薬屋のひとりごと
第13話 外廷勤務
12月27日(金)放送分
アニメやゲームが人気の「デジモン」シリーズのテレビアニメ第2作「デジモンアドベンチャー02」の新作劇場版アニメ「デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING」(田口智久監督)が10月27日に公開される。「デジモンアドベンチャー02」から10年後の2012年の物語で、20歳になった主人公・本宮大輔らが登場し、“選ばれし子どもたち”の誕生の裏に秘められた悲しくも優しい真実が描かれる。同作は、声優の緒方恵美さんが物語の鍵を握る“世界で初めてデジモンとパートナー関係を結んだ”大和田ルイ、釘宮理恵さんがルイのパートナーデジモン・ウッコモンを演じることも話題になっている。「デジモン」シリーズ初参戦で、“はじまりの二人”を演じることになった緒方さん、釘宮さんに収録の裏側、互いの魅力について聞いた。
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釘宮さん シンプルなのですが「やった!」と。劇場版のゲストということで「うれしいな」と思いました。
緒方さん いや、みんなそりゃそうだよね。誰もがそうだと思いますよ。私は、オーディションを受けて通ったのですが、釘宮さんと同じで「やった」と(笑い)。役柄が面白そうだったということもありますし、田口さんはすごく好きな監督なので、田口さんの作品にメインで出演させてもらえるんだというのが、すごくうれしかったです。あと東映さんの作品は、特撮は何度も出ているんですけど、アニメーションで出るのがとても久しぶりだったので、それも含めて「よかった、うれしい!」と思いました。
釘宮さん 見た目がとにかく丸くて柔らかそうで、プニプニしていて可愛いなと思いました。最初はとにかく可愛く演じればいいのかなと思っていたのですが、台本を読むと「……あれ?」という台本で。
緒方さん 釘宮さんが演じる役がそれだけじゃないに決まっているでしょ?(笑い)。いや、可愛いだけの役ももちろんやられているとは思いますけど、釘宮さんにダイレクトアプローチだったら、別要素もあるでしょう。
釘宮さん (台本を読んで)途端にどうしたらいいのか分からなくなってしまって、これは感覚で勝負の役だなと。感情面のやり取りを大切にしたほうがいいキャラクターなのかなと思いました。
緒方さん ネグレクトを受けていた4歳児と、それを背負って大人になった20歳という。ネグレクトを受けていた子供がすごくクールな大人になっているという振り幅がある。振り幅がある役は楽しいです。
釘宮さん やりがいのある面白いキャラクターですよね。
緒方さん そうそう。オーディションでは、4歳と20歳のルイのオーディションテープを一緒に録(と)ったのですが、そういうことはめったにない。これは多分受ける役者もそんなに多くないに違いないと思ったので「しめしめ」と(笑い)。とは言っても、受かるかどうか分からないですけど、受かりたいなと思ってオーディションを受けました。
釘宮さん とにかくすごく重たいということは分かったのですが、「デジモン」の歴史の中でどういった意味合いを持った作品になるのかまでは、最初は分かりませんでした。収録が終わり、取材やイベント出演の機会をいただく中で、この作品がいかにファンの方に与える衝撃度が大きいのか、強いメッセージがあるのかを実感し、今は大変な作品だと思っています。
緒方さん とりあえず「デジモン」の世界の中でどうかということは置いておいて、すごくたくさんの人に刺さる作品だろうなと思いました。シンプルで分かりやすいお話で、「デジモン」に触れてこなかった人でも分かる王道的な部分がありながら、心に響くところをごまかさずに描いている作品だったので、やりようですごく面白い作品になるのだろうなと。頑張らせていただこうと思いました。
釘宮さん 緒方さんがおっしゃるように、ストーリーがものすごくシンプルで、クライマックスのシーンでは自分がどのように演じればいいのか想像がつきませんでした。私はオーディションを受けていないこともあり、キャラクターを作りきれていなかったので、1日の収録という短時間で「この気持ちの境地にたどり着けるのかな」という心配があったんです。
緒方さん 確かにそうだよね。
釘宮さん そうなんです。朝からキャラクターを作り、夕方ごろまでに収録を終えるというスケジュールでした。それでもルイくんと実際に掛け合ってみると、涙ぐんでしまって。短い時間でも「何年も一緒に過ごしてきた」と気持ちが入って、のめり込むことができました。
緒方さん お昼過ぎには、もはや永遠のマブダチみたいな感じに。
