宇宙戦艦ヤマト2205:小野大輔×安田賢司監督対談 絶大な信頼 役者としての魅力

「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」に出演する小野大輔さん
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「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」に出演する小野大輔さん

 人気アニメ「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの最新作「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」の「後章 -STASHA-」が2月4日に上映される。「2205」は、新たなスタッフが参加し、「マクロスΔ(デルタ)」「創勢のアクエリオンEVOL」などで知られる安田賢司さんが監督を務めたことも話題になっている。主人公・古代進役の小野大輔さんは、安田監督がこれまで手がけた「ソマリと森の神様」「博多豚骨ラーメンズ」でも主演を務めたことがあり、二人は互いに絶大な信頼を寄せ合っているという。小野さん、安田監督が「宇宙戦艦ヤマト」への思いを語り合った。

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 ◇運命の二人! 小野大輔の安心感

 ー-互いの印象は?

 小野さん 「宇宙戦艦ヤマト2205」の前に「ソマリと森の神様」「博多豚骨ラーメンズ」でご一緒させていただき、「宇宙戦艦ヤマト」でも安田監督とご一緒できることに運命的なものを感じました。僕もそうですが、安田監督もヤマト直撃世代ではないんですね。

 安田監督 そうなんです。

 小野さん 僕が「宇宙戦艦ヤマト」に触れた時と同じ感覚なんです。僕は「宇宙戦艦ヤマト」に憧れた人が作った作品を見て育ちました。最初、プレッシャーがあったんです。偉大な作品ですし、荷が重かった。ただ、旅を進める中で、どんどん仲間が増え、今の「宇宙戦艦ヤマト」を作っていいんだ!とみんなに教えてもらいました。安田監督はこれまでお世話になる中で、熱いものを感じていたので、また熱い仲間がこの艦に乗ってくれる!という思いがあって、すごくうれしかったです。

 安田監督 「博多豚骨ラーメンズ」では博多弁を苦労しながらやっていただきましたし、「ソマリと森の神様」は感情のないゴーレムを見事に演じていただきました。古代はいろいろ大変なものを抱えています。「2205」で、古代の立ち位置はこれまでと変わりますが、新しい古代を心配なくお願いできました。これまでの小野さん、古代をイメージしながら絵コンテを描いたところもあります。小野さんに演じていただき、すごく助かりましたし、安心もしていました。

 小野さん 今、そのお話を聞いて、ホッとしました(笑い)。なかなかこういう話はできないですしね。安田監督からは「こうしてください!」という指示があるわけでもないですし、委ねていただいたところがあったんです。これまでの積み重ねがありますし、安田監督が任せてくださるのなら……と、どっしり腰を据えていこうとしていました。安田監督に応えなければ!という思いがありました。

 安田監督 古代は難しいキャラクターです。主役ですが、せりふ量がそんなに多いわけではありません。目の芝居、感情を抑えた芝居、内に込めた芝居があり、大変だったと思います。

 小野さん 表情で見せるシーンが多かったですよね。息を入れなくても絵で分かるんです。感情の動きを声だけで表現しなくてもいい。入れると、トゥーマッチになってしまう。

 安田監督 例えば前章の古代と森雪のシーンは、微妙にかみ合っていないけど、分かり合っているところもあります。雪が古代をチラチラ見ているけど、顔の向け方、目の伏せ具合で感情や関係性を描いたところもありました。

 小野さん 安田監督の「宇宙戦艦ヤマト」の特色はそこだと思っています。せりふ以外の感情の機微が表情で分かるんです。改めて見ていると、グッとくるんですよね。

 安田監督 「ソマリと森の神様」「博多豚骨ラーメンズ」を経て、ライティングでキャラクターの感情が分かるような作り方をするようになったところもあります。「博多豚骨ラーメンズ」は、サスペンスの要素が強く、シーンのメリハリを作るためにライティングに気を遣いました。今回「宇宙戦艦ヤマト」でもライティングによって新しい見せ方ができると思っていました。そういうこともあり、これまでと雰囲気が変わったのかもしれません。

 小野さん これまでの流れもありますしね。

 安田監督 そこは脳天気に構えるところもあるのですが、やっぱりそうもいかなくて(笑い)。改めて勉強しました。

 小野さん 僕も同じ立場で、「2199」の時に「小野大輔の古代進でいい」と言っていただけたのですが、そうもいかないんですよね。

 安田監督 これだけ長く演じているキャラクターは珍しいのでは?

 小野さん そうですね。どの古代も古代なんですよね。「2199」の古代は悩みに悩むけど、持ち前の猪突猛進(ちょとつもうしん)さで突っ走ります。一番熱血だったのは「2199」です。「2202」は葛藤の中でもだえ苦しむ。「2205」はそれを経て、覚悟が決まっています。

 安田監督 今回の古代は「古代君じゃない」と言われたことがありました。僕はあまり意識していなかったところですが、最初から「古代艦長」というイメージで描いていました。積み重ねてきたものがあり、「古代艦長」になったことをブレずに描けました。ヤンチャなところは土門(竜介)が担っていますし。

 小野さん 「2205」は迷いもあるけど、落ち着いていますしね。

 ー-安田監督から見た小野さんの魅力は?

