小野大輔:「宇宙戦艦ヤマト」で「小野大輔=古代進」にどんどん近づく 誇らしく

「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」に出演する小野大輔さん
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「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」に出演する小野大輔さん

 人気アニメ「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの最新作「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」の「前章 -TAKE OFF-」が10月8日に上映された。2012年にスタートした「宇宙戦艦ヤマト2199」から続くリメークシリーズの新作。「2199」から約10年にわたり主人公・古代進を演じているのが、声優の小野大輔さんだ。「小野大輔=古代進にどんどん近づいています」と語る小野さんに「ヤマト」、古代、「2205」に込めた思いを聞いた。

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 ◇ずっと旅をしてきてよかった 自分の人生に重なる

 「宇宙戦艦ヤマト」は1974年にテレビアニメ第1作が放送され、「宇宙戦艦ヤマト2」「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」なども制作されてきた。第1作をリメークした「宇宙戦艦ヤマト2199」が2012~14年、「2199」の続編「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」が2017~19年に劇場上映、テレビ放送された。「2205」は、安田賢司さんが監督を務め、「2202」に続き福井晴敏さんがシリーズ構成、脚本を担当。サテライトが制作する。全2章。

 小野さんは、約10年にわたり古代を演じていることを「10年近くですか。そんなに長い時間、旅をしていたんだ……」としみじみ語る。

 「あっという間でしたね。必死だったからだと思います。地球を救うという一つの大きな命題があり、旅立ち、その中で大切な愛に出会い、異星人との交流があり、戦いの中でヤマトクルーの絆も深まりました。旅の中でいろいろなものを得て、ずっと旅をしてきてよかったなと改めて感じています」

 古代を演じる中で、自身とリンクしていくような感覚もあるという。

 「当初は『宇宙戦艦ヤマト』の古代進という一つの象徴を背負わないといけないという思いがあり、プレッシャーを感じてましたし、自分には大きすぎる存在でした。ただ、10年近くの旅を重ね、いろいろな経験をする中で、古代進と自分がどんどんリンクしてきました。ただ猪突(ちょとつ)猛進な人ではなく、ちゃんとウジウジするし、迷うんですね。その中で一つの答えを見つけていきます。一人じゃなくて、みんなで背負うことに気付きます。自分の人生に重なるところがあり、小野大輔=古代進にどんどん近づいています。自分が古代みたいな人間だったんだって、改めて気付きました。今はそれが誇らしいです」

 ◇畠中祐が大好き ベストキャスティング!

 「2205」で、ヤマト、古代は新たな使命を背負う。新キャラクターとして、畠中祐さんが演じる土門竜介らも登場する。

 「新シリーズが始まる度に、なぜ旅をするんだろう?と思います。その都度、過酷な運命に巻き込まれていきます。必ずヤマトにしか背負えない使命があり、出航します。その時に一つの誇りを感じるんです。今回は、さらに若手が新しく乗り込んでくるんですよね。土門竜介がその象徴です。最初に『2199』でヤマトに乗り込んだ時の古代を思い出しました。その時の自分にも重ね合わせ、すごく熱い思いがこみ上げてきましたね。『2205』で、同じ熱量を持った若い魂に触れ、胸が熱くなりました。また、土門を演じる畠中祐の芝居が真っすぐで、彼自身がそういう男ですし、祐のことがすごく好きなので、うれしくなりました。安田監督は、いろいろな作品でご一緒させていただいて、安田監督と新しい旅に出られることがうれしいです。新しい旅の道標を安田監督が作ってくださっている感覚があって、本当に頼もしいです」

 小野さんは、土門役の畠中さんを「ベストキャスティング」「ぴったり」と絶賛し、絶大な信頼を寄せている。

 「土門は不器用で真っすぐ。ともすると、協調性はないようにも見えますが、深く通じ合っている仲間とは、絆で結ばれています。無鉄砲なんだけど、放っておけない。人間くさいですしね。福井さんにキャストを聞いた時、ベストキャスティングです!って言いましたからね。土門のことを『あいつは俺なんだって』と言うことがありますが、まさしく僕も畠中祐をそうやって見ていますし、すごく共感できる。古代は、土門に対してあんまり多くの言葉をかけないんですよね。やっぱりシンパシーが強すぎて、皆まで言わないでもいいのかもしれない。あの関係性が好きですね」


