松田健一郎:「SPY×FAMILY」 ボンドの「ボフ」は相手によって違う? 犬だけど人情味あふれる魅力

「SPY×FAMILY」の一場面(C)遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会
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「SPY×FAMILY」の一場面(C)遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

 集英社のマンガアプリ「少年ジャンプ+(プラス)」で連載中の遠藤達哉さんのマンガが原作のテレビアニメ「SPY×FAMILY」。ファン待望のシーズン2が10月にスタートし、ハイクオリティーな映像、声優陣の熱演が話題になっている。シーズン1の中盤でフォージャー家に仲間入りした犬のボンド・フォージャーを演じているのが、声優の松田健一郎さんだ。松田さんはシーズン1の第1話からナレーションを担当しており、ボンドも演じていることが発表された際は話題になった。ボンドの鳴き声「ボフ」を表現する上でのこだわり、キャラクターの魅力を聞いた。

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 ◇ボンドの「ボフ」はおじさんぽく 「ボバーフ!」に苦戦も

 「SPY×FAMILY」は、2019年3月に「少年ジャンプ+」で連載をスタート。すご腕スパイが、任務のために仮初めの家族を作り、新生活を始める……というストーリー。スパイの父、超能力者の娘、殺し屋の母が互いに正体を隠してフォージャー家として生活することになる。コミックスのシリーズ累計発行部数は3100万部以上。アニメは、江口拓也さんがスパイの父・ロイド、種崎敦美さんが超能力者の娘・アーニャ、早見沙織さんが殺し屋の母・ヨルを演じる。

 松田さんは「SPY×FAMILY」でナレーションを担当することが決まり、その後にボンドも演じることになったという。

 「まずナレーションが先で、アニメのPVを録(と)った時にスタッフさんに『松田さん、犬が出てくるじゃないですか? あの子も松田さんにお願いしたい』と言われて、ボンドを演じることになりました」

 松田さんがボンドを演じることが発表された際、「実はナレーションはボンド目線なのでは?」と考察するファンもいたが……?

 「そういう意図はないんじゃないですかね。僕もその考察は面白いなと思ったんですけど、多分関係ない(笑い)。ナレーションとボンドは切り離された存在だと思っております。ボンドを演じることが決まった時は、オイシイ役をいただけたなと、ありがたかったです。ナレーションのみだと、登場が限られてしまうので、ボンド役はありがたいなと」

 ボンドは、元々は軍事研究の実験体だったというつらい過去があり、未来を予知する能力を持つ。シーズン1では、テロリストに爆弾犬として利用されるところをアーニャと出会い、家族として迎えられることになった。松田さんが表現するボンドの「ボフ」という鳴き声は温かみがある。どのように役作りをしたのだろうか。

 「最初はリアル寄りの犬の鳴き声を作ろうと、ボンドのモデルになっているグレートピレニーズの動画を見て、鳴き声を聞いて役作りをしていたんですけど、実際の収録では原作のように『ボフ』と言ってほしいということでした。しかも、こもり気味のおじさんっぽい『ボフ』にしてほしいと。感情によっていろいろな『ボフ』がありますし、『ボーフ』だったり『ボボーフ』だったりいろいろあるので、『このボーフはこういう気持ちなんだろうな』『こういう時はこんなふうにボフって言うだろうな』と思いながら、ある程度感情を乗せるように意識しています」

 中でも難しかったのは、シーズン1でボンドがアーニャをテロリストから守るべく激しくほえたシーンだった。

 「アーニャを守るために前に出て『ボバーフ!』とほえるところで、『ボバーフ!』がなかなかうまく出なくて、どうしても人間ぽくなっちゃう。あんまり犬は破裂音がうまくないなと思いました(笑い)。いかにボンドっぽく『ボバーフ!』をやるか?と何回かやり直しました。今はもう大丈夫だと思うんですけど、『ボフ』だけじゃなく『バ』とか新しい音が加わると苦労しますね」

