シブサワ・コウ:ゲーム作りで35年 「情熱が失われることはない」

シブサワ・コウさん
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シブサワ・コウさん

 コーエーテクモゲームスの人気ゲーム「信長の野望」や「三國志」シリーズを手掛けたゲームクリエーターのシブサワ・コウさん。1983年に発売された家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」のブームの前から、35年以上もゲームを作り続け、近年は歴史を題材にした映画にも出資するなど精力的に動いている。シブサワ・コウさんにゲームへの思いを聞いた聞いた。

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◇ゲーム作り「飽きることはない」

――35年も第一線でゲームクリエーターとして活躍している。その情熱はどこから。

 ゲームは、作るのも遊ぶのも話すのも好きで、情熱が失われることはないですね。エレクトロニクスの技術やハードウエアが進展して、昔は不可能だったことが可能になる。最近でいえばVRの技術を使えば戦国時代にタイムスリップすることもできる。やりたいことがどんどん増えて飽きることはない。

――今でもゲームを遊んでいるのか。

 「ドラゴンクエスト11」や「スプラトゥーン2」も遊んだし、スマホゲームもプレーしている。取締役会などの自分の仕事もあるが、残りはゲームをやっている。プロジェクトは30~40が並行して毎週状況をチェックしているから、1日はあっという間に終わるし、土日の週末もゲームもやっている。あとはエンタメ分野も気になるので、舞台を見たりはしている。

――映画「関ヶ原」にも出資した。

 経営方針の一つに「IPの創造と展開」を掲げていて、歴史系映画の場合、関係ある分野だと前向きに検討したいと考えていて、「関ヶ原」はピッタリ合うので出資した。歴史のエンタメ系コンテンツは、コラボやタイアップをしたいと思っているし、いろいろな形態の歴史系コンテンツの面白さを皆に楽しんでもらいたい。私自身も歴史やエンタメ、映画、小説が大好きで、司馬遼太郎の原作小説は3、4回読んでいる。また、2000年に関ケ原を題材にしたPS2用ゲーム「決戦」を作ったこともある。

――歴史の魅力とは何か。

 人間ドラマに尽きる。昔から歴史が好きで、生まれ育ったのが栃木県の(足利尊氏ゆかりの)足利市。歴史に囲まれた街で、歴史が身近な存在だった。当時は東映の時代劇も見ていた。小さいころから歴史に囲まれて幸せだ。

――歴史のゲームを作るきっかけはそういう背景があったと。

 今でこそ歴史のゲームはたくさんあるが、昔はなかった。約35年前のゲームといえば「パックマン」や「スペースインベーダー」などのゲームセンターのゲームばかりで、歴史ゲームを作る発想がそもそもなかった。私はパソコンマニアで当時作ったのが「川中島の合戦」というゲーム。実際に作って遊ぶと面白かったので、「買ってくれる方がいるかな?」と通信で販売して、売れたのが始まりだった。

◇ヒットしてからが大事

――会社は大きくなった。

 好きだから一生懸命やってきたのもあるが、社員に恵まれた。「信長の野望」「三國志」など(ロングセラーの)歴史シミュレーションゲームも、社員たちが「自分も作りたい」と考えて入社してくれて、ヒットゲームを作ってくれている。社長の鯉沼(久史さん)をはじめ、役員もいますが、ほとんどウチのゲームが好き。好きなことをしているのが大元にあると思っている。

――「信長の野望」や「三國志」は同じシリーズが30年以上売れ続けている。

 お客様のニーズとクリエーターとしての企画、技術的な進化の三つの要素があり、2、3年に一度のペースで出してきた。戦国時代で自分の人生を感じ取れるような基本の面白さは変えず、そして同じゲームを(漫然と)作っているわけではないのがポイント。歴史のエンターテインメントとしての面白さを維持できていると思う。

――今注目している技術は?

 将棋の電王戦でプロ棋士に勝利したponanza(ポナンザ)を開発したAI(人工知能)の専門会社HEROZ(ヒーローズ)と資本業務提携を結んで、新しいゲームを作ろうと取り組んでいるところで、ワクワクしている。AIをいろいろな要素で生かしたい。大名の志に合った形でAIにし、織田信長や武田信玄らしい戦略を打ち出せるようになればと思っている。VRでは、座席が動いたり、風が吹くなど五感に刺激を与えるアーケードゲーム「VR SENSE」を作っている。

――ゲーム以外の展開もあり得そうだ。

 弊社はあくまでもゲーム会社。ゲームでもやりたいことがあるし、おなかがいっぱいだ(笑い)。ただ映画とゲームがつながっていくことは感じている。同じ合戦シーンを作るならば、別の会社で作るのはもったいない。(一緒に作れば)迫力は違うし、コストは半分になる。

――なぜヒットゲームを多く生み出せたか。

 ゲームを作って終わりでなく、ヒットしてからが大切。ファンにどうやって楽しんでもらうかが大事で、グローバル展開やタイアップをして、幅広いファンに面白さを継続的にアピールすることだ。ゲーム会社は、昔はゲームだけを作っていれば良かったが、今はプロデュースをしているから、同じ「ゲーム会社」といっても昔と今ではタイプが違う。ゲームは出してみないと売れるか分からないから当然失敗もある。だが失敗は受け止めつつ、ノウハウをシェアして共有するのが大事。そしてIP(コンテンツ)を大切にすることに尽きる。

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