天海祐希:「今の時期に放送できるのはありがたいし意味がある」 「緊急取調室」2年ぶり第4シーズン

7月8日スタートの連続ドラマ「緊急取調室」で主演する天海祐希さん=テレビ朝日提供
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7月8日スタートの連続ドラマ「緊急取調室」で主演する天海祐希さん=テレビ朝日提供

 女優の天海祐希さん主演の連続ドラマ「緊急取調室」(テレビ朝日系、木曜午後9時)シーズン4が7月8日に放送される。井上由美子さんのオリジナル脚本。可視化設備の整った特別取調室で容疑者を取り調べる警視庁捜査1課の専門チーム「緊急事案対応取調班」(通称キントリ)メンバーの活躍を描く。キントリの取調官・真壁有希子役を演じる天海さんに、2年ぶりの第4シーズンを迎えた心境、コロナ禍での仕事への取り組み方の変化、初回ゲストの桃井かおりさんとの共演などについて聞いた。

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 ◇コロナ禍で「変わらないものと変えられるものの差が浮き彫りになった」

 第3シーズン放送中は元号が「平成」から「令和」へと変わるタイミング。あれから2年。世の中は状況が大きく変わったが、天海さんは「本当に思いもしなかったことが起き、常識が翻り、覆され、今まで大事にしてきたものが急になくなったりもしました」と切り出し、「できるはずだったお仕事ができなくなったり、会えるはずだった人と会えなくなったりしましたが、会うことよりも元気でいてくれることの方が大事。元気でいるためにも『これを我慢しよう』みたいなことが多かった。でも世界中の人が同じような経験をしているのかと思うと、家にいてもみんなが同じような気持ちで過ごしていると思うと、すごく励まされました」とコロナ禍での変化を語る。

 そうした中で撮影がスタートした。「できること、やっていけること、変化できることを人間は探せるという気持ちがある一方で、なおかつ変えてはいけないことがやっぱりある」という考えに至ったという。

 そして、「人と人、言葉だけじゃなく行動だけじゃなく、その裏に何があるのか探ることがキントリの中枢というか、それは変わらない。変わらないものと変えられるものの差が浮き彫りになった2年間ではないかな」と作品の思いを新たにする。

 「そこを踏まえて今の時期に『緊急取調室』のシーズン4を放送させていただけるというのはすごくありがたいし、意味があるものだと思い、頑張っています」と神妙な表情で語る。

 ◇女優・桃井かおりの“スケール”に圧倒

 初回のゲストとして、女優の桃井かおりさんが“7分間の演説”の伝説を持つ活動家・大國塔子役で出演することが発表されている。天海さんは桃井さんとの共演について「すごい方だから、私などが意見したりアイデアを言ったりするのは失礼じゃないかなと思っていた」と切り出し、「最初にお会いした時(桃井さんのものまねで)『こう読んできたんだけど』と声をかけてくださり、そこから私も『こういうふうに読みました』と意見交換ができ、窓口をバーンと広げてくださいました」と感謝を口にする。

 そのきっかけになったのがハイジャックシーンだという。天海さんは「狭い機内で動く範囲が制限される状況に、桃井さんが疑問を投げかけてくださり、監督、私も含めて話し合う場面があったのですが、そこでお互いいろんなアイデアを出し合って、私は天海祐希個人の意見、そして真壁有希子視点の意見を述べさせていただきました」と当時の状況を説明する。

 続けて「桃井さんが面白がって聞いてくださり(桃井さんのものまねしながら)『それいいね。採用』って言ってくれた時は『やった!』と思いました。アイデアや意見を言いやすい環境を作ってくださったことにとても感謝しています」と喜ぶ。「どんな意見も真摯(しんし)に聞いて向き合ってくださり、お互いにシーンを作っているという充実感に包まれながら撮ることができました。やっぱりすごい方って器も大きい。いつか私もこんなふうになれたらいいなと思いながらお話しさせていただきました」と感慨深げに振り返る。

 そして「別に自画自賛するわけではないですが、もしかしたら何年かの中で会えるか会えないかぐらいのシーンを一緒に作れたことは本当に今の私の誇りになっています。すごく楽しかったです」と充実感をにじませる。

◇変わらないキントリメンバーにほっ

 キントリのメンバーは、管理官・梶山勝利役の田中哲司さん、菱本進役のでんでんさん、小石川春夫役の小日向文世さんが続投するほか、第3シーズンから加入したお笑いコンビ「ドランクドラゴン」の塚地武雅さん演じる玉垣松夫が「サイバー犯罪対策室」に復帰し、刑事部長・北斗偉役で池田成志さん、警視庁の警乗警察官・山上義春役で工藤阿須加さんら新キャラクターも登場する。

