AnimeJapan 2022:3年ぶりリアル開催の意義 コロナ禍の大型イベントの在り方

「AnimeJapan 2022」の総合プロデューサーを務めるKADOKAWAの佐伯瑞穂さん(左)とタツノコプロの中嶋俊介さん
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「AnimeJapan 2022」の総合プロデューサーを務めるKADOKAWAの佐伯瑞穂さん(左)とタツノコプロの中嶋俊介さん

 世界最大級のアニメイベント「AnimeJapan(アニメジャパン) 2022」が3月26日から東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される。アニメジャパンは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2020年は中止となり、2021年はオンラインのみの開催となった。リアルでの開催は2019年以来、約3年ぶりで、東京都や国が定める感染症対策を実施するなど「安心、安全なイベント」を目指す。2月に開催された同イベントの会見では、総合プロデューサーを務めるタツノコプロの中嶋俊介さん、KADOKAWAの佐伯瑞穂さんが「安心、安全」に「リアルで開催する」ことを強調していた。中嶋さん、佐伯さんに、リアル開催への思い、コロナ禍の大型イベントの在り方を聞いた。

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 ◇昨年は苦渋の決断 リアルの重要性を痛感

 アニメジャパンは2014年から開催されている世界最大級のアニメイベント。今年は3月26、27日がパブリックデー、同28、29日がビジネスデーとなる。昨年は、オンラインのみの開催となり、主催として「リアルイベントの重要性」を改めて考えさせられた。佐伯さんは「オンラインが悪いわけではないのですが」と前置きした上で、リアルイベントへの思いを語る。

 「アニメジャパンはリアルでこそのイベントだと痛感しました。お祭り的なイベントですし、みんなで集うことに意味があります。3年もリアルをやらないというのは、考えていませんでした。満場一致でリアルを前提としたイベントとして進めることになりました」

 2021年もリアル、オンラインの開催を予定していたが、同年2月にオンラインのみの開催となることが発表された。中嶋さんは「苦渋の決断でした」と振り返る。

 「昨年もリアルでという気持ちだったのですが、緊急事態宣言がありましたし、悩みに悩みました。初めてのことで正解が分からないところもありました。もちろん、オンラインでもファンの方のコメントを見ることはできますが、出展者から『反響が分かりにくい』という声もいただき、歯がゆさを感じていました。正直に言いますと、目指していたものよりも厳しい結果になりました。オンラインは、簡単に見ることができるという大きなメリットがありますが、いわゆるコト消費が重要です。アニメジャパンは、お祭りでもあるので、現地で体験を作る重要性を改めて感じました。今回は、一丸となって場を作り上げていこうとしています。今年は、リアルを中止することは考えず、リアルでやるためにどうするのか?を考えました」

 ◇安心、安全を目指して各社のノウハウを結集

 中嶋さんによると、今年のアニメジャパンは「かなり厳しいレギュレーション」で開催するという。

 「スペースを広く取り、出展ブースも例年と比較すると控えめにするので、ソーシャルディスタンスが保たれる空間になっています。人感センサーを導入し、来場者にホールごとの混雑状況が分かるようにしています。もちろん検温、消毒もしっかりしますし、消毒液も準備します。出展社の皆さんにも協力していただき、安心して来場できるような環境を整えます」

 今年も苦しい状況は変わらないかもしれないが、歯がゆさがあったから、前を向いて「安心、安全」を徹底しようとした。アニメジャパンの実行委員会は20社以上のアニメ関連企業が名を連ねる。佐伯さんは「アニメジャパンが特殊なのは、競合他社が集って、垣根をなくして、一丸となって開催するところです。イベントの在り方を見直し、洗練されてきたところもあります。昨年の経験があったからこそできることもあります」と力を込める。

 各社はコロナ禍のこの3年で、それぞれイベントを開催してきたこともあり、ノウハウが蓄積されつつある。アニメジャパンを「安心、安全」なイベントにするために、そのノウハウを結集した。

 今年のアニメジャパンはリアルとオンラインのハイブリッドで開催されることになった。入場券を購入すれば、オンラインでステージイベントを視聴できる。コロナ以前のアニメ関連イベントはリアル開催のみが多かったが、コロナ以降は、オンラインでも視聴可能なイベントが増えてきた。アニメジャパンも時代の流れに合わせて、リアル、オンラインのハイブリッド開催となった。

 ◇次世代につなげていく

 2019年にリアルイベントとして開催されたアニメジャパンは約14万6000人が来場した。中嶋さんは来場者の傾向を「毎回、半分程度は初めて来る方なんです。初めてのアニメイベントという方も多く、20、30代がメインではありますが、10代も多い」と説明する。

 間口が広いから、初参加の人も多い。アニメジャパンを継続して、新規ファンを開拓していくことは業界全体の活性化にもつながる。

 一方で、これまで子供向けに開催してきたファミリーアニメフェスタは中止となった。佐伯さんは「本当は今年も開催したかったのですが……」と語る。

 「アニメジャパンは次世代にアニメをつないでいく場所です。ファミリーアニメフェスタは、子供たちにイベントを体験していただき、大人になってもアニメを好きでいてほしい……という思いがあります。本当は今年も開催したかったのですが、リスクを考えて中止にしました。ただ、辞めるわけではありません。来年は10周年です。まだまだ厳しい状況かもしれませんが、ファミリーアニメフェスタを復活できるようにしたい。今回、リアルで開催することで、来年につなげていく。つないでいくことは、業界全体として意味のあることです」

 ファミリーアニメフェスタの中止は、未来を見据えての決断だった。中嶋さんも「今年は完全復活ではありません。海外のバイヤーの方が来日するのは難しいこともあり、ビジネスデーもオンラインで開催します。ファミリーアニメフェスタ、ビジネスデーをリアルでできた時が完全復活です」と話す。

 “お祭り”を途切れさせてはいけない。各社のノウハウを結集した今年のアニメジャパンは、コロナ禍の大型イベントの在り方を改めて考えるきっかけにもなるはずだ。

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