海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
女優の寺島しのぶさんと宮沢りえさんのダブル主演で、12月4、5日午後9時に2夜連続ドラマスペシャル「山崎豊子『女系家族』」(テレビ朝日系)が放送される。当主の死をきっかけとした名家の壮絶な遺産相続争いを描く今作で、“出戻り”でもある総領娘(長女)の矢島藤代を演じる寺島さん。歌舞伎俳優の父・尾上菊五郎さんを筆頭とした“男系家族”で育ったが「私は女系家族に生まれなくて良かった」と話す。そんな寺島さんにドラマ「女系家族」の魅力と、“男系家族”への思いを聞いた。
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ドラマは、これまで映画、連続ドラマとさまざまな形で実写化されてきた故・山崎豊子さんの同名小説(新潮文庫)が原作。代々“女系の家筋”として栄えてきた、大阪・船場の老舗木綿問屋「矢島商店」で、父の愛人と三姉妹を中心に繰り広げられる壮絶な遺産相続争いを描く。宮沢さんが四代目当主・矢島嘉蔵(役所広司さん)の愛人・浜田文乃、寺島さんが嘉蔵の長女・藤代をそれぞれ演じる。
「女系家族」は1963年に発表され、最後の実写化は2005年。令和の時代に再び実写化することについて、寺島さんは「描かれている人間の欲、嫉妬などはいつの時代でも普遍のテーマだと思いますし、そもそもの山崎豊子さんの原作が重厚で面白いものなので不安はなかったです。また、信頼する鶴橋(康夫)監督がとられるということと、『令和版の女系家族』を作りたいって熱量のあるキャストがそろったので、ワクワクしながら撮影に臨みました」と話す。
演じる藤代は、一度は結婚して他家に嫁ぐも離婚した“出戻り”の長女。妹である次女・千寿(水川あさみさん)からは「出戻りの穀潰し」と陰口をたたかれている。父・嘉蔵の死後、当主の座と遺産を巡り、千寿と三女・雛子(山本美月さん)との戦いが繰り広げられるものと思っていたが、父の愛人の文乃という思いもよらぬ伏兵が現れ、怒りと焦りを抑えきれず、感情を爆発させる。
藤代について、寺島さんは「一生懸命で真面目な性格で、総領娘だからしっかりやらないとっていう代々からの教えにとらわれている人」と説明する。寺島さんはそれを“長女の呪縛”と形容し、「総領娘に合わない人が総領娘として生まれてきてしまった。結果的にそれで家がめちゃくちゃになってしまう」と話す。
「お父さんとそんなに会話してこなかった寂しい子だったと思います」とも。「頼る人がいない孤独な人なんですよね。遺産争いでも次女には旦那、三女には叔母っていう味方がいるのも、藤代は内心とてもうらやましい。それで、悪い男に引っかかって、結局だまされてしまうんですけどね。そういう男の見る目のなさも長女らしいなって思いました(笑い)」と語っていた。
「次女みたいに周囲に甘えたりできないところとか、いろいろ自分と重なるなって思いながら演じていました」と話す寺島さん。藤代の父とあまり会話がなかった部分も、自身と父・菊五郎さんとの関係に重なったという。
「父とは本当にしゃべらないんです。弟(菊之助さん)とは師匠と弟子の関係だからしゃべりますし、うちの旦那ともよくしゃべるんです。でも、私とはないですね。家族の時間でも2人きりになることはまずなくて。私も気まずいので、母(富司純子さん)と一緒の時だけ話す感じです。不思議な家族だなって思いますよ」
昔は、歌舞伎という“男系家族”に生まれたことに葛藤もあったという。しかし、「今は男系家族に生まれてきて良かったと思います」と語る。「私は歌舞伎に出ることはないし、好きにさせてもらうからって結構いろんなことさせてもらいました」としみじみ。
「もし、私が女系家族に生まれていたら性格が悪くなっていたんじゃないかな」と話す寺島さん。「女の方がえげつないから。それが集まっているんですよ? したたかさとか甘えとか、女の武器を存分に活用して生きる人になっていたと思います」と語るが、その口ぶりには、“女系”、“男系”を超えたしなやかさがのぞいていた。
※スタイリスト/中井綾子(crepe)、ヘア&メーク/光倉カオル(dynamic)