東京リベンジャーズ:アニメも映画も大好評! 幅広い層で盛り上がる理由とは

“ヤンキー要素”と“SF要素”という一見ちぐはぐにも思える組み合わせが、実は広い読者・視聴者層に刺さる万人向けの“熱さ”を生んでいるといえそうです。
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“ヤンキー要素”と“SF要素”という一見ちぐはぐにも思える組み合わせが、実は広い読者・視聴者層に刺さる万人向けの“熱さ”を生んでいるといえそうです。

 テレビアニメや実写映画で人気の「東京リベンジャーズ」。原作マンガの売り上げも急増するなど、話題の作品となっている。不良たちの生きざまを描いたいわゆる“ヤンキーマンガ”というと、男性ファンのイメージが強いが、本作は若い女性を含む幅広い層で盛り上がっているという。異例の人気の秘密をアニメコラムニストの小新井涼さんが分析する。

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 現在、マンガもアニメも実写映画も、それぞれが話題を呼んでいる作品「東京リベンジャーズ(原作表記:東京卍リベンジャーズ)」。今年4月のテレビアニメ放送開始を機に、原作マンガの累計発行部数もおよそ3倍以上の3200万部にまで急増する大きな盛り上がりを見せています。この数字は、最近同じく大きなヒットを生んだ「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」のテレビアニメ放送中と同じくらいの勢いで、版元の講談社としても「この規模のヒットは『進撃の巨人』以来」という驚きの盛り上がりだそうです。

 本作はいわゆる“ヤンキー(不良)もの”ということで、連載開始当初は、「1980~90年代にヤンキーマンガの読者だった30、40代男性が読者層の中心だった」と言われています。しかし現在の盛り上がりをみてみると、どうやらその人気は高校生などのハイティーン層や、女性ファン層の間で特に高まっているようなのです。

 人気ジャンルではあるものの、一方で、見る人を選ぶイメージもあった“ヤンキーもの”である本作が、これほどまでに幅広い層の中で人気を伸ばしているのは一体なぜなのでしょうか。

 その背景には、物語の主軸となっている“ヤンキーものの要素”とタイムリープの“SF要素”という一見ちぐはぐにも思える組み合わせが、実はむしろ通ずるところがあり、広い読者・視聴者層に刺さる万人向けの“熱さ”を生んでいることがありそうです。

 ヤンキーものというと、どうしてもけんかや非行、血なまぐささといった印象も強く、実際に本作にもそうした描写は含まれますが、その根底には、仲間同士の信頼関係や譲れない信念、命懸けの真剣勝負といった、いわゆる少年マンガ的な熱さもあります。

 また、本作をはじめ「STEINS;GATE」や「僕だけがいない街」などもそうですが、タイムリープものの作品も、クールなサスペンスの側面だけでなく、未来を変えるため、人知れず奔走する主人公の孤独な戦いや、その中で出会う協力者による助太刀、諦めず過去を繰り返し続ける中で成長する主人公という泥臭い熱さも何よりの魅力です。

 ちぐはぐどころか、むしろそうした熱さが相乗効果を生んでいる本作は、一般的な作品ジャンルへの印象とは関係なく、見た人を純粋に、そのどこか少年マンガ的で泥臭くもある熱い物語へとのめり込ませているのだと思います。ぱっと見のタイトルやビジュアルだけでは伝わりづらいかもしれませんが、実はそうして年齢や性別に関係なく夢中になれる作品であることが、アニメ化をきっかけにより広く知られたことで、本作はこうして現在、より幅広い層の間で盛り上がっているのでしょう。

 また、本作のタイムリープ要素は、アニメ放送を機に原作マンガの累計発行部数が急増したことにも一役買っていそうです。

 まず“バッドエンド”をみせてから、いかにその結果にたどり着かないように過去の出来事を変えるかというタイムリープものの物語は、どうなるか先が分からないからではなく、最悪の結末(ミッション失敗後の未来)を知っているからこそ、早くその行方を見届けたいと、次の話を強く渇望させます。それは例えば時限爆弾解除のために配線を切るシーンの緊張や焦燥にも似ていて、最悪の事態(爆発)を避けることができたと分かるまでは常に気を抜けないし、途中で止めるくらいならいっそ早く終わらせてくれと、結果を求めずにはいられなくなってしまうのです。

 アニメ放送中にもかかわらず、アニメで本作を知った人までもが次々と原作マンガにまで手を出しているこの現状は、どうしても先が見たくて“次週の放送さえ待てない”人々が、原作を追い始めていることも大いに関係しているのだと思います。

 こうした先が気になる熱い物語だけでなく、魅力的なキャラクターたちや、彼ら彼女らのシンプルなのに複雑な心情や人間関係といったドラマ要素もあり、幅広い層に支持されたのもうなずける作品です。加えて、高校生や女性からの人気が意外と思われるヤンキーものというジャンル自体も、こうした物語の中では、ヤンキーが新選組や傭兵団等に近い、ある種の“属性”として受け入れられていたり、「HiGH&LOW」などで既にファン層の下地ができていたりと、思った以上に、刺さる読者・視聴者層の土壌が広がっているのかもしれません。

 実写映画も、早くも興行収入22.5億円を突破するほど勢いのある本作。万人に刺さる目が離せない熱い展開によって、こうした新たな読者・視聴者層を増やしながら、今年下半期に向けて、マンガ界・アニメ界でもますます大きな盛り上がりをみせていくことが期待されます。

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