解説:横浜流星、「トッキュウジャー」終了から10年 戦隊後の不遇の日々を乗り越えて…“躍動” さらに高みへ

横浜流星さん
1 / 1
横浜流星さん

 スーパー戦隊シリーズ第38作「烈車戦隊トッキュウジャー」のテレビシリーズ終了からきのう(2月15日)でちょうど10年が経過した。同作で、ヒカリ/トッキュウ4号を演じたのが、放送中の2025年の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で主演を務める俳優の横浜流星さんだ。戦隊での経験により「役者としてやっていきたい」と思えた横浜さんが“大河主演”に抜てきされるまでの10年の道のりをたどるとともに、俳優としての魅力に迫ってみたいと思う。

あなたにオススメ

 ◇戦隊後の不遇の日々が「財産」に そして人気は一気に爆発する

 横浜さんは1996年9月16日生まれ、神奈川県出身の28歳。元々は空手少年で、2011年には空手の国際大会で優勝した経験を持つ。俳優として転機になったのが「烈車戦隊トッキュウジャー」への出演。横浜さんは志尊淳さんらと共にメインキャストを務め、前述の通り、「役者としてやっていきたい」と思えたという。

 一方、“戦隊後”に待っていたのは、オーディションになかなか受からない不遇の日々だった。

 2020年1月期の連続ドラマ「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。」(読売テレビ・日本テレビ系)出演時に話を聞いた際、横浜さんは「当時、戦隊(烈車戦隊トッキュウジャー)が終わった後も勝手に仕事があるんだろうなって思っていたんです。でも実際は、オーディションも結構、落ちましたし、『この作品をやりたい』って思っても他の人が選ばれて、10代の頃だから『なんでオレじゃないんだ』って受け入れることができなかった。でも振り返ってみると、当時経験した悔しさは僕にとっての財産で、自分がやりたい作品に出られない、じゃあどうしたらいいんだって考えるいい機会にもなりましたし、だからこそ、今こうやって頑張れているっていうのは絶対にあると思います」と語っていた。

 そんな横浜さんの俳優活動が、再び活気づき始めたのは2018年ごろ。同年は主演を務めた「兄友」「虹色デイズ」など映画4本が公開され、今後への飛躍につながる充実した時間を過ごす。

 そして迎えた2019年、横浜さんの人気は一気に爆発する。きっかけとなったのが、深田恭子さんと共演したドラマ「初めて恋をした日に読む話」(TBS系)。横浜さんは髪をピンクに染めた不良高校生の由利匡平に扮(ふん)したが、匡平の愛称“ゆりゆり”は一時期、横浜さんを指す言葉になった。

 同年はほかにも「あなたの番です-反撃編-」(日本テレビ系)、「4分間のマリーゴールド」(TBS系)といった話題の連ドラに出演し、さらに「愛唄 -約束のナクヒト-」「チア男子!!」「いなくなれ、群青」といった主演映画も立て続けに公開された。

 これらの活躍を受け、「日経トレンディ」が選ぶ「2019年 今年の顔」、「GQ メン・オブ・ザ・イヤー2019」などに選出され、「東京ドラマアウォード2019」助演男優賞や「Yahoo!検索大賞2019」も受賞と、大きく躍進を遂げたことは間違いない。

 ◇「べらぼう」で躍動、「正体」も高評価 真摯さ、ストイックさも魅力

 以降、映像界に欠かせない存在となっていた横浜さん。順調にキャリアを重ねて、今年1月からは、大河ドラマ「べらぼう」の主人公・蔦屋重三郎(略して“蔦重”)として、躍動している印象だ。

 ドラマはもちろん、スクリーンでもファンを楽しませてくれていて、映画「新聞記者」(2019年)の藤井道人監督とのタッグも目立ち、最新長編「正体」(2024年)でも横浜さんは主演。「第49回報知映画賞」の主演男優賞、「第79回毎日映画コンクール」の主演俳優賞、「第48回日本アカデミー賞」の優秀主演男優賞を受賞と、高い評価を得ている。

 そんな横浜さんだが、役作りの一環で、ボクシングのプロライセンス(C級)も取得するほどの真摯な姿勢も、俳優として大きな魅力。先日、「べらぼう」の演出の一人、深川貴志さんも「取り組み方がすごいストイック」と印象を明かし、「一緒に台本作りをしていないはずなのに、一緒に作ったような感覚になるときがあるんです。(中略)これほどしっかり考えてくる方がいるんだなと。自分が出ていないシーンもよくご覧になっていますし、考えすぎると良くないこともあるのですが、考えすぎても表現できているのが、すごい」「勉強不足は一瞬で見抜かれるので、“勝負している”感じがしています」と話していた。

 2月13日に行われた「第79回毎日映画コンクール」の贈呈式に登壇した際、横浜さんは、「これからも妥協せず、志を高く、映画人として映画業界を盛り上げられるよう、精進してまいります」と意気込んでいたが、ここからさらに高みを目指す姿がまだまだ見られそうだ。

映画 最新記事