元彼の遺言状:「原作超えてほしい気持ちも」 原作者・新川帆立が送る“ドラマ班”へのエール

「元彼の遺言状」原作者の新川帆立さん
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「元彼の遺言状」原作者の新川帆立さん

 女優の綾瀬はるかさん主演の連続ドラマ「元彼の遺言状」(フジテレビ系、月曜午後9時)が4月11日から放送される。原作小説(宝島社)を手がけた新川帆立(しんかわ・ほたて)さんは、ドラマ化発表時から、主人公の弁護士・剣持麗子(けんもち・れいこ)と綾瀬さんのシンクロ度の高さに驚いたと明かす。そんな新川さんに麗子を演じる綾瀬さんの印象、ドラマ化への思いなどを聞いた。

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 ◇綾瀬はるかの再現度は「本の世界に入り込んでいるよう」

 「元彼の遺言状」は、剣持麗子が元恋人・森川栄治が残した「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇妙な遺言を受け、栄治が暮らした別荘の管理人・篠田敬太郎と協力し、巨額の遺産と栄治の死の真相に迫っていくというストーリー。宝島社が主催する第19回「このミステリーがすごい!」大賞で大賞を受賞している。

 自身の小説が映像化されることを聞いたとき、新川さんは「ありがたいお話をいただいたし、出演者の豪華さに驚きました」と感謝の思いと驚きが同時に生まれ、「麗子を綾瀬さんが演じてくださるとおうかがいし、すごくうれしかった覚えがあります」と振り返る。

 綾瀬さん扮(ふん)する麗子のビジュアルが発表された際、「イメージにぴったり」「再現度に驚いた」とコメントを出していた新川さん。「原作の主人公は強いし怖い面もありつつ、どこか憎めないというか抜けているところもある、ちょっと愛嬌のあるキャラクター」と前置きし、「そういう強いところと柔らかいところを綾瀬さんは持ち合わせていらっしゃり、すごくぴったりだと思います」と納得の表情を浮かべる。

 続けて、「書いているときは誰というイメージはなかったのですけど、言われてみれば綾瀬さんは確かにイメージ通りで、(麗子を)うまく表現してくださりそう」とうなずき、「実際ビジュアルの再現度が高く、本の世界に入り込んでいるような感じがして、さすがだなと思いました」と感心する。

 ◇麗子の誕生エピソード明かす 大泉洋のキャスティングは「予測していなかった」

 ストーリーもさることながら、麗子の強烈なキャラクターも目を引く本作。新川さんは、「『風と共に去りぬ』の主人公、スカーレット・オハラが好きで、そういうわがままで強い女の子を書きたいと思っていた。そういう癖のある女の子に活躍してほしくて作っています」とキャラクターが誕生した経緯を明かす。

 麗子の魅力については、「世の中思っていても言えないことはたくさんあるが、麗子は思っていること全部言ってくれるから書いていて楽しい。普段言えないこと全部言っちゃおうかなというノリで書いています(笑い)」と解説し、「読者の方もそういうところを痛快に感じてくださっているのかな」と語る。

 そんな麗子の“バディー”篠田敬太郎役を務めるのは大泉洋さん。麗子の元彼・森川栄治(生田斗真さん)が遺した「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇妙な遺言を受け、麗子の依頼人となって共に巨額の遺産と栄治の死の真相に迫っていく役どころだ。

 新川さんは、「大泉洋さんは予測していなかったし、綾瀬さんというだけでも豪華なのに、そこにまた主役級の大泉さんもとなると本当に豪華。ちょっとフジテレビ側の本気が伝わってきますよね」と“強力なキャスト陣”に目を見張る。

 ◇想像していなかった映像化 「自由に作ってもらいたい」

 原作小説が受賞した「このミステリーがすごい!」大賞。同賞の受賞作品はこれまでも数多く映像化されてきたが、新川さん自身は「そこまで考えてはいませんでした」と実写化への意識はなかったと明かす。

 その理由を、「小説を書くのが好きで、書いたものが世の中に出てみんなに読んでもらえるのがうれしい。そこで止まっていました」と切り出し、「自分だけでは小説を書いて終わっていたのが、いろんな関係者の方のお力添えでドラマになって、より広い世界観に成長し大きくなっていった。自分一人ではここまで来られなかったのでありがたい」と作品世界の広がりを喜ぶ。

 ドラマ化にあたりリクエストしたことを聞くと、「それが何もなくて。実は脚本も読んでいません」と意外な回答が。原作ものの実写化はファンの間でさまざまな議論が起きるケースも多いが、新川さんも「脚本を読むとどうしても口出ししたくなっちゃう」と原作者としての率直な思いを口にする。

 それでも制作陣に委ねたのは、「クリエーターは自由に作った方がいい」という持論があるから。「私は小説を書きましたけど、映像のクリエーターはまた別の方。それぞれが自由に作った方が良いし、せっかくプロの方たちが作ってくださるのに素人が口出しするのは良くない。自由に作ってもらいたい」と説明。ただ、前提として「小説は女性を応援したい気持ちで書いたという、執筆時の思いはお伝えしました」といい、「それをどうアレンジするかは、映像サイドの自由だと思います」とクリエーター同士、気づかいを見せる。

 ◇作品は「受け取る側が好きなように感じて」

 ドラマにはオリジナルエピソードや、新刊「剣持麗子のワンナイト推理」(宝島社)といった要素も盛り込まれる予定。新川さんは「違いを楽しみにしていますが、原作者は『原作の方が面白かった』と言ってほしい気持ちもあるし、逆に原作を超えてほしい気持ちもあって。そこはある種クリエーター同士の戦い。すごく面白いドラマができて『原作よりも面白い』と言われちゃわないかなという不安はありますね」と複雑な心境を明かす。

 それでも「私もドラマ版の内容を知らなくて楽しみ」と笑顔を浮かべ、「出演者が発表された時点で絶対に面白くなると皆さんも思われただろうし、私も思いました。ぜひ一緒に楽しみましょう」と呼びかける。

 作品の“役割”を「皆さんそれぞれの生活、仕事だったり学業だったり家庭だったり自分が頑張るフィールドがあって、その息抜きで見てくださるし読んでくださる。少しでも明るい気持ちになり明日から頑張ろうと思ってもらえるものになれたら」と新川さん。「それ以上のメッセージはありません。受け取っていただく方が好きなように感じてもらえたら」と思いを語っていた。(取材・文・撮影:遠藤政樹)

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