海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
神木隆之介さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「らんまん」(総合、月~土曜午前8時ほか)。4月にスタートしたドラマも残り2週となり、物語は最終盤を迎えようとしている。連日、SNSを沸かす本作の人気を、神木さんと共に支えてきたのがヒロイン役の浜辺美波さんだ。勝気で度胸もある寿恵子を通じて、妻にも母にもなれることを証明した浜辺さんは、なぜここまで役を自分のものにすることができたのか。過去の発言を交えてひもといてみたい。
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先月末に誕生日を迎え、23歳となったばかりの浜辺さん。2011年の第7回「東宝シンデレラ」オーディションでニュージェネレーション賞を受賞し、芸能界入りを果たすと、俳優の道を歩み始め、北村匠海さんとダブル主演した2017年公開の映画「君の膵臓(すいぞう)をたべたい」でブレーク。実写「賭ケグルイ」シリーズでは、振り切った演技で画面に君臨し、同年代(2000年度生まれ)で頭一つ抜けた存在として映像ファンに認知されると、以降もヒロインや主演に起用され、若くして人気を不動のものにしてきた。
“演じるということ”へと浜辺さんを突き動かしているもの、それは「ずっと抱いてきた」劣等感だという。2019年のインタビューでは、「私には他に特技もないですし、人に誇れるものもなかった。時間的にも一番、費やしてきたのがこのお仕事で、他のことに比べたら得意ともいえる。だからその分、負けたくないなって気持ちは大きいですし、あとは(人に誇れるものがある人が)うらやましいとか、そういった思いがすごく原動力になっていると思いますね」と語っていた。
着々とキャリアを積み重ねる中で、聞こえるようになってきたのが、「朝ドラヒロインとしての浜辺さんを見たい」との声。それは今回の「らんまん」でついに現実のものとなった。
与えられたポジションは、時代が幕末から明治、そして激動の大正・昭和へと移りゆく中、愛する植物のために一途(いちず)に情熱的に突き進む男性主人公(万太郎、神木さん)の妻。立場こそ主演ではないものの、そのどっしりとした安定感や存在感は過去の朝ドラヒロインと比べて勝るとも劣らない。初挑戦の母親役にもなりきってみせ、「寿恵子あっての万太郎」と視聴者に強く印象づけている。
それにしても、本作における寿恵子の描かれ方は痛快だ。滝沢馬琴「里見八犬伝」オタクの“腐女子”設定の愛らしさはもとより、結婚後、植物研究に没頭する万太郎のため、あの手この手で苦しい家計をやりくりし、ついには“女将(おかみ)”として成功してしまうバイタリティー。途中、長女を亡くすという悲しい出来事もあったが、物事を恐れたり気おくれしたりしない気力、度胸は、劇中キャラの中でも群を抜いている。
そんな寿恵子の生き生きとした姿から感じ取れるのは、浜辺さん自身が、寿恵子と同じく「胆力」の持ち主であるということ。
昨年、浜辺さんに話を聞いた際、恐れず果敢に役を演じ切ろうとする理由について、「今できるところまで全力を尽くさないと『いつか後悔してしまうのが怖いから』というはあるかもしれないです」と告白。その上で「いつかの自分のため、もしかしたら他のことをやりたいと思うときが来るかもしれない、子供を産んで、お母さんになって、子供のことを最優先にしなくてはいけないときが来るかもしれない、そういうときに思い残すことがあるのは嫌だなと思っていて。逆に思い残さないところまで今やっておくことで、やっぱりこれ(俳優業)が一番だと再確認できるかもしれない。だから、常に“天井”をたたけるくらいまで、自分の中で頑張りたいと思っています」と考えを明かしていた。
10代前半から作品を重ね、朝ドラヒロインも経験したが、それでもまだ23歳。「まずは、この仕事を長く続けていきたい、というのがある」とも口にしていた浜辺さんの活躍は、この先も続きそうだ。