 2年ぶりに再会したメンバーについて、天海さんは、「会うことも大事だし会ってみんなでおいしいご飯を食べたいけど、今回はクランクイン前の食事会はやめておこうとなりました」と残念がる。でも、「会う前はワクワクして『みんな元気かな』と思っていたけど、会うと『あれ昨日も一緒だったのでは?』『なんだこの慣れた感じは』というぐらい、あまり貴重感がなくて愕然(がくせん)としました(笑い)。でもおじさんたち(※田中さん、でんでんさん、小日向さんら)も『昨日も一緒にいたよね』ぐらいの勢いでしゃべっていました」と楽しそうに話す。

 キントリメンバーの変化を聞くと、「セットに入って『あれ?』と思ったのが、梶山さん(田中さん)の椅子がパワーアップしていたこと」と切り出し、「一人だけ(背もたれの頭部分に)枕のようなものがついたから、(田中さんに)『何ですか』と聞いたら『ずっと座っているから』って。そこで『ずっと座っていなくていいから、取調室に入ったらどうか』と言ったのだけど、(田中さんから)『遠慮しとく』って言われて(笑い)」と明かす。

 シリーズを通じて田中さん演じる梶山は取調室で取り調べをしたことがない。天海さんは「今後、梶山さんにはメーンで取り調べてもらいたいみたいな話題になったら、おじさんたちが『そうだよ哲ちゃん、「時間です」ばかりだから』って始まり、(田中さんも)『あれはいろいろ工夫しているんですよ』という、安定のよく分からないやり取りを見て私はゲラゲラ笑っていました」。「それを見て若干引き気味だった新しいレギュラー陣もいて、『大丈夫だよ。こういうことが毎回繰り広げられるから気を付けてね』ということを伝えました」と楽しみつつ、フォローも忘れなかったという。

 ◇取り調べシーン前日は「夜中に何度も起きる」

 第4シーズンで、キントリは「部署の消滅まで残り100日」というタイムリミット。解散危機という緊迫感は真壁のせりふの端々にも感じられる。天海さんは「最後の最後まで暴れてやるという気持ちが出ていますよね。先々のことは分からないのですが、どっちに転んだとしても、とても好きな作品で好きな仲間、好きなスタッフなので、続いたらすごくうれしいですし、続かなかったとしても後悔ないようにいたい」と決意を口にする。

 基本的には「プレッシャーは自分がプレッシャーと決めた時点でプレッシャーになると思っているから(撮影前は)プレッシャーだと思っていない」と話す天海さんだが、今シーズンでは「いつも取調室の大詰めを撮る時はそうなんですけど、夜中に何度も起きる。パッと目が覚めるから『起きなきゃいけない時間なのか』と思うと(午前)3時とかで、『まだ寝られる時間!』と思いながらも、気になるから台本をもう一回見て『よし、覚えている』とやってからもう一回寝る」と明かす。

 ただ「一つの事件の犯人を追い詰める時に、その人にとっては人生がかかっている、もしくは命がかかっているのだから、対する私(真壁)も追い詰めていく時には寝られなくて当然。『これはこれでいい。こういう精神状態なのだからいい』と思っていつもやっています」と、役の心境とシンクロしていると説明する。

 ◇変わらない良さと変えていく良さを楽しんでほしい

 そんな真壁有希子との関係性について、2年前には「友達になれるタイプだけど、止める人がいないとものすごくどっちかに突っ走りそう」と話していた天海さん。今改めて聞いてみると、「友達になれると思います。あれから2年たっているので多分、お互いに大人になっている。だから譲り合うことを覚えていると思う。お互いにいけるのでは」とちゃめっ気たっぷりに答える。

 シーズンを積み重ねてこその強みを「出演者のチームワークが抜群だし、スタッフの方のチームワークも最高」と力を込めて言い、「ちょっとずつキントリ内や取り調べの時などで、『前回はこういう形で表現していたものが今回はこう』といった、警察内部も進化していることでちょっとずつ変わっている部分もあります。キントリファンの方でしたらさらに楽しんでいただけるのでは」と注目ポイントをアピール。

 作品の魅力を「人と会うことがこんなにできにくくなる時代が来るのかとびっくりしていますが、キントリは被疑者を見て言葉を聞いて、それが本当なのかうそなのかを見極めるために挑発して泣き落として怒りをぶつける。そうしてその人の心をマル裸にしていくのかキントリの醍醐味(だいごみ)」と話す。「人と会いにくくなっているけど、だからこそ人と会うことがとても大事。正面切って人と会うことがとても大事であり、そこを大切にしているのがキントリという変わらぬものがあります。お仕事以外はなかなか外に出にくいですけど、キントリを見ておうちで過ごす時間が充実するといいなって。週に1時間ですけど、スカッと終わってもらえるのでは、という希望を込めて、毎日元気にみんなで頑張っています」とメッセージを送った。(取材・文・撮影:遠藤政樹)

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