ドラゴンボールDAIMA
第11話 デンセツ
12月23日(月)放送分
羊毛フェルトで作られたキャラクター・モルカーたちが活躍するストップモーションアニメ「PUI PUI モルカー」が7月22日から2週間限定で劇場公開されることが発表され話題を集めた。今年の冬アニメとしてSNSなどで話題を呼んだ作品で、配信サービスでは今でも見られるほか、7月からの再放送も決定している。どうして劇場公開が話題を呼んでいるのか。放送当初から注目してきたアニメコラムニストの小新井涼さんが独自の視点で分析する。
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大人気「PUI PUI モルカー」が、映画「とびだせ! ならせ! PUI PUI モルカー」として、7月22日から2週間限定で劇場公開されることが発表され、話題になりました。内容はテレビ放送された全12話が、2D・3D・4Dでそれぞれ上映されるというもの。他作品の総集編上映とも違い、新規映像の追加などもないようですが、それでも発表を聞いた途端、脊髄反射的に「絶対行く!」と思ってしまった人(かくいう筆者もでした…)は多かったようです。
上映される12話は現在配信サイトでも視聴ができ、7月からは再放送も開始され、7月末にはDVDとBlu-rayも発売されます。それにもかかわらず、どうしてファンは家でいつでも見られる作品を見に、わざわざ映画館にまで足を運ぼうとするのでしょうか。
まず要因として挙げられるのは、今回の上映に含まれる“参加型”の要素だと思います。本作は、タイトルの「ならせ!」の部分にあたる仕掛けとして、入場者プレゼントに「ならせ!モルカーボール」が配布されるのですが、なんと上映中、観客がそれを鳴らして楽しむことができるのです。
放送時も好評だった本物のモルモット声優による「プイプイ」という声に合わせて一緒にプイプイできるという情報は、ライブビューイング(ライビュ)や応援上映に慣れ、その“通常上映とは違った楽しさ”を知るアニメファンにとってはかなり魅力的に映ったことでしょう。実際に情報が発表されるやいなや、大人のアニメファン達からは「絶対楽しいやつじゃん!」と、この「ならせ!」の部分に対しては特に大きな反響がありました。
現在、コロナの影響で参加型上映もしばらく“発声禁止”になっていますが、そんな中で、声の代わりに“鳴り物”を使う応援上映なども開催され始めています。一見、完全に子供向けにも思えるこの入場特典は、実はそんな昨今のアニメファン事情も反映された、幅広い年齢層に刺さる要因となっているようです。
もうひとつは、何度も見て内容を知っている作品“だからこそ”、絶対に面白いことが見る前から分かっている点です。しかもそれは“ハズレがないから”と消去法で他の作品より鑑賞されやすいというより、「モルカーを? みんなで? 映画館で見る? 絶対楽しいし盛り上がるに決まってる!」という、極めて前のめりな鑑賞動機になっているように思います。
実際、今回上映の発表に対して、これを機に初めて本作を見てみようというより、既にテレビシリーズをみて内容を知っているファンからの「絶対行く!」という反応が大きかったのも、そのためではないでしょうか。
複数回鑑賞さえすっかり根付いている現在、もはや“見たことがある内容”というのは「じゃあ家で見ればいいじゃん」と鑑賞から足を遠ざける要因にはならず、むしろ好きな作品であれば期待値が高まり鑑賞への後押しとなることが、今回の反応からもよく分かります。
ライビュや応援上映といった参加型上映や複数回鑑賞など、ここ5年ほどで大きく変わった人々の鑑賞習慣もあり、現在、多くのアニメファンが、何回も見たことがある、家でもみられる作品こそ、“映画館で見るともっと楽しい”ことをより身に染みて知っています。
それは、普段より大きな画面や高音質で楽しめるといった環境的な要因だけでなく、劇場での映画鑑賞そのものが、全く別のアクティビティーとなってきているからなのでしょう。「家でモルカーを見ること」と「映画館でモルカーを見ること」は、優劣の差こそありませんが、家で音楽を聴くこととライブへ参戦することぐらい、そこに求める楽しさの種類が変わってくるのです。
家で定額もしくは無料で視聴できる作品を、わざわざ映画館に足を運んでお金を払ってまで見ると聞くと、不思議に思う人もいるかもしれません。しかしそれは今回の上映が、単に同じお話が映画館で見られるだけではなく、新作を作るには時間がかかる本作がそのネックを覆しつつ、そうした昨今のアニメファンの鑑賞習慣も上手く反映した内容であるからだと思います。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。
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