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押井守監督:「イノセンス」インタビュー 魂を消尽した作品 4Kリマスターで高解像度の威力を実感

「イノセンス」の一場面(c)2004 士郎正宗/講談社・IG,ITNDDTD

 士郎正宗さんの人気マンガ「攻殻機動隊」の劇場公開アニメ「イノセンス」「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」(押井守監督)の4Kリマスター版が2月28日から2週間限定で全国劇場にて上映される。「イノセンス」は2004年に劇場公開され、日本のアニメとして史上初めて、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出されたことも話題になった名作で、4Kリマスター版が劇場上映されるのは初めて。押井監督に制作当時を振り返ってもらった。

 ◇映像表現のレベルではピークに達した作品

 ーーご自身のキャリアで「イノセンス」はどんな位置付けの作品になっていますか?

 制作当時のあの規模の制作予算は、もう二度と組めないと思います。デジタルバブルが終わりかけていた時代でした。その自覚があったので、やれることは全てやりきろうという雰囲気が現場に充溢していましたし、これ以上はないレベルの優秀なスタッフが集まっていました。少なくとも映像表現のレベルではピークに達した作品です。デジタル技術は進歩しても、アニメーターや背景美術の「手技」は伝承できませんから。

 ーー制作時を「当時は病んでたな」と振り返っていますが、約20年前の時代の空気、それとも個人的に作品に取り組む中で感じていたことなのでしょうか?

 時代の空気は勿論ですが、個人的にも体調が悪く、かなり退嬰的な心理状態だったと思います。いま振り返ると自覚がないまま更年期を迎えていたのかもしれません。公開後に始めた空手の稽古で自分の肉体が目に見えて変化してゆくのを実感し、再び自信を取り戻すことができたように思います。

 ーー未来を予言していたかのようなメッセージも込められています。AIが社会に浸透しつつある今だから見えてくるものもあります。2025年にこの作品を見て、現代社会との関係をどのように考えていますか?

 明らかにあの時代よりも悪化していると思います。世界中で戦争が「露出」するなかで、あらゆる人間がその存在の根拠を問われています。ノイズとしての情報が飽和状態にある、というのが実感です。

 ーー引用によるセリフも印象的です。無関係だったテキストが引用元とは違った意味を持ってくるような感覚もあります。

 映画の本質は意識的にも無意識にも「引用」することで成立しています。この作品はそのことに関して可能な限り意識的であろうとする試みでもありました。肝心なのはその「引用」をいかに「編集」するかにあります。「コード」と「モード」の相互的な変換が演出という行為の実態ですから、言葉が多義性を帯びてくるのは当然ですし、演出上の狙いでもありました。その結果として「難解」という印象が持たれるのだと思います。

 ◇あらゆる場面で高解像度の威力を実感

 ーー当時、特に苦労したことは? 約20年経った今だから話せることはありますか?

 当代の最高レベルのスタッフが集まった、つまり現場には、妥協しない人間たちが溢れかえっていました。ですから、当然のように人間関係は複雑でした。その調整のためにエネルギーの半分以上を消耗したと思います。これほど軋轢の多い現場は過去にも経験がありませんでした。誇張でもなんでもなく、魂を消尽することで支えた仕事でした。

 ーー約20年を経て、今日の視聴者や批評家が「イノセンス」に見出す価値と、当時監督自身が意図していたメッセージとのギャップについて、どのように感じられますか?

 その判断は当事者である自分には判断がつきません。ただ、今回のように時間の経過を乗り越えて再上映されるということに、一定の手応えは感じています。映画は繰り返し見られることによってしか、その価値を証明できませんから。

 ーー4Kリマスターによるビジュアル面は?

 あらゆる場面で高解像度の威力を実感しました。劇場のスクリーンでこそ、その威力を実感できる筈です。キャラクターの演技だけでなく、背景美術の素晴らしさも堪能していただければ、制作に関わった全てのスタッフの努力が報われます。次はいつになるか判らない希少な機会です。劇場に足を運んでいただければ、監督としてこれに優る喜びはありません。

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