魔界からやってきた魔界人アイドルの「椎名ぴかりん」ことモデルの椎名ひかりさんが初主演を務める配信ドラマ「少女ピカレスク」（井口昇監督）が、シネマート新宿（東京都新宿区）で特別先行上映中だ。「自撮り配信」を題材に心の闇にのみ込まれるアイドルたちを描いた作品。椎名さんが新人アイドルで裏にもう一人の人格を持つヒカリを演じ、グラビアアイドルの長澤茉里奈さんも新人アイドル・日菜子役で出演している。初演技にして初主演で二重人格という難役を演じた椎名さんと、血まみれになり、目を舐（な）められ……と過激な描写にも挑戦している長澤さんに、撮影エピソードなどを聞いた。

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　◇主人公・ヒカリ役は「ひかりちゃん以外できない」（長澤さん）

　トップアイドルを夢見る新人アイドル・ヒカリ（椎名さん）が、新曲のPV撮影でダンサーとして参加していた新人アイドル・日菜子（長澤さん）と亜依（神門実里さん）の2人と親しくなる。撮影は順調に進んでいたが、ちーちゃんと呼ばれる少女が収録現場に現れ、撮影中止せざるを得ない混乱を引き起こしてしまう。やがて日菜子や亜依の近くで不可解な出来事が起こり始め……というストーリー。女優でモデルの武田玲奈さんも友情出演している。

　椎名さんは「そもそも女優をやったことがないので、大丈夫かなと思いましたね」とオファーを受けた心境を明かす。ただ、「認めてくれた方には全力で返したいと思った」といい、「100倍返ししたいと思う気持ちがあったので、緊張というよりは、見込んでくれている人のために頑張ろう、という気持ちの方が強かったですね」と振り返る。

　「（ドラマなどに）あまり出たことがなくて、緊張していた」という長澤さん。「（椎名さんが）中学生のころからひかりちゃんのことがすごく大好きで。ひかりちゃんが『うちの事務所来れば』って誘ってくれて同じ事務所になったぐらい（笑い）。そこからまさか、同じ作品に出るというのが奇跡すぎて……。もうずっと舞い上がっていましたね」と椎名さんとの共演を楽しそうに語る。

　表向きは自撮り配信を頑張る新人アイドルだが、実は凶暴なちーちゃんという裏の人格を持つヒカリ。白目をむいて髪を振り乱し、絶叫し……と、ぶっ飛んだキャラクターだが、椎名さんはどのような思いを抱いたのだろうか。「圧倒的にちーちゃん（を演じる方）が楽しそうだなっていうことしかなかったですね」と脚本を読んだ感想を説明。長澤さんは「撮影の時すごく楽しそうだった」と相づちを打ち、「ひかりちゃん以外、できないと思います」と笑いながら太鼓判を押す。

　ちーちゃんを演じるにあたり、同じように凶悪な殺人鬼が出演する映画などを「たくさん見ました」と明かす椎名さん。「笑いながら殺人行為をする人をたくさん見ました。それも、ただむしゃくしゃして……じゃなくて、自分の正義を貫いているような人を。動きも、『こうやると怖くなるんだ』と参考になりました」と役作りを語る。目や表情も研究したといい、「怖い顔をするよりも笑っている方が怖い、とか」と研究の成果を明かす。

　ただ、ちーちゃんのキャラクターが強烈なため、「ヒカリを演じる時に目つきがすぐ悪くなっちゃうから、しっかりしないと、と。ちょっと油断すると、すぐちーちゃんが入っちゃう（笑い）」と苦労もちらり。「（ヒカリは）弱そうな感じを出すのが大変。闇を抱えてそうだな、だけど元気に振る舞っているんだな、という感じ。強がっているせりふを出さずにそれを出すのが難しかったです」と語る。

　長澤さんが演じるのは、真面目な新人アイドル。長澤さんは「私はいつも元気でおちゃらけ系だけど、日菜子は真面目で正義感が強くて友達思いなので、日菜子っぽくなろうと規則正しい生活をしたり、言葉遣いを気を付けたり。がっつり役作りしたという感じではないですけど、普段よりも優等生寄りで演じました」と明かす。

