福本莉子:“東宝シンデレラ”の本音「焦りはあります」 “原点”となる3年ぶり舞台で「初心に」

江戸川乱歩原案の舞台「お勢、断行」に出演する福本莉子さん
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江戸川乱歩原案の舞台「お勢、断行」に出演する福本莉子さん

 江戸川乱歩原案の舞台「お勢、断行」に出演する女優の福本莉子さん。近年、映像作品への起用が続いていた福本さんにとって、2019年の音楽劇「あらしのよるに」以来、3年ぶりの舞台作品となる。思い返せば、初主演作も2018年のミュージカル「魔女の宅急便」と、舞台は福本さんにとっていわば“原点”で、「初心に返れる場所」という位置づけだ。また、今回は初の「ストレートプレー(科白=せりふ=劇)」に挑戦することとなった福本さんに、今の思いを聞いた。

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 ◇せりふでどれだけ感情を表現できるか

 「お勢、断行」は、映画「十二人の死にたい子どもたち」(2019年)で脚本を手掛けた劇作家の倉持裕さんが、江戸川乱歩の美意識やユーモラスでミステリアスな登場人物たちをモチーフに描く新作現代劇。コロナ禍による2020年の全公演中止を経て、2年越しの上演が決定した。時代は大正末期、とある資産家に屈辱を受けた代議士が、後妻と結託し、財産をすべて奪い去ろうと計画を練る。女中、精神病院の医院長、貧しい電灯工事夫らを巻き込み、首尾よく進むかに見えたが、第一の殺人が起き、計画は思わぬ惨劇へ……というストーリーが展開する。

 倉科カナさんが、主人公の“希代の悪女”お勢を演じ、江口のりこさん、池谷のぶえさん、堀井新太さん、粕谷吉洋さん、千葉雅子さん、大空ゆうひさん、正名僕蔵さん、梶原善さんに混じって、福本さんは資産家の令嬢・晶役で登場する。

 倉持さんとは初顔合わせ。「周りのキャストの方が本当に素晴らしくて、稽古(けいこ)では、自分が出ていないシーンを見学させてもらっています。2年前に一度出来上がっていた舞台なのですが、そこからさらに進化させていて、常に、もっと何かできるんじないかということを探していらっしゃる姿が印象的です」と明かす。

 演じる晶は、物語の中心となる謀略の被害者・資産家の娘。おっとりとしたお嬢様らしい外見ながら、その奥に秘めた強い意志を感じさせる役どころだ。

 福本さんも、一見「登場人物の中では一番純粋無垢(むく)」としながらも、作品自体が「本音と建前が入り乱れている」ため、晶も「表には出さないけど、内心ではどう思っているのか、そういった部分が重要」で、「ただ純粋なだけじゃないっていうのも魅力なのかな」と役への印象を抱いている。

 人間の裏表の部分も含めて、課題はせりふでどれだけ感情を表現できるか。

 「ストレートプレーが初めてになるのですが、今までは歌のパートとお芝居のパートがあるミュージカルをやってきて、歌が出てくるときって、すごく悲しかったり、うれしかったり、そこで感情を表現できるし、テンポも作れる。でも、ストレートプレーの場合は、せりふで魅了するというか、観客を引きつけなくてはならない。使う言葉も今回は現代的じゃなくて、ちょっと古典的だったりもして、分かりやすく、すんなりと理解できるように伝えるってことがすごく難しいというか、その技術が必要なんだなって感じました」と語る。

 一方で「最近は、映像がすごく多かったので、改めて舞台って楽しいなって思いました」と充実感をにじませる福本さん。「稽古中でも本番でも、ずっと挑戦できて、成長し続けることができるのが、舞台。私自身、このお仕事をするまで、ちゃんと舞台を見たことはなかったですし、今は配信プラットフォームがいろいろあって、手軽にいつでもどこでも映画やドラマが見られて、それもすてきなことではあるのですが、劇場に足を運ぶという一手間をかけて、その場で起きる、生まれるものを共有できるのも、舞台の大きな魅力。『江戸川乱歩原案』と聞いて、ちょっと難しそうかなって思うのですが、私と同世代の人たちも気負わず、軽い気持ちで見てもらえたらうれしいです」とアピールした。

 ◇「東宝シンデレラ」からもう6年 

 2016年に開催された第8回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリと集英社賞(セブンティーン賞)に輝き芸能界入りし、今や映画やドラマで主演やヒロイン役を務めるまで成長した福本さんだが、「このお仕事を始めて、一番、最初の大きな仕事が『魔女の宅急便』だったので、舞台は『自分の原点』というイメージがありますし、初心に返れる場所でもあるので。これからもずっと舞台をやりたいなって思っています。今回、ストレートプレーで新たな挑戦ができるのもうれしいですし、私が『お勢、断行』のような作品に出るのって意外な感じもするのですが、いわゆる『東宝シンデレラ』みたいな、きれいで清楚(せいそ)なイメージを超える作品にも、もっと出てみたいです」と力を込める。

 上白石萌音さん、萌歌さん姉妹、浜辺美波さんら“一つ上”の先輩に続き、女優としての活動は、順風満帆そのものにも思えるが、一方で「『東宝シンデレラ』からもう6年たってしまったんだって、正直、焦りもあります」と本音もちらり。先日、9回目の「東宝シンデレラ」オーディション開催が発表されたばかりで、「後輩ができるってことは、その後輩たちに見られるってことですし……」と不安交じりに言葉を濁す。

 それでも、「作品で先輩と共演することも多くなって、『頑張ってるね、私たちもそういった時期があったよ』と聞いて、みんなが通る道なんだってことを改めて思いましたし、『東宝シンデレラ』の伝統は受け継ぎつつ、自分なりの道を歩んでいけたらなって思っています」と前を向いた。

 舞台は5月11~24日に世田谷パブリックシアター(東京都世田谷区)で上演され、兵庫、愛知、長野、福岡、島根での地方公演も予定している。

 ※クレジット(敬称略)

 ヘアメーク:冨永朋子(アルール)/スタイリング:武久真理江

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