1人でも多くの人に新しいゲームの体験してもらうのが重要。購入した人のバイラル(口コミ)も期待している」と話す。
かつて大ヒットした携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」は、当初2画面やタッチパネルの楽しさを伝えるのに苦戦し、売り上げは苦戦した。ところが、発売後も体験会を開いて商品の魅力を伝えながら、コンテンツ拡充の過程で「脳トレ」を見い出し、驚異的なブレークにつなげた。Wiiも従来のゲームにない異質な体験を持ち込み、「Wiiスポーツ」や「Wiiフィット」をヒットさせた。
PSVRも、ユーザーに新鮮な体験をもたらして、驚かせるという意味では、DSやWiiの初期と類似点は多い。また、DSがコンテンツの継続的な提供に成功した一方で、Wiiはあまりにも独自要素が強すぎてコンテンツをそろえきれずに、最終的に失速したという点は、参考にすべきだろう。そしてPSVRで継続的に利用者が喜ぶコンテンツをそろえ、可能であれば発売からなるべく早く、遅くとも数年内に独自のヒットコンテンツを生み出せるかが勝負だ。脳トレ、Wiiフィット、そしてポケモンGOなど近年のヒットコンテンツの共通点は、普段ゲームをしないライトユーザーを取り込んだことにあり、PSVRの成功にも、その層は外せない。
PSVRの開発責任者であるSIEの吉田修平さんは「VRは新しいゲーム体験ができる『鉱脈』。掘れば掘るほど面白い」と話している。ただ、VRの可能性はゲーム業界だけでなく、ゲーム業界以外も目を付けるなど誰しもが認めるところ。スマートフォンを活用した安価なVRゴーグルも多数登場しており、「脳トレ」のような斬新なコンテンツを待っている状態だ。そうした現状で、ゲーム業界が先んじて、VR市場を制覇できるのか。PSVRに課せられた使命は大きい。
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