　劇中では、血まみれになったり、目を舐めたり舐められたり……と過激な演技にも挑戦している長澤さん。「緊張していたけど、（舐めるのも舐められるのも）どっちも良かったです。眼球舐めなんて絶対普段しないけど、征服感というか、そういうのが良かったですね」といたずらっぽく笑い、椎名さんは「（そのシーンは）ビジュアルが美しかった」と称賛する。絶叫シーンも印象的で、長澤さんは「お風呂で叫ぶ練習をしました。録音しながらやっていましたね。『お、いい感じじゃね？』って（笑い）」と楽しそうに明かす。

　◇作品は「見ちゃいけないやつ」？　今後の目標も…

　ホラーが好きで、よく見るという椎名さん。完成した作品については「初見では、なんとも言えない怖さがありましたね。ホラー映画とはまた違って」と言う。「ネット上に、身元もサーバー元も時期も分からない、（怖い）動画がアップされていたりして、そういうのを見ちゃうと『あ、これ見ちゃいけないやつだ』と思うじゃないですか。5日後に見たら消されている、みたいな。そういう作品を見ちゃっている気持ち」と独特の表現で感想を明かす。

　初主演の大役を果たした椎名さんが、今後演じてみたいのは「人ならざる存在」だ。椎名さんは「みんなには見えていない人間とか、幽霊とか、（マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』の特殊能力の）スタンドみたいな。『私はあなたの前世なの』みたいな役。そっち側をやってみたいですね。着ぐるみの中に入っている殺人鬼、とか」と笑う。

　一方、将来「『スター・ウォーズ』シリーズに出演するのが夢」と熱く語る長澤さんは、「（『スター・ウォーズ』の）エイリアン役とか、顔面の原形をとどめていない役とか、なんでも良くて。そういう役をやるために今、活動しているので、そのためなら経験として、どんな役でもやっていきたいなと思っています」と熱弁。それ以外では、「JK（女子高生）役をいけるところまでいきたいですね。25歳くらいまでならいけるかな？　制服が着たい（笑い）」と語る。

　そんな2人に、最後に今後の野望を聞いてみた。今回、ドラマで主題歌「確認事項：しあわせとかについて」も歌っている椎名さんは「アーティスト活動をしているので、ぜひぜひライブにも来ていただきたいですね。アーティスト活動を頑張りたい。ファッション誌にも出ているので、そちらも見ていただければ」とアピール。

　女優業については「おこがましいという感じ」としつつ、「ひかりがやる意味があるな、というものなら」と可能性ものぞかせる。長澤さんは、現在のグラビアアイドルとしての活動を続けつつ、「長澤茉里奈としていけるところまでいって、その中でちゃんと演技の勉強もして」とし、「ひとりの（女優としての）長澤茉里奈として芸能界で勝負できるように、今は積み立てを頑張ろうと思っています」と展望を話した。

　「少女ピカレスク」はCS放送「ファミリー劇場」の会員制サービス「ファミリー劇場CLUB」で今秋から配信予定。同CLUBでは、プレミアム会員限定の企画として、未公開場面の写真ダウンロードや監督・出演者のコラムを読める「ピカレスクの会」も発足。同作は23日からシネマート新宿で2週間限定で特別先行上映を実施しているほか、7月7日からシネマート心斎橋（大阪市中央区）、7月14日からシネマスコーレ（名古屋市中村区）で上映予定。

　＜椎名ひかりさんのプロフィル＞

　2010年に女性ファッション誌「Popteen（ポップティーン）」（角川春樹事務所）の読者モデルとしてデビュー。モデルとして活躍しながら、魔界からやってきた魔界人アイドル椎名ぴかりんとして人気を集める。自他ともに認めるオタクとして、サブカルに特化したファッションアイコンとして国内外で活躍している。

　＜長澤茉里奈さんのプロフィル＞

　1995年10月生まれ、埼玉県出身。2016年に講談社主催のオーディション「ミスiD2016」で一般投票1位を獲得し、グラビアなどで「まりちゅう」の愛称で人気を集める。映画「咲-saki-」（17年）に妹尾佳織役で出演するなど、女優としても活動している。