ダンダダン
第7話「優しい世界へ」
11月14日(木)放送分
話題のアニメの魅力をクリエーターに聞く「アニメ質問状」。今回は、電撃文庫(KADOKAWA)の人気ライトノベルが原作のテレビアニメ「86-エイティシックス-」です。A-1 Picturesの藤井翔太プロデューサーに、作品の魅力などを語ってもらいました。
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サンマグノリア共和国という国を舞台に繰り広げられる物語です。<レギオン>という完全自律無人戦闘機械による侵攻を日々受けている戦時中の国です。戦争の発端は物語の9年前、隣国の大国によるものなのですが、その歴史はここでは割愛させていただきます。開戦からわずか半月で壊滅状態となった共和国は、<レギオン>からの侵攻を防ぐため、85の行政区の周りにグランミュールという壁を築き上げ、要塞(ようさい)を作り上げます。その壁を建造するため、そして<レギオン>と戦わせるために、アルバという人種のみを85区内に残し、それ以外の人間を“エイティシックス”と名付け、兵役と労役を課し、壁の外へと追いやりました。
どうしても世界観の説明のために用語が多くなってしまって恐縮なのですが、その壁の外、86区で<レギオン>たちと戦う少年少女たちエイティシックスの精鋭部隊を率いる少年・シンと、彼らを壁の中から指揮する指揮官(ハンドラー)である少女・レーナの物語となります。
この作品の魅力は大きく三つだと思っています。詳細は次の質問で回答させていただければと思いますので、ひとまずここではその三つを紹介させていただければと思います。まず、この立場の違う、同じ年頃の少年少女が描く“ドラマ”です。次に、敵である機械に対し、エイティシックスたちも機械に乗って戦うのですが、そのメカ同士の“戦闘”も大きな魅力の一つです。そして、このドラマと戦闘を魅力的なものにする、原作・安里先生が綿密に紡がれた“世界観”。物語の冒頭からラストに至るまでのこの三つの調和が、作品の魅力です。
原作が電撃小説大賞・大賞を受賞されたり、人気作品であるのもそのはずで、上記のような魅力が存分に詰め込まれた作品であるからです。この魅力を損なわないように表現することを心がけました。特に“世界観”、設定とも言いかえることができると思いますが、これに準じて描くことを大切にしています。この裏付けがちゃんとあることで、キャラクターの言動は説得力を増し、物語に深みが出ると思いますし、視聴者の皆様の没入感を強めることができると考えたからです。
ただ、その一方で、アニメならではの表現、いわゆる派手さを重視している部分もあります。特に戦闘のシーンがそれにあたると思います。やはりあまりにもリアルを追求しすぎると画面が地味になってしまい、派手さに欠ける場合があります。そこは原作の安里先生や、メカニックデザインのI-IVさんにアニメの演出上の表現として認めていただくことにより、アニメならではの格好よさを目指した画面作りもしています。ただそこも、設定を基準にすることによって、映像に深みを出しています。
例えば、シンたちが乗っているジャガーノートの装甲はナイフでも切り取れるほどペラペラで、一撃でも食らったら終わりの中で戦っており、隠れたり、待ち構えたり、作戦を駆使しながら戦っていることや、敵のレギオンは正面からの攻撃に強いため、装甲の薄い上部からの攻撃によって倒そうとしていることなど、その制限の中で格好いいメカアクションを模索して描いています。その格好いいメカアクションは、CG制作の白組さんの力によるものが大きく、とてもハイクオリティーな映像を実現していただいています。
CG一つをとってももっとたくさんのこだわりがあり、ここだけでは語り切れません! でも、それを全て映像に詰め込みましたので、ぜひ細部までご覧になっていただけますと、とてもうれしいです。
上記の“世界観”にこだわるが故に、それを絵にすることが大変でした。根本からの話で言えば、メカのモーション一つを取っても、実際に映像として動かすとなると、一から作り上げる必要があります。安里先生とI-IVさんに随時監修をいただきながら、アニメとしての見栄えも考えながら、一体一体丁寧に作り上げました。ほかにも、エイティシックスの彼らがどんなところで生活をしているのか、どんなものを持っていて、何を持ったり食べたりしていたらダメなのか、背景の描写も世界観を確認しながら細かく作り上げています。本編中に登場する書類やモニター類も、軍事考証の方に入っていただき、リアルな世界で考えてもおかしくないように、一つ一つ監修を入れながら作り込んでいます。つまるところ、この作品、細部にわたる作り込みがめちゃくちゃ多いんです! そこが何にしても大変なところかなと思います。
作品を作る上でうれしいことは、まさに今です。放送が始まり、このたくさんこだわった映像を見ていただき、その演出やこだわりに気付いていただき、視聴者の皆様に喜んで、楽しんで、感動して、キャラクターたちに愛情を持って接していただいている様子を感じられることがとてもうれしいです。
注目していただきたいことは、「何が変わって、何が変わらないのか」というところです。個人的にはキーワードの一つです。キャラクターの変化のみならず、映像表現の利点を駆使して、いろいろなものの変化を表現しています。また一方で変わらないものも大切に描いています。ちょっとこの辺りはネタバレにもなってくるので細かくは書けないのですが、この変化に注目して見ていただけると、楽しんでいただけるのかなと思います。
ここまで細かいことや、偉そうなことばかり書いてしまったのですが、この「86-エイティシックス-」という作品、単純に面白い映像に仕上がっていると思います! だって声優の皆様の演技も素晴らしく、そして音楽はとても格好よく感動的で、どのキャラクターも格好よく、そして可愛く、魅力的に描かれているので! これだけを取っても楽しんでいただける作品であることは間違いないと思います。
ちょっとエンターテインメントとしては重たいストーリーではありますが、気軽に、もっとたくさんの方々に見ていただいて、楽しんでいただきたいなと思っています。映像を見ていただいて興味を持っていただいた方は、細かいところまで注目して見返していただけると、さらに楽しんでいただける作品なのかなと思います。視聴者の皆様の好きな作品の一つになることを願っています。
A-1 Pictures 制作部 プロデューサー 藤井翔太
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