Azuki:NFTプロジェクトから生まれたアニメ 「アニメの将来を見据えた挑戦の一つ」 谷口悟朗インタビュー

「Azuki」のアニメ「Enter The Garden」のエピソード2「Fractured Reflections -楕円曲線上のセカイ-」の一場面
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「Azuki」のアニメ「Enter The Garden」のエピソード2「Fractured Reflections -楕円曲線上のセカイ-」の一場面

 NFTプロジェクト「Azuki」から生まれたアニメ「Enter The Garden」のエピソード2「Fractured Reflections -楕円曲線上のセカイ-」が2月28日、アニメプラットフォーム「Anime.com」で公開された。「Azuki」は、米ロサンゼルスを拠点とするスタートアップ企業「Chiru Labs」から生まれたプロジェクトで、アニメは全3部作で、「コードギアス」シリーズなどで知られる谷口悟朗さんがクリエーティブプロデューサーを務める。2024年4月に初公開されたアニメのエピソード1「The Waiting Man -待つ男-」はSNSで累計700万回以上の視聴回数を記録するなど話題になった。谷口さんに同アニメへの思いを聞いた。

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 ◇国という縛りの中でアニメを考えることはいずれ古くなる

 ーー世界中の人が楽しめる作品を目指したということですが、具体的にはどうしたのでしょうか? 日本向けに作る際とは違うのでしょうか?

 そこは目指していません。 まず、Azukiコミュニティーの仲間たちに喜んでもらうこと。 次に、Azukiを知らない人たちに少しでもAzukiを理解してもらえるようにすること。世界全体でみるとAzukiを知っている人は多いのですが、残念なことに日本で知っている人はまだ多くありません。結果として、アニメファンならわかる要素もあるけれど、日本のアニメファンには興味がない要素も入ってきた、ということです。この場合の日本のアニメファンというのは、主に30代前半までの深夜に放送されている原作物のアニメを見ている人たちという意味ですね。具体的にどう違うのかというのを語りだすと長くなるのと商売上の秘密ということもあるので御勘弁ください。

 ーーNFTに可能性、面白さを感じたところは?

 国という縛りの中でアニメを考えることは、いずれ古くなると思っています。 ジャパニメーションという考えが既に終わっているように、元々世界のアニメーションから影響を受けて広がった日本の「アニメ」が世界に向けて浸透し拡散していく中、製作費の在り方も考えていかねばならないと思っています。 製作費を特定の企業からだけに縛られることなく、より広く考えていかねばならない。 NFTは、その可能性を探る一つです。そして、理想としては、それによるスタッフへの還元です。いずれはその道を切り開きたい。

 ーー日本のアニメは世界中で人気です。谷口監督は世界で受け入れられている理由をどのように考えていますか? 今作でも“日本のアニメらしさ”を表現しようとしたのでしょうか?

 日本のアニメが世界で受け入れられているとするのなら、それは、世界の映像のルール、文法を元にしているからでしょう。 裏を返すと、それを忘れた時、日本のアニメは世界の中で孤立します。文法が違ってしまったら伝わらない。また、マンガというとても相性が良いパートナーがいることも忘れてはいけません。ゲームとの付き合いも、もう40年くらいになります。それらとの付き合いやビジネス的な制約の中で培われた技術や考え方を使っているわけですから、それが“日本のアニメらしさ”と言われるなら、そういうことなんでしょう。

 ◇私たちが探っていることの本当の答えは10年後、20年後に

 ーー3本を別のコンセプトにした理由は? エピソード2、3で表現しようとしたことも教えてください。

 まず、一本目は「Azukiの世界とは、こういうことでは?」というものを映像化することを主眼とし、山元隼一監督を中心に作ってもらいました。あえていうのなら、これが現代のアニメのテイストです。 二本目はAzukiの既存キャラクターを使い、その可能性を高津幸央監督を中心に探ってもらいました。個人的には1980~90年代OVAから現代にいたるまでの見せ方をうまく組み合わせたスタイルだと感じました。キャスティングも一本目がアニメでの活躍が多い声優さんたちに対し、こちらは外画の吹き替えとかでも活躍されている人たちにお願いしています。三本目は良い意味でどこまでAzukiの世界を広げられるかの挑戦です。こちらも素晴らしい監督に参画いただき鋭意制作中です。私が一番完成を楽しみにしていると思いますよ。

 ーーこのプロジェクトだから表現できたことは?

 まだ全て終わっていませんからね、答えはこれからです。 これは、アニメの将来を見据えた挑戦の一つです。私たちが探っていることの本当の答えは10年後、20年後に出ると信じています。

※高津幸央監督の「高」は「はしごだか」。

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