ダンダダン
第7話「優しい世界へ」
11月14日(木)放送分
ディズニーの劇場版アニメ「ズートピア」が、累計動員数350万人、累計興行収入45億円を突破し、今年のナンバーワン作品として注目されている。しかしそこにはふだん「おそ松さん」など、主に国内アニメを楽しんでいる女性ファンの姿も多いようだ。週に約100本(再放送含む)のアニメを視聴し、自身も「ズートピア」にハマったという“オタレント”の小新井涼さんが独自の視点でその魅力を解説する。
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「ズートピアは…いいぞ」
あまりの衝撃に、鑑賞後は語彙力がそぎ落ちました。愛くるしいキャラに練りこまれたストーリー、もちろん素晴らしかったです。しかし上映中ずっと私を戦慄させていたのは、「この作品……、恐ろしいほどにアニメ好き女性のツボを突いている!!」ということでした。
ディズニー映画といえば、“老若男女誰もが楽しめる”印象があります。それにも関わらずこの「ズートピア」は、同じく女性人気が高い「KING OF PRISM by PrettyRhythm(キンプリ)」や「名探偵コナン純黒の悪夢」、「遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS」にハマる女性層に絶対刺さる!という予感がしたのです。
鑑賞後に調べてみたところ、実際に同じような反応や二次創作も見かけ、映画を観ていないアニメ好き女性の間でさえも「ズートピア、やばいらしいね…!」と話題になっていて、存外ただの思い違いでなかったことを感じました。しかも驚くことに、作品は男女のバディものにも関わらず、私のような普段“BL”が主食の人にもどうやら人気が高いようなのです。
数字としても、公開5週目にして3週連続1位を獲得。動員・興収ともに2週連続で前週比がアップするという前代未聞の成績とのことで、口コミから徐々にリピーターが増えた「キンプリ」の現象をもどこかほうふつとさせます。アニメ好き女性は、一体「ズートピア」のどこに魅力を感じるのでしょうか。
私見が混じりますが、アニメ好き女性がその作品にハマるかどうかは、まず女性キャラへの印象がその行方を大きく左右すると思います。それについて言うと、「ズートピア」の女性主人公であるジュディは、アニメ好き女性にとってフェミニンとボーイッシュのバランスが非常に良い女性キャラです。
“女性らしいプリンセス”や“男勝りなヒロイン”くらいどちらかに偏ってしまうと、個人の好みでキャラへの好き嫌いがはっきり分かれてしまいます。その点ジュディは、時に男性的な強さを、時に女性的な愛らしさをかたよることなく併せ持つ、いわば“同性に嫌われにくい”女性主人公。同じタイプのキャラですと、個人的には「図書館戦争」の笠原郁ちゃんなどが思い浮かびます。
異性的な魅力も持つ同性には、腐女子もアレルギーが起こりにくいですし、極端な例ですが宝塚を思い浮かべてもらうとわかるように、同じ女性だからこそのあこがれに近い好意も抱けるのです。
女性主人公へ好感が持てたら、次に大切なのは、その相手となる男性キャラ。「イケメンであるべきか?」というと、その必要はありません。「おそ松さん」などのヒットを見ればわかりますが、見た目は女性人気のための必須項目ではないのです。アニメ好き女性の好物のひとつに“ギャップ萌え”というものがあります。「ズートピア」のニックが持つのは、ギャップ萌え好きとしてはたまらない“ニヒルさに隠された弱さ”です。
斜に構えて悪ぶっているニックの態度は、絶対に見せたくない弱さを隠すためのカモフラージュ。“ずる賢い狐”というのも実は強がっていただけの演技だったなんて、そんな一面をみせられてはどんなにあざといと感じても悔しいかなときめかずにいられません。見事にギャップ萌えに弱いアニメ好き女性のツボをついていて…鑑賞した女子が次々と“ニック沼”に落とされているのも納得です。
主人公たちへの好感度が高くなったら、最後に重要となってくるのはその2人の関係性です。ガッツリ恋愛か友情に振り切ってしまうのもいいのですが、私のようなアニメ好き女性が弱いのは実は“明らかにラブラブなのにくっつかない” 状態。個人的には、公式では結ばれることがないけれど明らかにラブラブというのが逆に生殺し状態になる男性同士や女性同士に抱くことが多い感覚なのですが、この「ズートピア」、まさにニックとジュディの関係がそんな感じなのです。ラブラブではありませんが、男女ですと「進撃の巨人」のミカサとエレンの距離感が少し近いかもしれません。一言でいうと“男女間のやおい”というか……。
全く似ていない2人が反発し合いながらも、お互いの中に自分と似た部分を見つけていく…そんな胸が熱くなる“バディもの”の魅力がある一方で、「もう君たち結婚しちゃいなよ!」と思わず背中を押したくなるようなロマンスの瞬間も多々あります。監督インタビューでもハッキリ恋人とは言わずに、その後の「if」のチャンスを残してくれているところがまた憎いところ。そんな2人の関係を妄想すると共に、ファンの間での“恋人?相棒?論争”というのも作品の盛り上がりの一端を担っているように思います。
同性をはじめ腐女子さえも好感を持てるジュディ、ギャップ萌えがたまらないニック、そんな2人の妄想せずにはいられない関係……。これこそが「ズートピアにアニメ好き女性が夢中にさせられるツボ」です。そこにプラスアルファ、字幕と吹替の表現の違いも考察好きなアニメ好き女性の心をくすぐる要素のように感じました。特にニック好き女性は字幕必見です。
もちろんツボに入るか入らないかは、一言でアニメ好き女性と言っても差はあるとは思いますが、冒頭の女性人気が高い劇場版を全て鑑賞済みの状態で吹き替え版と字幕版を計3回鑑賞した私は保証したい。「ズートピア」のツボの威力は折紙付です!
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。アニメ好きのオタクなタレント「オタレント」として活動し、ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」やユーストリーム「あにみー」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)のアニメを見て、全番組の感想をブログに掲載する活動を約2年前から継続。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、社会学の観点からアニメについて考察、研究している。
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