ダンダダン
第5話「タマはどこじゃんよ」
10月31日(木)放送分
巴亮介さんのサイコスリラーマンガを実写化する映画「ミュージアム」(2016年秋公開)の撮影現場がこのほど公開された。「ミュージアム」は、カエルのマスクをかぶって残虐な殺人を行う犯人・カエル男と、妻子をターゲットにされてしまった刑事・沢村久志の攻防を描いたマンガ。俳優の小栗旬さんが沢村役で主演を務め、映画「るろうに剣心」シリーズの大友啓史監督がメガホンをとっている。撮影の合間に取材に応じた大友監督は、「小栗君とは本当に仕事がしたいと思っていた」といい、「彼とならこの仕事を引き受けますと答えたほど」と今作への思い入れを力強く語った。
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撮影は、カエル男が暮らす洋館の地下の一室に沢村が潜入するシーンが公開された。神奈川県某所にある建物内に組まれたセットは、一部屋一部屋にあるオブジェに至るまで細かく丁寧に作り込まれている。各部屋の中には、カエル男がターゲットを写した膨大(ぼうだい)な写真や資料が貼り出されているほか、殺人に使うための道具、その戦利品とも呼ぶべきもの、新聞の切り抜きなどが散らばり、カエル男の狂気を感じさせる。
カエル男というキャラクターを、「物語からはみ出ていく存在」と大友監督は表現し、「とんでもない悪役だけれど、その人物が魅力的になるということが大事。倫理やモラルとか真面目に考えると問題もあるけれど、映画というフィクションの中では悪役がちゃんと魅力的になっていけばいくほど、より映画は豊かになる」と力説する。
うっすらとした寒気を漂わせる中、薄暗く入り組んだような廊下と部屋の配置はまるで迷路のようで、緊迫感あふれる表情で小栗さん扮(ふん)する沢村が地下へと降りてくる。警戒しつつ廊下を探るように歩いていく。そして、一つのドアの前で何かを感じて室内へと入り、物色している中でパソコンのモニターに映る映像を見て驚く……といったシーンを、テストも含め、小栗さんと大友監督が確認しながら撮影が進行していく。
毎回こだわりの撮影を行うことで知られる大友監督だが、今作では「カエルのマスクや、カエル男が趣向を凝らして殺していく死体などの特殊造形」にこだわったという。「特にカエル男の、いわば“アート”になっている死体のありようについては、残虐の一言で片付けられるものではなく、彼の“美意識”が入り込むようにしている」と大友監督は明かし、「カエル男は、殺す対象となる相手の生活や考え方、それぞれの人生に当てつけるようなやり方で刑を与えています。現代社会へある種の皮肉も込めて、刑罰を考えていますからね」と説明する。そして、「カエル男のキャラクター描写の一環として、その皮肉を造形として表していくということは、しっかりやらないといけない」と意気込みを語った。
大友監督は、撮影現場での小栗さんの印象を「スタッフに聞いたところによると、(小栗さんは)褒められるのが嫌いみたい(笑い)」といい、「だから(演技が)いいと思っても、あまりいいということは言わないようにしようと思った」と冗談交じりに語る。続けて、「理想が高いんでしょうね。いい意味で“体が勝っている人”」と俳優としての小栗さんを表現し、「考えない役者ということではなくて体で考えてくるというか、役者が誰とか妻役がどういう顔か、息子役がどういう子なのかということと、彼女たちと過ごす(考えさせる)時間を与えると、ちゃんと肉体に反映させてアウトプットしてくる」と小栗さんの役作りを分析する。「観察だけではなく体験することが大事で、そこに近づくための努力は必要」と大友監督は語り、「小栗くんは若いけれど、舞台も含めて経験豊富だから、そこに気付いているんでしょうね」と称賛する。
原作について大友監督は、「いろんなカルチャーを浴びてきた世代が書いたもの」という印象を持ったといい、「2009年に始まったばかりの裁判員制度(をモチーフにしているの)が面白いですね」と魅力について言及する。続けて、「あまり小難しい話にしようとは思ってはいませんが、ベースとして背景に現在の日本の状況みたいなものを(原作は)しっかりと押さえている」と感心し、「刺激的なことばかりに目が行きがちだけど、物語の現代的な勘どころは押さえていますからね。やっぱり日本のマンガはある意味“生きたメディア”なんだと思う」と持論を語る。そして、「そこをちゃんと僕らは取り上げて、例えばいかに個人情報というものが筒抜けになっているのかを、そういった点もバックグラウンドに置き、気にかけながら作っていきたい」と語った。映画は2016年秋に公開。(遠藤政樹/フリーライター)
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