釘宮さん そうなんです。これが一緒に掛け合いをするということなんだなと。ありがたみというか、これが緒方さんと一緒に演じられた喜びでもあるのかなと思います。
釘宮さん そうですね。「感覚で勝負だな」と思ってからは、その場の空気感で大いにやってみようと思っていたんです。自分でもどんなふうに演じるのか想像もつかなかったのが、ルイくんにものすごく乗せられて、自然に愛情が湧いてきた中で演じられたような気がします。
緒方さん いろいろ勘違いをされることも多いんですけど、台本読んだからといって全てが分かるわけでは全くなくて。同じ言葉でも、相手がどういうふうにやるかによって心の動き方が全然違う。だから、収録には、あまり決めうちせずに臨んだんですが、釘宮さんのおかげでとても楽しかったです。ウッコモンよりはルイのほうが、台本に指針が書かれていたので、基本的にはそれを抱えて臨むのですが、絵もまだできていない状態ですし、監督の指示で方向性が変わることもありますし。本当に現場に行って、そこで生まれたもののままにやるという感じですね。
緒方さん それは全部ですよね。見ていただいた方が良いと思うシーンが印象的という。ただ、あえて挙げるとするなら、ウッコモンがあまりにもゆっくりと「ハッピーバースデートゥーユー」を歌うシーン。
緒方さん 30年ちょっとこの業界にいますけど、あんなにゆっくり「ハッピーバースデー」を歌うシーンに一度も巡り合ったことはないです(笑い)。
釘宮さん そうですよね。
緒方さん そんなゆっくり歌わせるの?みたいな。収録では、既にゆっくり歌っているのに「もっとゆっくり」というディレクションが入って、呼吸をどこでするかも悩まれていたくらいにゆっくり歌っていて、すごいなと思ったんですけど、最終的に映像を見たら「あ、これか」とびっくりしましたね。
釘宮さん とてもゆっくり歌いました。できる限り、体がもつ限りゆっくりと歌うというディレクションでしたので。
緒方さん すごいよね。ずっと頑張って釘宮さんが歌っている横で、私は拳を小さく握って「頑張れ」と思いながら座っていました(笑い)。
釘宮さん あのシーンが一番苦労しましたね。それ以外のところでは、感覚的に取り組もうと思っていました。最初にルイとウッコモンが出会ったのが家のベランダのシーンだったのですが、そこで話し始めてすぐにキャラクターの方向性が自分の中ではっきり見えたので、それ以降のシーンは特に大変なことはなく進んでいきました。ウッコモンはルイへの愛情以外の感情が一切ない。純度100%の愛情を意識して演じました。
緒方さん 純度の高いピュアに経験値を加算できる、業界の中でも希有(けう)な声優さんの一人だと思います。声優は年齢を重ねてもいろいろな表現ができると思われることも多いのですが、やはり年を取ったら年を取ったなりにいろいろ変わることがたくさんあります。特に若い頃に持っていた、すごく純度が高いピュアさ、清廉な感じは、普段の生活で経験を重ねていくと、少しずつ失われていきがち。それは人として当たり前なんですけど。声優をやっていると、我々のようにいい年になっても4歳児を演じるシーンがあるわけですが、そこで何が生まれるかというと、ちょっと“擦れてしまった”要素が入ってきたりする。側(がわ)だけ4歳児ぽく聞こえる声は頑張って出せるんですけど、その中に本当に魂がきれいとか、ピュアだとか、澄んだ感じとか、そういったものを残しながら、自分の経験値を加算する人はすごく少ない。
緒方さん ウッコモンがただのピュアな役であれば、例えば若い新人の役者がやってもできなくはないでしょうけど、純度が高いピュアさに加えて、伝えるべきところをきちんと伝えるとか、いろいろなものをちゃんと俯瞰(ふかん)で見て、的確なところにピュアなものを置いていくという作業ができるのは、やはり釘宮さんしかいなかったのだろうなと思います。
釘宮さん すごくお褒めいただいて恐悦至極で、本当にどうしていいか分からないくらいです。
釘宮さん 業界全体もそうですし、作品に対してもそうですし、向けるまなざしの温かさというか、愛情を持っていらっしゃる。自分が関わったからには「すてきな作品に仕上げる」というような信念を持って真摯(しんし)に向かわれているところを、今回改めて現場で拝見して、自分もしっかりせねばと思いました。
緒方さん 自分が失敗したことで、全体を変なものにしたくないというだけの話です。やはりお客さんにベストの状態で、ベストなものをお渡しできるようにしないと、自分が悔しいなと思うから。
「デジモン02」の選ばれし子どもたちとルイ、ウッコモンとの出会いにより描かれる“はじまりの物語”。緒方さん演じるルイ、釘宮さん演じるウッコモンの物語に心動かされるはずだ。
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