ダンダダン
第7話「優しい世界へ」
11月14日(木)放送分
最近アニメやゲームのキャラクターソング(キャラソン)の中で、“バンドもの”が邦楽ロックファンを巻き込みブームとなりつつあるという。シーンに詳しいタワーレコード新宿店のアニメ担当バイヤー・樋口翔さんは、その背景に「キャラクターコンテンツの多様化と成熟、リアルな音楽シーンとの接近がある」と話す。キャラソンと言うと、少し前まで“アイドルもの”が全盛で、その勢いはいまだ衰えていないのも事実。一方で、なぜここにきてバンドなのか? 樋口さんの言葉を借りながら、背景を探った。
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最近のバンド形態のキャラソン(2次元)の特徴に挙げられるのが「一聴して違いが分からないほど、リアルなロックバンド(3次元)と遜色のないクオリティーの高さ」が挙げられる。「バンドものと聞いて、『けいおん!』などを思い浮かべる人も多いと思うのですが、当時はキャラクターの可愛らしさを音に落とし込んだ、それこそ“キャラソン然”とした楽曲が主流だった」と樋口さんは以前との違いを語る。
実際に、今年4月期に放送されたアニメ「覆面系ノイズ」では、「in NO hurry to shout;」「SILENT BLACK KITTY」といった劇中バンドがオルタナティブロックに接近したサウンドを展開。アニメやゲームが人気の「BanG Dream!(バンドリ!)」からは、キャラクターを演じる声優陣が自ら楽器を演奏して歌うという、“2.5次元”バンドも登場してきている。
どれもバンドとしての個性や色がはっきりとしていて、キャラクターコンテンツそのものの多様化や成熟が感じられる動きだ。一方で、樋口さんは「必ずしもみんながみんな、作品の世界観やストーリーに共感しているわけではないと思うんですよ」と持論を披露する。
リスナーは、コンテンツうんぬんに関係なく「楽曲のクオリティーそのものをダイレクトに評価する向きがある」といい、「スマホ世代というべきなのか……。昔のように30分のアニメを1クール(3カ月)見る必要もない、簡単に作品の世界観やストーリーを飛び越えて、劇中のバンドや楽曲にコミットできてしまうが故の“バンドブーム”というか」と説明する。
現在、「アイドル」をテーマにしたコンテンツにも、バンド(・サウンド)を取り入れたキャラクターソングが次々と生まれていて、作り手側にも「アイドルの次はバンド」という意識があるという。また、先の“アイドルブーム”の影響もあってか、聴き手の中に2次元と3次元の垣根はなくなりつつあるというものも見逃せない。
樋口さんは「バンドってアイドルに比べて、多くの人にとってより身近なものだったりするじゃないですか。お気に入りの楽曲を見つけやすくなってきた中で、選択肢の広さ(多様化)やクオリティー(成熟)があれば、ブームになるのはある意味“必然”と思うんです」と分析する。
さらに「今後もこういった傾向は強まっていくだろうし、作り手側も聴き手を信頼して楽曲を世に送り出している節がある。より一層リアルに近いバンドが登場しても不思議ではないですね」と期待を寄せていた。
in NO hurry to shout;(覆面系ノイズ)
アニメ「覆面系ノイズ」の主人公たちが結成、通称“イノハリ”。1990年代以降、日本のオルタナティブロックの重鎮としてシーンに多大な影響を与えてきたバンド「COALTAR OF THE DEEPERS(COD)」のNARASAKIさんがプロデュースを担当しています。NARASAKIさんは、アニメ「輪るピングドラム」のエンディングテーマ「DEAR FUTURE」でも知られる人物。“イノハリ”は「COD」のソリッドでアングラ感漂う分厚いサウンドを残しつつ、メロディーラインやアレンジはポップ寄り。主人公たち10代の衝動や焦燥、行き場のない怒り、一筋の希望を内包した歌詞も魅力です。
Baby’s breath(天使の3P!)
アニメ「ロウきゅーぶ!」のスタッフが送る最新作「天使の3P!」発、可愛い小学生たちによる3人組バンド。キャラクターの可愛らしい外見とは裏腹に使用する楽器はトッププレーヤーも使用する実在メーカーによるもの。エンディングテーマ「楔」は、“小学生の女の子たちによるバンド”という先入観を軽々と吹き飛ばす、イントロからゴリッゴリの重低音ギターリフが炸裂(さくれつ)するラウドチューン。アニソンクリエーター集団「Arte Refact」の一員で、ギタリストを志したこともあるという本多友紀さんのバンドサウンドへのこだわりが随所にちりばめられた必殺のナンバーになっています。
Roselia(バンドリ! ガールズバンドパーティ!)
「BanG Dream!(バンドリ!)」のスマホ向けゲーム「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」随一の人気を誇る“漆黒のロックバンド”。「バンドリ!」はキャラクターを演じる声優陣が自ら楽器を演奏し歌うスタイルが話題で、一つの作品内で違ったアプローチのバンドサウンドが楽しめますが、この「Roselia」は、ダークでソリッドなラウドロック寄りのサウンドが人気を博し、CDの売り切れが続出中です。2枚目のシングル「Re:birth day」は、骨太なバンドサウンドに極上の美メロが融合した名曲!
日向美ビタースイーツ♪(ひなビタ♪)
バンドを扱ったキャラクターコンテンツとして忘れてはならないのが、音楽ゲームの老舗コナミが手掛ける「ひなビタ♪」。その主人公たちによるガールズバンドが「日向美ビタースイーツ」です。メンバーが渋谷系やシューゲイザー、電波系好きを公言していて、それぞれの音楽背景が反映された楽曲は粒ぞろい。3枚目のアルバム「Home Sweet Home」は昭和テイストをふんだんに取り込んだナンバーが楽しめ、中でも80年代サウンド愛がぎっしり詰まった「今夜はパジャマパーティ」は、レトロなシンセなどから漂う「懐かしさ」とキャラクターボーカルが生み出す「可愛さ」の化学反応がたまらなく面白いです。
セブンスシスターズ(Tokyo 7th シスターズ)
最後は「アイドル」をテーマとしたスマートフォン向けゲーム「Tokyo 7th シスターズ」から変化球を一つ。「セブンスシスターズ」は、2034年という未来が舞台の本作で「伝説」と語り継がれるアイドルユニットですが、2枚目のシングル「WORLD’S END」は、同ユニットが「インディーズ時代に発表した」とされるエモーショナルでアグレッシヴなロックチューン。架空の世界においても音楽シーンのムーブメントは日々変わりつつある流動的なものだということを設定とサウンドで大胆に表現しています。コンポーザーは、アニメ・ボカロシーンでその名をとどろかすkz(livetune)さん。
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