小芝風花:仕掛けるときの「間」が絶妙 「波よ聞いてくれ」で見せる“深化”

連続ドラマ「波よ聞いてくれ」で主演を務める小芝風花さん=テレビ朝日提供
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連続ドラマ「波よ聞いてくれ」で主演を務める小芝風花さん=テレビ朝日提供

 4月21日にスタートした連続ドラマ「波よ聞いてくれ」(テレビ朝日系、金曜午後11時15分)で主演を務める小芝風花さん。金髪がトレードマークの“超絶やさぐれ女”に扮(ふん)し、キレのあるマシンガントークを繰り広げる姿が早くも話題となっている。SNSでは「新境地きたー!」「ガラ悪い小芝ちゃん最高」といった声も上がっているが、なぜこれほどまでに小芝さんの演技は耳目を集めるのか、その理由を探ってみた。

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 ◇よどみないせりふ回しで「噛まない」主人公に説得力

 2012年の女優デビュー以降、持ち前の愛らしさで多くの視聴者を魅了してきた小芝さん。2019年のNHKの主演ドラマ「トクサツガガガ」での隠れ特撮オタク役がハマって以来、「コメディエンヌ」のイメージが先行しているが、シリアス演技にも定評はあり、役の振り幅でいえば、杉咲花さんや芳根京子さん、黒島結菜さんといった他の同年代にも負けていない。

 「波よ聞いてくれ」で演じているのは、北海道・釧路出身で、スープカレー店「VOYAGER(ボイジャー)」のアルバイト店員の鼓田ミナレ。彼氏にフラれたうえにお金をだまし取られてバーでやけ酒を飲んでいたところ、偶然居合わせた円山ラジオ(MRS)のチーフディレクターの麻藤兼嗣(北村一輝さん)に失恋トークを炸裂させる。そこで麻藤は、ミナレにラジオパーソナリティーとしての素質を感じ、深夜の冠番組「波よ聞いてくれ」に抜てきする……。

 滑舌の良さとマシンガントーク、頭の回転の速さと独特のユーモアのセンスを評価されるミナレ。ドラマの初回では、麻藤を相手に愚痴り続けた26分間、「一度も噛(か)まなかった」という逸話が麻藤から明かされるシーンがあったが、小芝さん自身のよどみないせりふ回しを聞いていると、思わずうなずいてしてしまうほど。圧倒的な説得力に満ちていた。

 これをハマり役と言わず、何と言おうか。当初、小芝さんのパブリックイメージとはかけ離れた役どころのため、原作ファンなどから「合わないのでは?」と心配する声が少なからず聞こえていたが、今のところ「杞憂だった」と断言できるだろう。

 ◇昨年のインタビューで語っていた「宿題」の成果がここに

 そんな小芝さんの今作の演技の中で際立っているように思えるのが、相手に仕掛けるときの「間(合い)」だ。タイミングが絶妙のため、決して物語から浮かず、マシンガントークも独りよがりにならなければ、視聴者も置き去りにしない。むしろドラマをテンポよく展開させていく、大きな推進力になっている。

 小芝さんは昨年、NHKの人気コント番組「LIFE!」チームが手がけたコメディードラマ「事件は、その周りで起きている」に出演。そのときのインタビューで「監督にも『リズム感はすごくいい』と褒めていただけました」と前置きしつつ、「この作品自体、テンポが速くて、会話でポンポンポンって進んでいくのですが、そのリズムの良さを、間を取ってみたりして、時には崩すことができるようになると、もっといいかもねって言葉をいただきました」と語っていた。

 さらに「今までもコメディー作品に出させていただいて、基本的には振り回される役で、周りに個性的な人がいて、その人たちに突っ込んだり、リアクションしたりすることが多かったので、自分から仕掛けるということがあまりなかったんですね。今回、そういう言葉を監督にいただけて、めちゃくちゃ大きな課題だなって思いました」と明かすなど、「新たな宿題」を持ち帰った様子の小芝さん。その成果が「波よ聞いてくれ」に出ているような気がしてならない。

 元来持っていたリズム感の良さに加えて、絶妙の「間」で魅せるミナレ役。演技に対する理解をさらに深めた小芝さんの姿から目が離せない。

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