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映画ドラえもん のび太の絵世界物語:異例の欧州ロケで表現した“絵の中の世界” 「ドラえもん」のリアルじゃない面白さ 寺本幸代監督インタビュー

「映画ドラえもん のび太の絵世界物語」の寺本幸代監督

 藤子・F・不二雄原作の「ドラえもん」の映画シリーズ第44作となる最新作「映画ドラえもん のび太の絵世界物語」が、3月7日に公開される。舞台は“絵の中の世界”で、ドラえもんとのび太たちが幻の宝石を巡り、時空を超えた大冒険を繰り広げる。監督を務めるのは、テレビシリーズの演出を担当し、2007年に「映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険 ~7人の魔法使い~」でシリーズ初の女性監督も話題になった寺本幸代さんだ。2013年公開の「映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館」以来、約12年ぶりに「映画ドラえもん」を手掛ける寺本監督に、制作のこだわりや、アニメ「ドラえもん」ならではの魅力を聞いた。

 ◇ヨーロッパならではの光と影の描写 絵のタッチを再現

 最新作は、「映画ドラえもん」シリーズの45周年記念作でもある。寺本監督は、約12年ぶりに「映画ドラえもん」の監督のオファーを受け、「驚きはしたのですが、またドラえもんの世界が描けるんだとすごくうれしかった」と喜びを語る。

 舞台は“絵の中の世界”。数十億円の価値がある絵画が発見されたニュースを横目に、夏休みの宿題である絵に取り組んでいたのび太は、突然、目の前に落ちてきた絵の切れ端をきっかけに、ひみつ道具のはいりこみライトを使って絵の中に入ることになる。絵の中で出会った不思議な少女・クレアの頼みを受け、アートリア公国を目指すドラえもんたちだったが、そこはニュースで話題の絵画に描かれた中世ヨーロッパの世界だった……というストーリー。

 寺本監督は当初、「絵を題材にした作品」というオファーを受け、脚本の伊藤公志さんらスタッフと共にストーリーを形作っていったという。「ドラえもんのひみつ道具で、絵本入りこみぐつというものがあるのですが、そんなふうに絵の中の世界でいろいろできたら面白いんじゃないか?と。そこに、これまで『映画ドラえもん』であまり舞台になっていない中世ヨーロッパの雰囲気がミックスされたら面白いんじゃないかということでストーリーが固まっていきました」と語る。

 ただ、中世ヨーロッパを題材にした作品は少なく、資料にも限りがあったことから、寺本さんらスタッフはヨーロッパでロケハンすることになった。「映画ドラえもん」の制作で海外ロケをするのは異例のことだという。

 「ヨーロッパの13世紀の街並みが残っている場所も取材させていただいて、それがすごく刺激になりました。ネットでも今の街並みの写真を見ることはできるのですが、実際に行くと、日本とは違うヨーロッパならではの光の強さや空気感など、写真では分からない部分を実感できました。映画の中にも古い町並みや、光と影の描写といったロケで得たものを存分に入れています。のび太たちが中世ヨーロッパへ行くシーンでは、キャラクターの縁にもまぶしいハイライトをつけて光の強さを表現していますので、13世紀のヨーロッパに来たような気分になっていただけるんじゃないかと思います」

 オープニングでは、ドラえもんたちがゴッホの「星月夜」やムンクの「叫び」など実在の絵画の中に入るシーンも描かれる。“絵の中の世界”を表現するべく、背景美術にも特に力を入れたという。

 「絵の中の世界は、筆のタッチを見せられるようにしました。例えば、冒頭で油絵の中に入る時は、美術さんに油絵のもりっとした絵の具の感じを表現してもらったり、それぞれの絵によって違うタッチを出していただきました。また、のび太たちが暮らしている現代と、絵の中を違う雰囲気にしたかったので、現代の世界はいつもより写実的にしてもらって差を出せるようにしました」

 ◇絵の世界に興味を持ってもらいたい

 寺本監督らスタッフは、ヨーロッパへのロケハンなどから、めくるめく“絵の中の世界”の大冒険を表現しようとした。制作の上で大切にしたのは「絵の世界に興味を持ってもらいたい」ということだった。

 「のび太くんみたいに絵を描くのが好きじゃない、苦手な子に、今回の映画を通して、絵にちょっとでも興味を持ってもらえたら、好きになってもらえたらうれしいなという気持ちで作りました」

 作中では、中世ヨーロッパの画家たちがそうしたように、卵を使って絵の具を作るシーンも描かれる。

 「今はチューブで簡単にいろいろな色を使えますが、当時は絵の具を作るのもこんなに大変だったということを伝えられたらと。東京藝術大学の先生に取材させていただいて、『当時は卵の黄身は今よりもうちょっと白かった』など細かいことまで教えていただきました。そうしたアートの知識などもできるだけ入れ込んで、当時のことに思いをはせられたらと思いました」

 ◇写実を追いかけるのではなく、アニメらしい動きを大切に

 寺本監督自身は、大正後期から昭和初期に活躍した小林かいちの手掛けた絵が好きだといい、「写実的な絵よりデザイン的な絵が好きなんです。アニメでもそうなのですが、リアルな写真風よりも、アニメらしいぶっ飛んだ動きなどを表現したいなと思っているので」と語る。

 「映画ドラえもん」を手掛ける上でも大切にしているのは「リアルじゃない面白さ」だという。

 「『ドラえもん』は、キャラクター自体がすごくデザイン化されています。少ない線で、それでいて豊かなキャラクター表現になっている。アニメーションの『映画ドラえもん』でも、写実を追いかけるのではなくて、アニメらしい動きを大事にしたいと思っています。例えば、今回の映画でも、ジャイアンが工事現場でピンチに陥ったクレアを受け止めてガッツポーズをする場面があるのですが、そこではジャイアンの体形を一瞬マッチョ風に変えているんです。そういうことができるのがアニメーションの面白さだと思っていますし、今の時代でそれが出せる数少ない作品の一つが『映画ドラえもん』だと思います。昨今は、細かい描写や写実的な作品が多く、リアルはリアルでもちろん素晴らしいと思うのですが、そうではない面白さを見ていただきたいですね」

 最新作の見どころを「アクションもありますし、涙も笑いもある。見てくださった方が映画館を出た時にほっこりした気持ちになれるような、優しい気持ちになれるような作品になっていると思いますので、ぜひたくさんの方に見ていただけたらと思います」と語る寺本監督。ドラえもん、のび太たちと共に“絵の中の世界”を体感したい。

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