 安田監督 演技には答えがないわけで、答えを探りながら、アフレコをする中で、小野さんの演技を聞いて、こういうことだったのか!となる機会が多かったんです。引き出しも多いですし、安心しています。これからもぜひ!と思っています。

 小野さん ありがとうございます! うれしいです。自分にないものを表現するのも声優の醍醐味(だいごみ)の一つですが、安田監督とご一緒にする時は、自分に重なる役が多く、古代もそうなんです。自分のそのままで演じている部分があり、だから引くところは引けます。上乗せしないといけないかな?と思うところは、絵が何とかしてくれるんです。

 安田監督 演技で予想外のものが出た時に絵で寄せていくことがありました。感情が爆発するシーンは、自由にやっていただいて、表情などはこちらで調整しました。シンクロ率が高くなっているのかもしれません。

 小野さん 確かにシンクロ率が高いですよね。安田監督の作品は、差し引きの美学があります。引くところ、出すところが緻密なんです。だから、自分の芝居がうまく見えるんですよ。僕らの芝居を引き出してくださるんです。

 ◇新しいヤマトを! 音楽の重要性

 --「新しいヤマト」を作っていくという意識も強かった?

 安田監督 「宇宙戦艦ヤマト」は長く続いている作品ですが、新しいファンも獲得していかないといけません。テンポ感を意識していたのですが、音楽あっての「宇宙戦艦ヤマト」ですし、テンポアップした映像に音楽が合うのか?と悩んでいました。ただ、音楽が鳴ったら「宇宙戦艦ヤマト」になるんですよね。そういった意味で、新しいテンポ感がありつつ、懐かしい音楽が流れる驚き、気持ちよさを感じていただければと思っていました。

 小野さん アグレッシブかつスピーディーに艦隊が動きますよね。「宇宙戦艦ヤマト」として違和感がないし、格好いいんですよ。スピーディーになることで、緊張感が増しています。そこに「宇宙戦艦ヤマト」の音楽が流れる。音楽は大事ですね! 全部を新しくしたらこの効果は得られなかったのではないでしょうか。受け継いできたものがあるんですよね。今の技術と全くケンカをせずに、むしろ手を取り合っていい効果を生んでいます。

 安田監督 映像における音楽の使い方が進化してきた中で、うまくできたところもあります。

 小野さん 艦隊の重さも感じます。

 安田監督 難しいんですよね。元の作品は作画で、ならではの質感があります。CGではウソをつけません。宇宙だから、奥の艦隊がかすんで見えたら、空気遠近がウソになります。ベタッとならないように太陽の光を使ったところもあります。近くに燃えさかる恒星があったので、光として使ってみたり。ただ、デザリアム艦隊は黒いんです。宇宙で見えなくなるので、恒星の光を使いました。ガスを多めにしたりして、結果的にいい方向になりました。

 --後章はさまざまな愛も描かれます。

 小野さん 根底にあるのは人の絆ですよね。命は限りあるから尊い。当たり前のことですが、それを忘れがちです。スターシャとデスラーの関係には、胸を締め付けられる思いでした。今回も古代はやっぱり悩みますが、一歩引く。らしくない古代を土門が引き戻してくれる。「宇宙戦艦ヤマト」はやっぱり人間ドラマを描いている!と改めて感じました。「宇宙戦艦ヤマト」で描かれている愛について話すと何時間でも話してしまいそうです。長い旅をしてきた中で、「2205」の物語は、生きるとは?ということを教えてくれる物語だったと思います。

 安田監督 いろいろなキャラクターが支え合う中で、「2205」はデスラーとスターシャが大きなポイントになります。これまで、スターシャは神秘的なお姫様、デスラーは冷酷で無口というイメージを持っていましたが、意外にこの二人は表情豊かなんです。抑えていた感情がこぼれ出ている。過酷なシチュエーションも多いですが、絵コンテを描いている時は、人間らしく描こうとしました。柱が多い作品でもあります。土門も薮(助治)もいますしね。

 小野さん いろいろな愛が描かれているんですよね。次世代につなげていくというテーマもあります。若手を見ているとそう思いました。北野(哲也)が古代の位置にいる! 南部(康雄)がアスカに乗っている! 彼も出世したんでしょう。次世代を担う若者が自分を追いかけてくる。役者としての自分にも重なり、グッときました。

 声優陣の熱演、緻密な絵作りがあったからこそ「宇宙戦艦ヤマト2205」は、素晴らしい作品に仕上がった。ぜひ、その熱を感じてほしい。

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