この世界の片隅に:まるで「朝ドラ?」の声 “既視感”の理由…

連続ドラマ「この世界の片隅に」でヒロインのすずを演じている松本穂香さん
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連続ドラマ「この世界の片隅に」でヒロインのすずを演じている松本穂香さん

 こうの史代さんのマンガが原作の連続ドラマ「この世界の片隅に」(TBS系、日曜午後9時)が15日、スタートした。コミックスの累計発行部数は130万部を突破し、2016年公開の劇場版アニメはロングヒットを記録と、多くのファンを持つ名作を実写化し、人気ドラマ枠「日曜劇場」で放送するということで、注目度も高かった本作。早速、視聴者からは「まるで朝ドラ?」「なんか朝ドラっぽい」「朝ドラ感がすごい!」などの声が上がっている。NHKの連続テレビ小説「ちゅらさん」「ひよっこ」で知られる岡田惠和さんが脚本を手掛け、ヒロイン・すず役の松本穂香さんを筆頭に朝ドラ経験者が多数出演となれば、当然のことのようにも思えるが、果たして、それだけなのだろうか? この“既視感”の理由を探った。

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 ◇朝ドラ女優集結 尾野真千子の和装から松坂桃李の“小さな恋人”まで…

 「この世界の片隅に」は、マンガ誌「漫画アクション」(双葉社)で連載され、09年に「文化庁メディア芸術祭」のマンガ部門優秀賞を受賞。戦時中、広島・呉に嫁いだ18歳のすずの生活が、戦争の激化によって崩れていく様子が描かれた。劇場版アニメでは女優ののんさんが、すずの声優を担当したことも話題となった。

 実写連ドラ化にあたり、TBSはまさに“朝ドラ級”の大規模なヒロイン・オーディションを敢行。約3000人の参加者の中から、昨年「ひよっこのメガネっ娘」として脚光を浴びた松本さんが選ばれ、今年5月に報道陣の前でお披露目された。

 同時にすずの夫・北條周作を、3月末まで「わろてんか」に出演していた松坂桃李さんが演じることも発表。周作の姉・黒村径子役で「カーネーション」の尾野真千子さん、ドラマのオリジナルキャラクター・刈谷幸子役で「ひよっこ」の伊藤沙莉さん、すずの妹のすみ役で「べっぴんさん」の久保田紗友さん、夫が出征中の主婦・堂本志野役で同じく「べっぴんさん」の土村芳さんの出演も明らかにされた。

 15日放送の第1話でも、冒頭の現代パートから「ひよっこ」の古舘佑太郎さんと「瞳」の榮倉奈々さんが恋人同士として登場。「わろてんか」で松坂さんの“小さな恋人”を務めた新井美羽ちゃんがすずの子供時代を演じていることや、「あまちゃん」の“夏ばっぱ”こと宮本信子さんのおばあちゃん役、尾野さんの凛(りん)とした雰囲気の和装姿から、過去の朝ドラを連想した人も少なからずいただろう。

 ◇「戦争を挟む」「大切な日々の積み重ね」… “既視感”の原因は原作の中に存在

 実は朝ドラには、いくつかのヒットの法則が存在しており、ヒロインが「時代と戦う」ことがその一つに挙げられている。「時代と戦う」とは、すなわち「戦争を挟む」ことで、この点でも「この世界の片隅に」の世界観や時代背景と合致する。そういった意味では、すでに原作マンガの中に一つの核として、“朝ドラっぽさ”が存在していたといえる。

 また、一生懸命でけなげなヒロインを中心とした「ヒューマンタッチの家族もの」という点、「何気ない、それでいてとても大切な日々の積み重ね」という点など、原作と朝ドラの共通項の多さも“既視感”の原因といえるだろう。

 近年、戦争の時代を描くドラマは単発ものを除くと、朝ドラ以外ではほぼ皆無。対企業や対組織といった社会の中で奮闘する人々とその人間性を描いた、重厚かつ痛快なエンターテインメントで次々とヒットを飛ばしてきた「日曜劇場」の中でも、「この世界の片隅に」という作品は異質だ。

 ◇朝ドラ感=異質の「日曜劇場」が目指すもの

 この“挑戦”について、佐野亜裕美プロデューサーは「TBSの日曜劇場は、企業ドラマや医療、刑事もの、1話完結の痛快なエンターテインメントだけでなく、こういう作品もやるんだと見せることは、TBSとしてのある種の『矜持(きょうじ)』だと個人的には思います」と力を込める。

 また、「今、私たちが生きる社会って、すごく閉塞(へいそく)的だと思うので、だからこそ、明るく痛快なエンターテインメントが求められると思うのですが、外にパンっと開くものだけではなくて、いったん内側を見つめ直す機会というか。自分の家族や周りの人たち、あまりこの言葉は好きではないのですが、あえて使えば『絆』というものを見つめ直す機会になるようなドラマも必要なんじゃないか」と話している。

 さらに「そういった作品を8月を迎える夏の日曜劇場でやるということの重みは分かっているつもりですし、戦争を扱ったドラマは、連ドラではあまりないと思いますが、TBSでは(明石家さんまさん主演のスペシャルドラマの)『さとうきび畑の唄』とか、以前にはたくさんあった。戦後70年を過ぎ、私たちが祖父母から直接聞いてきたものを、さらに下の世代に語り継いでいかなくてはいけない年齢になって、それを何か形にするというのは、一つの『義務』みたいなものなのではないかと、私はそう思っています」と語っている。今後のドラマの展開にも注目だ。

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