マーベル・コミックの異色のヒーローが大暴れする映画「デッドプール」(ティム・ミラー監督)が、6月1日に公開された。米国はもとより世界120カ国で大ヒットを記録。毒舌キャラと仰天のアクションシーンが留飲を下げる刺激的なエンターテインメント作だ。
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特殊部隊の兵士上がりで、今は悪いやつらをこらしめ金を稼ぐ生活を送るウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズさん)。恋人バネッサ(モリーナ・バッカリンさん)との結婚を決意し、幸福の絶頂間近と思われた矢先、末期がんを宣告され奈落の底に。そこへ、がんを治せるという男が現れ、藁(わら)にもすがる思いでその誘いに乗ったものの、実はそれは、余命宣告された者たちを実験台に、戦闘マシンとして肉体改造するという恐ろしいプロジェクトだった。ウェイドは被験者となり不死身の肉体を手に入れるが、大きな代償を支払うことになってしまう……という展開。
とにかく、ストーリー、構成、人物設定、どれをとってもユニーク。がん治療が災いし、マスクを付けて戦わざるを得なくなったヒーローだなんて斬新だし、オープニング早々の、ハイウエーでの大活劇にも驚かされる。極めつきは、自身が背負わされた悲劇を悲劇と感じさせない破天荒なキャラクター。毒舌だし、傍若無人だし、徹底的にアンチヒーローを決め込むが、そんな彼を戦いに駆り立たせるもの……それはズバリ、恋人への愛。そんな真の姿に結構胸キュンとさせられ、ほかにも、手でハートマークを作ったり、手すりに腰かけ足をブラブラさせたりと、やることがなかなかおちゃめで、決して憎めないキャラなのだ。
そのデッドプールを演じるのが、「[リミット]」(2010年)や「黄金のアデーレ 名画の帰還」(2015年)などで知られるライアン・レイノルズさん。かつてデッドプール役を打診され、やる気満々だったにもかかわらず企画はボツに。その後、「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」(09年)でデッドプールを演じるも、評判はイマイチ。その彼が今回、プロデューサーも兼任し、完成させたというのだから、役への入れ込みようがうかがい知れる。2本の刀と拳銃を駆使した戦いっぷりは相当過激で、飛ぶ血しぶきの量も半端ではない。米国でのR指定もうなずけるが、そうした血生ぐさい描写とチャーミングなキャラのギャップがむしろ新鮮で、見終わったときは、爽快感に包まれたほどだ。続編が楽しみだ。1日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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