薬屋のひとりごと
第35話 狩り
3月21日(金)放送分
インタビュー(1)の続き。 2007年にフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で放送された人気テレビアニメ「モノノ怪」の完全新作劇場版三部作「劇場版モノノ怪」の第二章「劇場版モノノ怪 第二章 火鼠」が、3月14日に公開された。2024年7月に公開された第一章「唐傘」も約90分の上映時間で、約2600カットと、通常の同尺のアニメの2倍とも言えるカット数で、圧倒的な映像表現が話題になった。新作劇場版で新たな「モノノ怪」を作ろうとする中村健治総監督にこだわりを聞いた。
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中村総監督らスタッフは、新作劇場版では“色”の面でチャレンジングな試みをしていると語る。
「まず彩度を上げています。というのも、テレビ版の『モノノ怪』を見た一部の海外の方から『色がくすんでいる』という意見を多くいただいたんです。どうしてなんだろう?と調べてみたところ、人種によって目のセンサー、色の感じ方が違うということが分かったんです。それはどんなものをキレイと思うか?という感性ではなくて、そもそも色を感じる目の機能が人種によって違うと。なので、日本人の感覚で派手なものを作っていると思っていても『くすんでいる』と思われてしまうことがある」
そこから中村総監督は、公共デザインを手掛けるデザイナーなどの話を聞き、制作に反映させようとした。
「例えば、この地域の人たちはこの色を正義と感じて、この色を悪だと感じると。それがアジアと北米で全然違うとか。今回はどちらかというと、北米の方にも見やすい形になっているのかなと思います。世界中に配信される作品なので、その辺りを実験的に調整しています」と、世界を見据えた“色”を意識しているという。
映画館で上映する作品ならではの「振り切ったチューニング」にも挑戦している。
「映画のみならず『これは興行なのだ』というか。プロレスやスポーツの試合、あるいはテーマパークの中の一つのアトラクションのような意識で制作しています。映画館は、出掛けて行って、いつも見ているスマホの電源を切って、現代人では珍しい、一つのことに集中する独特な時間と空間ですから、配信があるから映画館に行かなくてもいいという人にも『これは映画館で見たほうが面白い』という価値と体験を提供したい」
カメラワークにおいても、「見ている人がアトラクションに乗っているような、自分が一緒に飛んでるような感じになるよう視線誘導を意識しています」とこだわった。
「また、シネスコサイズなので、人間が知覚できる左右110~120度を埋めることによって没入感を持たせられたらと。絵とドラマで脳と心のツボを同時に押すみたいな。そういうことを意識して画面のレイアウトを考えています」
中村総監督は「時代で劣化しないものを作りたいので、流行の方向性よりは普遍性を重視しています。長く、ゆっくり、楽しまれるものにしたいなと思っています」と語る。脳も心も刺激される「劇場版モノノ怪」。劇場版ならではの振り切った表現を堪能したい。
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