人気アニメ「ガンダム」シリーズの最新作「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」(村瀬修功監督)。6月11日に公開され、公開から24日間で興行収入が約15億8000万円、観客動員数が約77万9000人を記録。同シリーズの劇場版の最高興行収入は「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編」(1982年公開)の約23億円で、記録を更新するかも注目を集めている。「閃光のハサウェイ」を手がける村瀬監督は、劇場版アニメ「虐殺器官」の監督で知られ、これまで「機動戦士ガンダムF91」「機動戦士Vガンダム」などで作画監督も務めてきた。「孤高のクリエーター」「多才」「世界で5本の指に入るアニメーター」。「閃光のハサウェイ」のスタッフを取材する中で、村瀬監督の印象についてそう語る声を聞いてきた。孤高で多才な村瀬監督とは……。スタッフ、村瀬監督本人の言葉から制作の裏側に迫る。
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「閃光のハサウェイ」は、1989~90年に富野由悠季監督が発表した小説が原作。宇宙世紀0105年を舞台に、第二次ネオ・ジオン戦争で苦い別離を経験したブライト・ノアの息子ハサウェイが、新型モビルスーツ・Ξ(クスィー)ガンダムを駆って、地球連邦政府に反旗を翻す姿を描く。全3部作。
アニメを手がけるサンライズの小形尚弘プロデューサーは、村瀬監督について「ビジュアルセンスがこれまでのサンライズアニメの枠を超えています」と話したことがあった。小形プロデューサーは「『閃光のハサウェイ』を一番いいものにしたかった。だから、村瀬監督なんです」と、絶大な信頼を寄せる村瀬監督に作品を託した。
「実写思考と言いますか、現場も途中からアニメを作る感覚ではなかったです。『閃光のハサウェイ』は、群像劇ではなく、ハサウェイ、ギギ、ケネスの3人の心情にスポットを当てています。村瀬監督は『虐殺器官』もそうでしたが、心情を深く描くのがうまい。ただ、大変でした。オッケーがなかなかでない。3D(CG)はトライ&エラーを繰り返し、時間もすごくかかりました。監督の頭の中には、我々一般人が想像もできないような映像があるんです」
「閃光のハサウェイ」は映像美も話題になっている。スタッフから「ものすごく真面目。細かいところまで神経が行き届いているからこそ、このような作品に仕上がった」という声もあった。映像美は、村瀬監督をはじめスタッフのこだわりによるところも大きいようだ。
「独特のリアリティーがあり、演出がすごく格好いい」という声もあった。村瀬監督は、“映画的な作り方”をしたというが、「リアリティーを高めたいと考えたというよりも、画から得られる情報量を上げるには、そうするしかない」とも話していた。
「せりふで説明するよりも画で説明しようとした。キャラクターだけを追いかけてドラマを作ることもあるけど、背景で状況を説明する。実写ではそういうこともしますが、アニメの場合、せりふで説明してほしい人もいるかもしれません。テレビでやろうとすると、せりふで説明しないと、誰も気付かないかもしれない。映画だからできたことです」
村瀬監督に取材した際、「閃光のハサウェイ」の原作を読んだ際に「『F91』の構成に似ていると思った」と話していたことも印象的だった。「F91」は、富野監督が手がけた劇場版アニメで、1991年に公開され、村瀬監督は作画監督として参加した。「F91」には特別な思いがあった。
「『閃光のハサウェイ』は『F91』の前に書かれた小説。中盤に空襲シーンがありますが、『F91』の冒頭の空襲シーンと割と似ていて、『F91』でもう一回やったのかな?とも感じた。『F91』で自分は、ちょうどそのシーンを担当していましたが、うまくできなかったと思っています。それに『F91』で、仕事のやり方を学びました。当時、できなかったこと、できたことが、自分の中でずっと残っているんです。そこも解消したかった」
「富野さんから、教わったことがあります」とも語っていた。
「ものを作る時に考えないといけないこと、奥行きみたいなことです。手を動かすだけでなく、頭を使えと。アニメーターとして、カットに向かう考え方をたたき込まれました。でも、それに応えられない自分に絶望してアニメーターを辞めていますしね。それに縛られることがいいのか、悪いのかは分からないです。そんなに考えなくて、もっとライトでもいいのかな?と思うこともありますし」
「F91」で“富野イズム”をたたき込まれた村瀬監督はその後、さまざまな作品でキャラクターデザイン、作画監督、監督として大活躍し、「孤高」「多才」とも呼ばれるようになる。そして「閃光のハサウェイ」の監督として「ガンダム」を手がけることになったのは、運命的なものも感じる。
「閃光のハサウェイ」は全3部だ。村瀬監督は「第2部はハサウェイの内面をより明らかにするために、膨らませる。盛りだくさん、より濃くなると思います」と話していた。第2部の公開時期は発表されていないが、期待が膨らむ。
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