今年、創刊50周年のマンガ誌「ビッグコミック」(小学館)の関係者に、名作誕生の裏側や同誌について聞く連載企画「ビッグに聞く」。第20回は、「AKIRA」などで知られるマンガ家で映画監督の大友克洋さんが登場。同誌への思い、転機、ファンが待ち望む新作について聞いた。
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大友さんは「ビッグコミック」を創刊号から読んでいた。当時は13歳だったといい「創刊号はよく覚えてますよ。平とじ(背表紙がある製本)ですもん。来た!と思った。買って手に持つ喜びがあった。僕はいつだって新しいものを追っかけているので、マンガはこうなっていくんだなあと思った」と振り返る。
同誌について「マンガ家にとって、ハードルが高い雑誌はあっていいのよ。『ここにはなかなか描けないよ』っていうステータスね。誰でも描けるマンガ誌を作っちゃいけない。むしろ『ここに載るには100年早いわ!』と言ってていい。ビッグはいつもビッグであってほしいね」という印象があるという。
マンガの世界には「大友以前、大友以後」という言葉がある。大友さんの革新的な表現がマンガを変えたとも言われている。大友さんは「新しい表現をどんなふうにやろうかなという気持ちは常にあります。でも、お客さんがいるのだから、『どうやって読者を話に乗せてくの?』と考えるようになった時期があるんですよ。『童夢』を描いてるくらいの時、マンガの文法を見付けようとした」と転期を語る。
「手塚治虫作品も石ノ森章太郎作品も読み直した。手塚作品は展開が速くて話が遠くまで行くんですよ。アニメっぽい、ディズニーっぽい人物たちが突拍子もないことをしながらどんどん進んでいく。それは僕にはテンポが速過ぎた。一番テンポが合ったのが、ちばてつや作品だったんです。ある日、吉祥寺のそば屋で手に取ったビッグをめくっていて『のたり松太郎』を読んだ。これだ!見付けた!と。歩き方のスピードがちょうど同じ感じがする。これがいいんじゃねえかと、ちば作品を随分と勉強しましたね」
ちばさんのマンガを「何より、フレーミングが素晴らしいよね。きちんとした背景の中にきちんと人物がいるんです。分かりやすく描いている。近ごろのマンガを読むと、人物がどこで何をやっているかが分からないものが多い。カッコいい絵なんだけど、人物に寄り過ぎていて、読者の読みやすさのことを考えてないよね。ちばさんは、ちゃんと引いて描いている。客観性を入れると世界は広くなるし、話は面白くなるんですけどね」と分析する。
大友さんの新作を待ち望むファンは多い。「今、マンガで描きたいものは?」と聞いてみると「もちろんありますよ」と即答。「中身は内緒です。長編です。ガリガリガリ、紙に鉛筆で描くと引っかかる感覚。あのガリガリガリに快楽はあるんです。ガリガリから人が生まれていくのを見ていると、そりゃあ、マンガを描くのを誰もやめないですよ」と明かす。詳細は語ってくれなかったが、長編の新作となれば、期待が高まる。
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