「週刊少年ジャンプ」(集英社)で堀越耕平さんが連載中のマンガが原作のアニメ「僕のヒーローアカデミア(ヒロアカ)」の新作劇場版「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション」(長崎健司監督)が8月6日に公開される。新作は劇場版第3作で、堀越さんが総監修、キャラクター原案を手掛けたオリジナルストーリーとなる。「ヒロアカ」は、主人公のデクこと緑谷出久や爆豪勝己たちの“成長”が一つのキーワードとなっている。爆豪を演じる岡本信彦さんは、成長を表現する上で「今まで聞いたことがない音が出せるか」が大事だと感じているという。一度は「もう無理だ」とも思ったという新作劇場版への思い、爆豪の成長について聞いた。
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「ヒロアカ」は、「週刊少年ジャンプ」で2014年7月に連載をスタート。人口の約8割が超常能力“個性”を持つ世界を舞台に、デクが、最高のヒーローを目指す姿を描いている。コミックスの全世界累計発行部数は5000万部以上。テレビアニメ第1期が2016年4月にスタート。第5期が読売テレビ・日本テレビ系で毎週土曜午後5時半に放送されている。
劇場版アニメ第1作が2018年、第2作が2019年に公開され、新作は第3作となる。前作である第2作「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング」は、原作者の堀越さんが「今回の映画はある種、ヒロアカ最終回とも言えます」ともコメントした作品で、岡本さんは「正直言うと、出し切ったなと僕は思っていたんです」と思いを明かす。
「第3弾の制作を聞いた時には、もう無理だなって。第2弾のことが脳裏に焼き付いていて、10時間も叫び倒して、限界を超えてずっと収録していた記憶もあるんです。あれをさらに超えるって、できるのかなという心配がありました。実際、できないんじゃないかと思ってしまったんです」
そんな岡本さんは、新作の台本を読み、デクのあるせりふに叱咤されたという。
「デクが重要なシーンで『勝手に限界を決めるな』というようなせりふを言うんですけど、それがかなり刺さりました。『なんでそんなこと言うの? 勘弁してくれよ』と(笑い)。そのせりふのせいで大変苦しい思いもしたのですが、第3弾でも爆豪が限界突破した感じをどうやったら出せるのかというのが、目標になりました」
新作の収録は、新型コロナウイルス感染症予防のため、個別で行われたという。それも岡本さんにはプレッシャーだったという。
「誰かと掛け合っていくと、かけ算のような感じで、自分も引っ張ってもらってすごくいいシーンになるというイメージだったんですけど、一人の収録だったので、かけ算というよりも自分の力だけで頑張らなきゃと。自分の力を信じて、一人で相手を倒さなきゃいけないという気持ちでした」
新作の敵<ヴィラン>は、世界中の“個性”保持者のせん滅をもくろむ謎の集団・ヒューマライズ。爆豪もヒーローの一員として、強敵を前に自身の限界を突破し、立ち向かおうとする。
「バトルシーンでは、ディレクターさんに『彼の成長を表現したい』と言われて、今までと同じじゃダメなんだなと思いました。これまでも爆豪が変化、成長の瞬間を迎える時は“今まで聞いたことがない音”が出るかどうかを大事にしてきました。今回も人間の声じゃなくてもいいから『なんか出ろ!』と。そこに『負けるものか』という意志が乗っていれば説得力になるのかなと。これは『ヒロアカ』だからこそですね」
「ヒロアカ」は今年テレビアニメ放送5周年を迎えた。放送中の第5期では、粗暴だった爆豪が仲間のことを考える場面も描かれたりと、変化が見られる。岡本さんは、そんな爆豪を「意外な人」と表現する。
「こんな格好よく見える人じゃないと思っちゃうんですけど、最近は、信念がぶれない姿が頼もしく見えてきたんです。かっちゃんがいれば、大丈夫な気がすると思っちゃうんです。すごいキャラクターだなと。本来は『死ね』『クソが』ばっかり言っているキャラクターで、浅く、ぺらぺらに見えてもおかしくないのに、めちゃくちゃ頼りがいがある。ナンバーワンヒーローになる器も持ち合わせているかもしれないと思い始めています」
演じる上でも変化があるという。
「これまでは、爆豪が相手を挑発する時は『自分のほうが上だ』という気持ちをぶつけるマウントに似たものだったんですけど、今は勝利条件の一つというか。勝利のために、相手の隙(すき)を伺う、相手の反応を見て戦い方のヒントを得るための挑発というか。第1期の頃に比べて、同じ挑発でも演じる上での意識は変わりました」
爆豪に5年間向き合い続けてきたからこそ、見える変化、成長。新作劇場版でも、爆豪は進化した頼もしい姿を見せてくれる。岡本さんが限界を超えて発した「今まで聞いたことがない音」とはどんなものなのか、見逃せない。
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