アニメ質問状:「ドロヘドロ」 MAPPAのあくなき努力と情熱 ディテールをなるべく省略しない

「ドロヘドロ」の一場面(C)2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会
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「ドロヘドロ」の一場面(C)2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会

 話題のアニメの魅力をクリエーターに聞く「アニメ質問状」。今回は、林田球さんのマンガが原作のテレビアニメ「ドロヘドロ」です。東宝(TOHO animation)の齋藤雅哉プロデューサーに、作品の魅力などを語ってもらいました。

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 ――作品の概要と魅力は?

 「ドロヘドロ」の魅力を語ろうとするとたくさんあり過ぎてどこから伝えるべきか迷いますが、キャラクター、世界観、ストーリー、どこを切り取っても刺激にあふれまくっている、もはや刺激成分だけで作られていると言っても過言ではないところです。顔を魔法でトカゲの姿に変えられ、さらに記憶までなくしてしまった主人公が、自分に魔法をかけた魔法使いを相棒と一緒に見つけて狩るお話……と、あらすじだけでも見たことのない話だと分かると思います。ダークファンタジーの固定概念をぶっ壊す荒唐無稽(むけい)とも思える世界観の中、本能的に生きるキャラクターたちが、バイオレンスでありながらコミカルに生き生きと描かれている作品です。一言なら「混沌(こんとん)を楽しむ」、そんな作品です。

 ――アニメにする時に心がけたことは?

 「ドロヘドロ」の魅力は、スタイリッシュさ、ダークさ、バイオレンスさはもちろんなのですが、世界観に相反するようにキャラクターが非常に前向きで明るい部分が重要なポイントだと思うんです。各話の構成としても主人公カイマンの本当の顔と記憶の謎に迫るサスペンスのシーンやバイオレンスのシーンと、日常のコミカルなシーンが同じくらいのバランスになっています。

 ダークさとコミカルさの両方を楽しむ本編にするため、芝居の方向性から、画面の細部や色味に至るまで、スタッフ、キャストのこだわりや工夫が随所に入っています。作品の鑑賞後感も大事にしたいと思っていまして、グロテスクなバイオレンスのシーンがあっても、エンディングテーマをパーティーチューンにすることで、踊りたくなるくらい明るい気持ち、よく分からないけどスッキリする感じを出したいと思い、音楽面ではそんなことを意識しています。

 ――作品を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったことは?

 「ドロヘドロ」をアニメ化するにあたって大変だと思ったのは、情報量の多さ、ディテールの細かさです。原作の魅力を語る上で林田球先生の描く唯一無二の世界観と画力は欠かせないと思います。制作スタート時に先生から、ディテールをなるべく省略しないでほしい、また原作の画を可能な限り再現してほしいというご要望をいただきました。この作品は、主人公のトカゲ男・カイマンの顔の皮一つとっても線の量が尋常じゃなく、作画で完璧に再現するのは難しく、ともすれば止め絵だけの動かないアニメーションになってしまうかもしれない。それであれば、セルルックのCGに挑戦したいという提案が(アニメ制作の)MAPPAさんからあり、今回のようなルックになりました。

 そこに世界観設計・美術監督の木村真二さんの描く、ため息しか出ない超絶クオリティーの背景が加わることで、更に説得力のある画面になったと思います。本当にMAPPAさんのあくなき努力と情熱には脱帽です。

 ――今後の見どころを教えてください。

 アニメシリーズとして後半に差し掛かり、カイマンの本当の顔とは……、煙ファミリーとの激烈なバトル……、ほのぼのとした日常……、野球……など、予想のつかない展開が目白押しです。全ては混沌(こんとん)の中……。食わず嫌いをせずに、まずは一度、口に含んで飲み込んでみてください。それが「ドロヘドロ」を楽しむ方法だと思います。

 ――ファンへ一言お願いします。

 「ドロヘドロ」はずっとアニメ化したかった念願の原作で、林田先生とMAPPAさん、各社のご協力とご理解をいただき、放送できる表現などいろいろなハードルを調整しながらも、楽しく制作しています。スタッフ、キャストの作品愛と情熱が、これでもかと胃もたれするくらい詰まった作品だと思います。ぜひ、何度も見て余すことなく最後まで楽しんでください!

 東宝 TOHO animation プロデューサー 齋藤雅哉

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