 ボンドの登場シーンの収録では「クスクス笑いが起きているんですよ」と明かす。

 「ボンドはコミカルなところがあるじゃないですか。そういうシーンを演じている時は、テストの段階ですけど、皆さんの笑い声が聞こえてくる。『こっちは真面目にやっているんだよ』『ちゃんと台本通りにやっているだけですけど、なんで笑うんですか?』と思いながら(笑い)。でも、笑っていただけてありがたいな、よし!と思ってやっています。本番では皆さん、笑いを我慢しているんでしょうけど」

 ◇多様な「ボフ」 アーニャは親しみ、ロイドは信頼 ヨルは?

 松田さんはボンドの魅力を「犬ですけど人情味があふれている」と語る。

 「ボンドはほわほわした雰囲気ですよね。毛並みがふわふわしているじゃないですか。それが性格にも表れているというか。でも、正義感が強くて、やる時はやる。思いやりもある。つらい過去があるので、さみしがり屋の面もあるんですけど、今はフォージャー家の中に入って、それが満たされているところもあるので、ものすごく家族思いなんだろうなと思います」

 10月14日放送の第27話では、そんなボンドが活躍するエピソードが描かれる。

 「ボンドが自分の死を予知して、それを何とか回避しようと頑張るお話です。その流れでロイドのスパイの仕事も手伝ってしまうような場面もあります。収録の時はいろいろな『ボフ』ができたので楽しかったです」

 ボンドはアーニャと一緒に過ごす時もあれば、第27話のようにロイドと共に行動することもある。相手によって「ボフ」は違うのだろうか。

 「アーニャと一緒の時は、きょうだいのように安心していられるというか。ボンドの能力を理解しているのはアーニャだけですし、対等というか。だから、親しみを込めた『ボフ』ですかね。ロイドに関しては、犬はどうしても群れで物事を考えるところがあるので、家族のリーダーとして見ているのではないかと。ロイドもなんだかんだでボンドのことを理解している部分もありますし、一緒に潜入するような場面でも『ロイドなら何とかできる』と分かっている気がするので、信頼している『ボフ』ですね」

 料理が苦手で、ボンドに“ヤバいエサ”を与えることもあるヨルに対してはどうだろう?

 「普段はヨルに対しても安心感を持って『ボフ』と言っているんでしょうけど、料理となるとボンドの命に関わってくる(笑い)。これまでも何度かヤバいエサを食べちゃっているので。家族と思いつつも、脅威として捉えている可能性が……(笑い)」

 ◇ナレーションはクラシカル スパイ映画のように

 松田さんは、愛らしいボンドとは打って変わり、ナレーションでは渋い声でストーリーに重厚感を与えている。「ナレーションは、完全にクラシカルというか、昔のスパイ映画のナレーションのような雰囲気を意識しています。淡々としつつも、期待を煽るというか、シーンに合わせた強弱を入れるようにしています」とこだわりを語る。

 「『SPY×FAMILY』はスパイものとしてのシリアスな部分とコメディー要素のバランスが取れた面白い作品だなと思います。ロイドの表の顔が精神科医だったり、ヨルの殺し屋組織の名前が『ガーデン』だったり、ディティールもしっかりしていて驚かされます。ギャグのセンスもいいですよね。アーニャのような可愛い子に、あそこまで変な顔をさせる作品はなかなかないですし、そういった思い切りの良さも魅力の一つかなと」

 シリアスとコメディー。ナレーションとボンド役で「SPY×FAMILY」の魅力を表現する松田さん。シーズン2は「よりボンドのいろいろな顔が見られると思います」と見どころを語る。

 「ボンドがさまざまな活躍を見せてくれるので、演じる側としても楽しくやらせていただいています。ボンド好きの人たちにも楽しんでいただきたいですね」

 ※種崎敦美さんの「崎」は「たつさき」

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