テレビ質問状:「WHO I AM」 パラリンピックドキュメンタリー第7回 史上最速のブレードの女王

「パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM」の陸上短距離のマールー・ファン・ライン選手(オランダ)
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「パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM」の陸上短距離のマールー・ファン・ライン選手(オランダ)

 IPC(国際パラリンピック委員会)とWOWOWが共同で立ち上げたパラリンピックドキュメンタリーシリーズ「WHO I AM」。リオパラリンピックが開催された2016年から、東京大会が開催される2020年まで5年にわたり、世界最高峰のパラアスリートたちに迫る大型スポーツドキュメンタリーシリーズだ。10月から第1シーズンとして、8人のパラアスリートに密着した放送がスタートした。第7回は10日午後9時から陸上短距離のマールー・ファン・ライン選手(オランダ)をフィーチャーした回がWOWOWプライムで放送される。番組プロデューサーを務めるWOWOW制作局制作部の太田慎也チーフプロデューサーに番組の魅力を聞いた。

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 ――マールー・ファン・ライン選手に注目した理由は?

 陸上の100メートルと200メートルは、パラリンピックにおいてももちろん人気種目です。マールー・ファン・ラインはその両方における世界記録保持者(女子T43クラス)ですが、4年前のロンドンパラリンピック以降も、彼女はその記録を伸ばし続けています。

 実際に彼女は今、すべてのパラリンピック選手の中でも最も注目を集める選手の一人ですし、スポーツ界におけるスーパースターです。その速さと強さの秘訣や、アスリートとしての物語を知りたいと思いました。100メートルでいえばわずか13秒ほどの世界の中に、トレーニングの日々や本人、関係者たちの思いが込められていると考えると、スリリングに伝えることができると考えたのです。

 ――マールー・ファン・ライン選手との撮影中のエピソードは?

 私たちがマールーに大きく価値観を変えられたエピソードがあります。生まれつき両足の先がない状態で生まれ、現在25歳の彼女が生まれて初めて“走った”のは、わずか6年前。それまでは、バスを追いかけたくても走れなかった彼女が、「ブレード(競技用義足)を付けた時、スピードを感じ、髪をすり抜ける風を感じた」と語ってくれた時、世界記録保持者というイメージとの間にギャップを感じました。同時に、6年前に「スピードの虜(とりこ)」になった彼女には、瞬く間に史上最速女王になるだけの「アスリートとしての才能」があったんだとも思ったのです。

 ブレードを付けて競技に臨む彼女が活躍すると、その美しさや義足に注目が集まりがちですが、私たちは、最速女王のアスリートとしての強さの根源や、0.01秒でも速くなるために日々重ねている努力に焦点を当ててしっかりと描くことが大切だと思わされました。インタビューや雑談をしていると、本当に「競うこと」が好きで、人一倍負けん気の強い一人のアスリートであることがよく分かったからです。

 ――視聴者へ見どころを一言お願いします。

 取材を開始したのは1年以上前ですが、スポーツドキュメンタリーの取材を受けられることをマールーはとても喜んでくれました。2012年ロンドンですい星のごとくパラリンピックの舞台に現れたマールーは、美しき女王として、突然世界から注目を集める存在となりましたが、その環境の変化には、本人も戸惑うほどだったといいます。しかし、あくまでも競技者である彼女は、わずか13秒たらずの世界の中で、「より速く走るために何をすべきか」に集中し、しっかりと課題を持ち、リオパラリンピックに向けて4年間をささげてきたのです。

 番組では、運命のリオまでの軌跡をしっかりと取材させていただきました。ぜひ、まだまだ続くマールーのシンデレラストーリーをたっぷりと味わっていただければと思います。そして、2020 年には東京の地で、さらに速くなった彼女を目撃できるかもしれません。

 最後に、この場をお借りして、マールーご本人はもちろん、ご家族やコーチ、関係者など、取材にお力添えいただいた全ての方々に、心からお礼を申し上げたいと思います。

 WOWOW 制作局制作部 チーフプロデューサー 太田慎也

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