 ◇「2205」の古代は覚悟が決まっている

 デスラー役の山寺宏一さんに取材した際、小野さんが演じる古代について「真っすぐで、葛藤しているけど濁っていない」と話したことがあった。「2205」では、真っすぐな古代がさらに成長し、強くなったようにも見える。小野さんの演技からも古代の成長を感じるはずだ。

 「『2202』からそんなに時間は経っていないですし、彼が変わったというよりは、彼を取り巻く環境が変わったんですよね。古代、雪が『2202』の最後でたどり着いた答えは、彼にとっては正しい答えだったし、地球人類が出した答えだったと思います。地球の中にもそれをよしと思ってない人もいる。『2202』で旅を終えましたが、もう一度命題をたたきつけられる。古代は『2202』を経たこの3年で、年齢的なものではなくて精神的にグッと大人になりました。俯瞰(ふかん)で周りを見られるようになったと思います。これまでは、雪しか見てなかった。でも、周りのクルー、若手を真っすぐ見ています。僕自身もそうなんですよね。演じる中で、自分やそのすぐ近くのことだけじゃなくて、周りが見えてきました。僕の経験も踏まえ、『2205』の古代を演じる時は、経験値を意識していました。これまでは、僕も迷いの中で演じていましたし、それをも古代でした。『2205』の古代は覚悟が決まっています」

 一筋縄ではいかないのが福井さんの脚本の魅力でもある。覚悟を決めた古代が一体、どうなるのかも気になるところ。小野さんは、役者として福井さんの脚本の魅力をどのように感じているのだろうか?

 「皆まで語らない美学を感じます。役者として正直に言いますと、もうちょっと説明してもいいのかな?もうちょっと感情を吐露してもいいんじゃないかな?となることもあります。でも、それでは野暮(やぼ)なんです。福井さんの脚本は粋なんです。説明を求めたり、役者がそれを乗せようとするのは野暮なことです。役者としては、難しいのですが、研ぎ澄まされる部分もあるので、挑みがいがあります。今まで経験したものを詰め込みたいと思いますし、それを小手先の技術では表現できないんです。すごく試されてますよね。だからこそ、僕自身が古代になってたんでしょうね」

 ◇コロナ禍の収録 一人でも皆さんの声が聞こえた

 コロナ禍ということもあり、大人数のアフレコが難しく、小野さんは一人で収録に臨んだ。

 「どの現場でも感染対策を徹底していますが、その中でもヤマトは、より安全に安全を重ね、徹底した対策をしていただいています。収録は一人だったこともあり、最初は本当につらかったですね。仲間を信じ、艦を進めていくのがヤマトのストーリーの根幹にある。始まるまで気が重かったんですけど、試されてるなとも思いました。これまで培ってきた信頼関係や絆があるので、俺たちの絆をしっかり見せよう!っていうふうに、すぐ切り替えることができました。皆さんの声が聞こえました。きっと桑島さんだったらこう返してくれるだろうな、祐だったら、こうだろう!と想像できた。声が入っていない画(え)から雪や真田の声が聞こえてきました。出来上がった映像を見て、感動しました。やっぱり、みんなの熱量がすごい! 土門も思った以上の熱量でお芝居をしていた。予想通りだし想像以上でした。うれしかったですね。スタッフさんはすごく大変だったと思います。ヤマトクルーの皆に、心からお疲れ様でした!と言いたいです」

 苦しい時代にヤマトがまた発進することについて、小野さんは「とても強い意味」を感じているという。

 「『ヤマトは希望の艦だ』というせりふの通り、まさしく今の時代に、未知の世界に進んでいく人々の背中を押してくれる言葉だなと思いましたね。エンターテインメントは、見た人が何かポジティブな思いを抱けるものだと僕は信じています。改めて、ヤマトを見ると希望が持てますね。つらいこと、理不尽なこと、我慢しなきゃいけないこと……生きているといろいろなことがあります。でも、どんなことがあっても前を向いて上を向いて、空を見上げ、ずっと進んでいけば、必ずそこに希望のある未来が待っている。それがヤマトなんだと改めてこの時代に感じてます。ぜひ見てください。一緒にこの船に乗って未来へ旅立っていただければうれしいです」

 「2205」は、まさにこの時代とリンクし、未来を見据えた作品となった。そのメッセージ、小野さんが込めた熱い思いを感じてほしい。

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