渡邊璃生:「愛というものがよく分からない」 元ベイビーレイズの文筆少女が初短編小説集 “裏切り者ユダ”に惹かれ…

初短編小説集「愛の言い換え」を発表した渡邊璃生さん
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初短編小説集「愛の言い換え」を発表した渡邊璃生さん

 2018年に解散したアイドルグループ「ベイビーレイズJAPAN」の元メンバー、渡邊璃生(りお)さんの初短編小説集「愛の言い換え」(KADOKAWA)が5月2日に発売された。渡邊さんは小学生の頃から趣味で小説を執筆してきたという文筆少女。今作にはアイドル時代の「ゆうしくんと先生」「ぐちゃぐちゃなんだよ」「規格青年」「規格青年 -潮井いたみくんの愛した世界」に、新たに書き下ろした「愛の言い換え」「ダイバー」「蹲踞あ」を加えた7編を収録している。共通テーマは「愛」といい、「自分自身『愛』というものが実はよく分かっていなくて、『愛』というものの定義といいますか。どこまでが友情で、どこからが恋愛感情なのか、とか。それを理解するために書く、理解するために形にしているっていうのも大きい」と明かす渡邊さんに話を聞いた。

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 ◇表題作「愛の言い換え」には宗教、DV、下着泥棒といった要素も…

 渡邊さんは2000年3月8日生まれ、神奈川県出身。「ベイビーレイズJAPAN」では最年少メンバーとして活躍し、アイドル活動の傍ら小説執筆、作詞を手掛け、グループ解散後も「工藤了(くどう・りょう)」名義で携帯小説アプリ「Balloon」にて作品を発表してきた。

 今年3月に20歳になったばかりで、小説集「愛の言い換え」に収録された7編は10代に書かれたものといえる。共通テーマの「愛」については、「今回に限らず、趣味で小説を書いていた頃から、ずっと『愛』をテーマに書き続けてきたなって思っていて。意図せずに“そうなってしまった”というのが正しいのかもしれません。あと本のタイトルが『愛の言い換え』に決まって、より(『愛』というテーマを)意識するようにはなりました。ただ、別のタイトルになっていたとしても、テーマは変わらなかったんじゃないのかなって思っています」と語る。

 タイトルにもなった書き下ろし作「愛の言い換え」は、教会で出会った年上の青年に惹(ひ)かれていく女子大生が主人公。宗教(信仰)やDV(ドメスティックバイオレンス)、下着泥棒といった要素がちりばめられた、どこゆがんだ愛の物語で、いい意味で元アイドルの匂いが感じられない。

 「『信仰』について考えていた時期がありまして、特に『愛の言い換え』は表題作ということもあって自分の興味、関心の強いものを書きたいと思ったというか」と説明する渡邊さん。「DV彼氏や下着泥棒に関しては、ギャップを付けると物語がより面白くなると個人的に思っていまして、“スパイス”になればと加えた感じです。その落差が思わぬ笑いにつながったりもしますので、『愛の言い換え』に限らず、(小説集に収録された)7編の中にはギャグとして書かれている部分もあるんです」と明かす。

 宗教(信仰)に関して言うと、渡邊さんにとって、イエス・キリストの弟子のユダの存在が一つのきっかけだった。「私、すごくユダが好きで、小学生の頃にキリストの伝記ものを読んだときも、ユダの方に惹かれてしまったんですね。彼の存在がなければ、イエスはイエスになれなかったと思っていて。世間的にはユダは裏切り者の代名詞になっている。けれども、キリスト自身、ユダの裏切り行為を促した部分もあったりするのにって考えると、そこに切なさやドラマを感じて。彼が報われる話を書きたいなって思ったりもしたので、そういう意味で、信仰ってものに惹かれたっていうのはあります」と語った。

 ◇今も「愛って何なんだろう」と結論が出ないまま 小説を書く意味は?

 小学生の頃には趣味で小説を書き始めていたという渡邊さん。「当時読んでいたマンガや2次創作を題材に物語を書き始めたのがきっかけ。それ以前から文字を書くのがすごく好きで、読書感想文や作文、あとは国語の授業とかで短歌を作ったりするのも好きでした」と文筆への目覚めは早かったという。

 物語をつむぐという意味では、「マンガやアニメ、小説に触れるうち、こういったテーマなら自分だったらこうするんじゃないかと思い始めたのが、一つのきっかけだったのかもしれません。当時は本当に表紙、タイトルで気になったものを手にとって読むって感じだったのですが、西尾維新さんの作品はすごく好きで、西尾さん原作のマンガ『めだかボックス』、アニメにもなった『<物語>シリーズ』には、日常的に触れている感じでした」と振り返る。

 早熟だったイメージを受けるが、その一方で、「今でも同じことで悩んだりもする」と苦笑いを浮かべる渡邊さんは、「『愛って何なんだろう』って結論が出ないままですし、こんなこと言うのもなんなんですけど、自分はそんなに感受性が強いわけでもなく、視野も決して広くはない。もっと一つの事柄からたくさんのことを感じることができたらなって個人的には思っています」と話している。

 また渡邊さんは、小説を書く行為や意味を「これが正解なんじゃないかって探す旅のようなもの」と表現。今後に向けては、「これまでふわふわとした感じといいますか、謎めいていたり、ミステリー要素が強かったので、次はもっと地に足がついた、『現実的な恐怖』みたいなものを書いてみたいです」と希望を述べ、「登場人物がたくさん出てくる話が個人的には苦手で、自分でもキャパオーバーになってしまうのが正直なところなんですが、次に書くとしたら、たくさんの人物が出てきて、人間関係も複雑に絡み合ってといった感じの長編に挑戦してみたいです」と意欲を見せていた。

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